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鎌倉のタウン誌『かまくら春秋』をつくる出版社とは?

ココがキニナル!

かまくら春秋社を取材してください。(jckさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

かまくら春秋社は『かまくら春秋』『詩とファンタジー』などの雑誌や書籍を発行している鎌倉の出版社。出版のほか各種イベントにも積極的

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ライター:松崎 辰彦

鎌倉駅近くにある「かまくら春秋社」



鎌倉市小町。JR鎌倉駅を降りて、二ノ鳥居そしてカトリック雪の下教会まで足を運ぶと、そのとなりにあるのが「かまくら春秋スクエア」なるビルである。この4階にあるのが「株式会社かまくら春秋社」。

本日の主役である。

 

かまくら春秋スクエアの4階にオフィスをかまえる

 
かまくら春秋社の創業は1970(昭和45)年4月。当時25歳の伊藤玄二郎(いとう・げんじろう)氏が鎌倉文士の長老だった里見弴(さとみ・とん)たち鎌倉在住の作家の支援を得て設立した。

 

かまくら春秋社代表取締役・伊藤玄二郎氏。星槎(せいさ)大学教授の顔も持つ
(画像提供:かまくら春秋社)
  

里見弴(1888~1983)。代表作『善心悪心』『道元禅師の話』ほか。
(鎌倉の文学小事典より)(画像提供:かまくら春秋社)

 
以後半世紀近くが経ち、同社は鎌倉の広報係ともいうべきユニークなポジションを確立、伊藤氏個人も高い知名度を獲得し、現在に至るも同社の代表取締役として活躍している。



かまくら春秋社の事業



かまくら春秋社は雑誌書籍の制作販売、ならびにイベントの開催を事業内容としている。

現在、同社が発行している雑誌は『かまくら春秋』『詩とファンタジー』『星座─歌とことば』の3種類。現在の発行部数はそれぞれ3万部である。

その中でもかまくら春秋社の顔とも言えるのが、社名にもある『かまくら春秋』。

 

『かまくら春秋』2016(平成28)年9月号

 
この古(いにしえ)の都を歩くなら、ぜひポケットにしのばせたい“鎌倉への招待状”である。

鎌倉のタウン誌らしく落ち着きと品格ある誌面作りが特徴で、2016(平成28)年9月号を開いても伊藤氏と「やまとかたり語り部」の大小田(おおこだ)さくら子さんの対談、三木卓氏の連載「鎌倉その日その日」、街の話題を拾った「タウンスポット」など、小さく紙幅が少ない中にも重厚な記事が多く、長らく読者を獲得している理由が分かる。

 

2016(平成28)年9月号の目次

 
そしてこの小さなタウン誌から永井路子(ながい・みちこ)『私のかまくら道』、三木卓(みき・たく)『鎌倉日記』など数々の味わい深い書籍が生まれており、現代鎌倉の文芸を見渡す上でもおのずと手にとる一冊となっている。




書籍



書籍は実にバラエティ豊か。「文芸・小説・エッセイ」「食・暮らし・実用」「政治・国際交流」「小百科シリーズ」とさまざまなジャンルに分かれている。

これまでに数百タイトルに及ぶ書籍を発行しているかまくら春秋社であるが、ノンフィクションからフィクション、特定の人物に焦点を当てたものから一国を評したものまで、広範な分野をカバーしている。

 

かまくら春秋社の書籍。

 
ここ数年の注目の書は、金澤泰子(かなざわ・やすこ)著『天使がこの世に降り立てば―ダウン症の書家・金澤翔子を育てた母の日記』、やなせたかし著『だれでも詩人になれる本』小山明子(こやま・あきこ)、野坂暘子(のさか・ようこ)共著『笑顔の介護力― 妻たちが語る わが夫を見守る介護の日々―』といったところだろうか。

いずれも個性豊か、人生を歩む中で必要な重要なことを教えてくれる本である。



現在話題の『氷川丸ものがたり』



最近のかまくら春秋社の話題作は伊藤玄二郎著『氷川丸ものがたり』である。

 

伊藤玄二郎『氷川丸ものがたり』。氷川丸の誕生から現在までをたどる

 
現在は山下公園に係留されている氷川丸だが、1935(昭和5)年の誕生そして処女航海から、1960(昭和35)年の最終航海ののち今日に至るまでの軌跡を多くの写真とともに描いた、海と横浜を愛する人ならぜひとも目を通しておきたい一冊である(同書は2015〈平成27〉年、海運界で権威のある住田正一海事史奨励賞を受賞した)。

 

氷川丸


2016年、国の重要文化財に指定された

 
この作品はアニメ映画化され、全国で自主上映されている。

 

アニメ映画『氷川丸ものがたり』。氷川丸の歴史を描く

 
昨年2015(平成27)年には7月28日の関内ホールを皮切りに、映画館や学校、市民ホールなど、全国各地で上映会が開催され、多くの人に氷川丸がたどった歴史を伝えている。
このアニメは2016(平成28)年、山縣勝見(やまがた・かつみ)賞特別賞と、ダラス・アジアン映画祭アニメ―ション最優秀作品賞を受賞した。

このように数々の注目すべき書籍を、かまくら春秋は発行しているのである。



イベント事業にも力を注いでいる



出版事業の一方でかまくら春秋社は文化事業やイベントにも進出し、2005(平成17)年より毎週土曜日に建長寺で朗読会を開催するなど、ユニークな活動を展開している。


建長寺親と子の土曜朗読会500回記念の様子


写真右JTポエムコンテスト(1992年〜2001年)、国際交流「声明」公演(ロシア)
(画像提供:かまくら春秋社)

 
ときに海外まで足を延ばし、日本文化の精髄を伝えている。ポルトガル、ロシア、フィンランドといった国々での公演実績がある。

現在、かまくら春秋はアルバイトを含め従業員約20名。
特に部署は明確には分かれているわけではなく、大まかに編集制作、校正・校閲、秘書、経理と人員が配置されている。しかしこれらは兼任で、秘書がかまくら春秋の取材に赴き、『詩とファンタジー』の編集長が書店営業をカバーするなど、編集業務をメインとして一人で何役もこなしているとのことである。