保土ケ谷区の崖の上、建設途中で放置されたマンションはどうなる?【後編】
ココがキニナル!
保土ヶ谷区の「ふれあいせせらぎの道」を進むと、建設途中で放棄された巨大な建物がある。マンション建設予定が、会社が倒産し途中で放棄したとか。崖が崩れそうな状態のまま10年以上放置しています(LKさん)
はまれぽ調査結果!
建築会社の資金難や条例改正が原因で建設が止まっているようだ。横浜市は斜面の土止めの改善を開発業者に要望しているが、誠実な対応はない
ライター:小方 サダオ
外側の擁壁を残して長年放置されている投稿のマンションについて、前編で現地を確認し、周辺の住民に話を伺った。住民は、建設途中のマンションに対して、不安や不満を持つ人も少なくなかった。そこで少しでもこのマンションについての情報を得るために取材を続けることにした。
外壁についてカーリットの森を守る会の代表が語る
外壁が沿うようにある「せせらぎの道」は、「“カーリットの森”を守る市民の会」によって保全されている緑地の一部になっている。
カーリットの森内の「せせらぎの道」(青線)
“カーリットの森”を守る市民の会代表の中村さん
そこで代表の中村雅雄(なかむら・まさお)さんに、まずはカーリットの森に関して伺うと「カーリットの森は横浜市の中心地より4km程度しか離れていないところにある数少ない緑地帯です。火薬工場だった日本カーリットエ場の跡地を含めた約60ヘクタール(60万平方メートル、横浜スタジアム約23個分)の広さがあります」
横浜市の中心地から数kmしか離れていない場所の緑地帯は珍しい
「1997(平成9)年に“カーリットの森”を守る市民の会が発足し、この緑地帯の環境を残すための活動を始めました。敷地内では今までにマンションや墓地の建設が行われ、虫食い状態になっていますが、開発の手から緑地帯を守ろうと、維持を行っています」
緑地帯内ではマンションや墓地の建設が行われている
「敷地内にはゲンジボタルが見られる沢があり、フクロウが来るように計画をしていてます。最近では実際に何度かフクロウが訪れています」とのこと。
フクロウが訪れる森である
敷地内にある果樹園
ホタルが現れる沢
次に遊歩道内の建設中のマンションに関して伺うと「豊富な湧き水を利用した『ふれあいせせらぎの道』は1997年に作られました。その数年後、あのマンション建設が始まりました。以前あった山の斜面を削り宅地造成を行い、工事が難航したため業者が途中で逃げたそうです。擁壁が隠れるように植樹をするなどの対策をしてほしいと思っています」と答えてくれた。
山の斜面を削る大規模な宅地造成を行ったという
投稿のマンション建設は、“カーリットの森”を守る市民の会としても心を痛めるものであったようだ。
建築計画概要書の内容を確認
次にこの建設中のマンションについての情報を得ようと、横浜市建築局で建築計画概要書を取ってみた。
建築主は(株)リヴェールコミュニティーという会社で、設計者はアシーナ一級建築士事務所とある。工事着手予定は2001(平成13)年10月末、工事完了予定は2002(平成14)年9月末。
投稿のマンションの建築概要書
投稿の地域は第一種低層住居専用地域(一帯は建物の高さが10メートル以下に制限されている)、第三種風致地区(自然の景観美の保存指定を受けている地区)にあたる。
敷地面積1821平方メートル、地上3階、地下3階の建物が建つ予定になっている。高さについては地上から約8メートルとあるが、地下の部分には記載はない。
記載されている電話番号に両社とも問い合わせても応答がなかった。
地上3階・地下3階のマンションが建つ予定
投稿のマンションに対する市の対応は
建設業者に関する手掛かりはないかと、横浜市宅地審査課に伺うと、開発業者と連絡を取っているという。
宅地審査課の担当者に、建設中のマンションの現状に関して伺うと「工事を継続する意思があるかについては、継続的に確認を行っていますが、開発事業者が現在、どう考えているかまでは分かりません。しかし、斜面の仮設の山留めが一部風化しているため、開発事業者に安全なものに改修するように再三指導を行っています。しかし『安全措置をします』との返答があるものの、対応がなされずそのままになっているため、引き続き指導を行っていきます」とのことだった。
市は仮設の土止めに対する改修の要望を出している
行政としては開発業者に仮設の土止めに関する指導はしているが、開発事業者による対応がなされないため、引き続き指導を行っていくという。
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