横浜の海にイルカがいるってホント?
ココがキニナル!
たまに船で釣りに行きますが、昨年秋より2度ほど横浜港のすぐ沖でイルカが泳いでいるのを見ました。同じ場所なので居ついてるのかも。私は初めて見ましたがこれってよくあるの?(GREATさくらさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
東京湾にはイルカや、イルカとよく似たスナメリもいます。他にも意外な大型の海の生物がたくさん!
ライター:吉岡 まちこ
ちょっと待って、それは本当にイルカ?
イルカって伊豆七島とか、もっと外洋にいるんじゃないの?もし横浜にいるなら、なんだかハッピー!
そんな気持ちで、この取材をしてみたいと手を上げた。
早速、とあるSNSで横浜でイルカ見たことありますか?と聞いてみた。
すると「南本牧のバースで見た」という声が複数。八景島から千葉に行く釣り船で見たという声も。
南本牧ふ頭のバース。この海のどこかにイルカはいるのか……
(「横浜の埋め立て」取材時に撮影)
そこで釣り船店のリストから、本当に思いつきで数軒を選択し電話で聞いてみた。
まず金沢区瀬戸の釣り船店。「イルカは春先にどの船長も見てるよ」と、上々な滑り出し。
次に金沢区乙舳町(おっともちょう)のお店へ。
「イルカなら久里浜でしょっちゅう見るよ。南本牧にも住みついているんじゃないかな?」
どうやらイルカは、いること確定!?
続いて同じ乙舳町の別の店へかけたところ、「イルカは聞かないね。スナメリじゃないかね~。船についてくるっていいますよ」と、たぶん奥さん。
実はSNSでも「東京湾で長く漁師をしているがイルカは見ない。スナメリならいる」という情報があった。今回投稿してくださった方も知人に「スナメリの見間違えじゃないの?」と言われたそうだ。
やっぱりイルカじゃなくてスナメリなのだろうか。
……で、スナメリってなに?? 恥ずかしながら初耳なので検索してみた。そしてびっくり。
出てきた画像はどれもまるで「イルカ」だった!
これが「スナメリ」だ! そしてスナメリに驚くべき事実が。
「スナメリ」。どの写真も「イルカ」より笑って見える(フリー画像)
確かに見間違えそうだ。それなのに「スナメリじゃないの?」「なんだスナメリか」的なその残念な扱いは、何…? なんだか哀れスナメリ。
でも、たくさん写真を見ているうちに「これ、やっぱりイルカと違う…」と妙な気分に。
そうだ、おでこが丸く背びれがないのだ! 八景島のシロイルカ(ベルーガ)にそっくりだ。
スナメリそっくりだが「シロイルカ(ベルーガ)」は体長約5m
(八景島・ふれあいラグーンで撮影)
ちょっと調べると、スナメリは実際イルカの仲間で、ネズミイルカ科。大人で体長1.2m~1.7m。
バンドウイルカの赤ちゃんくらいの小ささだ。
ミニサイズでそんな可愛いのに無名。水族館にも入れてもらえない。
なんとなく名前の響きが悪いのか…。同情心からスナメリがすごく気になって来てしまった!
そして、釣り舟や南本牧で目撃されるのは、イルカなのかスナメリなのか。
この疑問を解決するため、横浜・八景島シーパラダイスを訪ね、海の生物に詳しい獣医師の大津大(おおつ だい)さんに、横浜で目撃されているのはスナメリなのかイルカなのか!? ズバリ聞いてみた。
横浜・八景島シーパラダイスのオフィスは、このビルの中
主にイルカなどの鯨類をみる獣医師・大津大さん
答えは「両方いますよ」と、あっさり。
「イルカは八景島のマリンゲートの護岸からも見えますよ」
え?マリンゲートって、いまシーサイドラインの駅から歩いて渡って来た所?
「何年か前でしたが、釣りをしている人からの情報があって。数百メートル沖に肉眼でも見えました」
マリンゲート側の遊歩道(写真左)から肉眼でイルカが見えることも!?
スナメリはどうなのだろう。
「今は横浜ではあまり見なくなり、千葉寄りに移っちゃったみたいです。スナメリは日本特有の個体種で、法律で完全に保護されているんですよ。だから捕獲はもちろん、研究のために触るにも許可が必要で」(大津さん)
そんな貴重種だったの!? どうりで水族館では見ないわけだ。
(関西4ヶ所の水族館には保護されたスナメリがいる)
八景島でも2006年、中区の湾内に迷い込んだスナメリの赤ちゃんを保護。でも新生児の飼育は難しく、3週間弱で死んでしまった。
衰弱した生後1週間以内のスナメリを保護し、ミルクを与え続けたが…
スナメリはアジアの沿岸から、有明海・瀬戸内海・三河湾・東京湾で生息が確認されており、40年くらい前、埋立てが進む前の横浜にも大量にいたそうだ。
背びれがないうえ、呼吸も小さく、潮を吹くしぶきも上がらないのですごく見つけにくい。
「スナメリ、飼いたいですよ~…」と、哀れスナメリどころか大津さんにも羨望の的なのだった。
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