開港百年を記念して作られ、横浜の名所を歌った歌「浜音頭」とは?
ココがキニナル!
横浜の開港百年に発表された『浜音頭』というのがあるそう。だがその後現代に至るまで、何の情報もない。横浜の名所史跡が、歌詞に読み込まれているらしい。この『浜音頭』を知りたい。(s39hbさん)
はまれぽ調査結果!
「浜音頭」の発売年や背景は不明、歌詞の中には横浜の「野毛」や「三溪園」の名所史跡が盛り込まれていた。
ライター:すがた もえ子
1859(安政6)年に横浜が開港して、2015(平成27)年の今年は156年。毎年6月2日が開港記念日として「横浜開港祭」も開催されている。
2015(平成27)年の開港祭の様子
今回はキニナルに寄せられた「浜音頭」という歌について調査することになった。
「浜音頭」は、どうやら横浜開港百年祭に合わせて作られた曲らしい。しかし、それ以外の情報はあまりないという。
浜音頭とは、いったいどんな曲だったのだろう?
開港百年祭とはどんなものだった?
横浜開港150年を記念して開催された「Y150」は記憶に新しい方も多いと思うが、浜音頭の作られたという開港百年祭とはどんな物だったのだろうか。
開港150年祭「Y150」の様子
1958(昭和33)年5月10日から6月22日にかけて横浜公園内の平和球場(現:横浜スタジアム)において開港百年祭の記念式典が開催された。
当時記念式典が開催された横浜公園
5月10日の記念式典は皇太子殿下を迎えた。姉妹都市の米・サンディエゴ市からの使節団を加え、3万5000人が出席して執り行われたのだという。
横浜公園平和球場に皇太子殿下をお迎えして開かれた横浜開港百年式典の様子
『市政概要1958年版・開港100年横浜市』(中央図書館像)
100年に一度のお祭りといううたい文句で約80万人の来場者を集めた開港百年祭の人気を博したのは、皇太子殿下と美空ひばりだったという。
また、現代でも開催されている国際仮装行列も、開港百年祭を機に大々的に行われてた。
大盛況だった仮装行列。横浜開港百年祭国際仮装行列参加(南図書館所蔵)
100ものの行事が執り行われた開港百年祭だが、行事の詳細が書かれた『開港百年祭記念行事一覧表』を見ると、5月17日に花火大会およびみなと踊り大会、5月30日から6月1日に第三回浜おどりなど、踊りに関する催し物もいくつか開催されている。
しかしここでも浜音頭の文字を見つけることはできなかった。
2015(平成27)年の開港祭の花火
開港百年祭のために作られた曲には「開港百年の歌」があるが、それ以外にも横浜市内の各地区町村ごとに作られた歌があった可能性もあり、浜音頭はそんな1曲なのかもしれない。
曲が作られた背景とは?
「浜音頭」をインターネットで検索してみると、過去のネットオークションに出品された際のジャケットの画像を確認することができた。
すると、レコードジャケットには「神奈川県観光協会推薦」という文字が書かれているのを発見。というわけで、さっそく神奈川県観光協会へ問い合わせてみた。
神奈川県観光協会があるシルクセンター
(画像提供:Piotrus:Wikimedia Commons)
お調べいただいたが、神奈川県観光協会からは「古い話なので資料も残っておらず、分かる人もいなかった」という回答だった。
横浜市の広報活動の一環で、横浜市に関連するレコードなどを市や観光協会の「推薦」「推奨」としてほしいと製作者から依頼されることはあるので、浜音頭もそのような流れでの推薦となったのではないだろうか、ということだった。
横浜市文化観光局にも問い合わせたが、資料もなく分からないという答えだった。
ジャケットには東芝EMIと書かれている。それではレコード会社はどうだろうか?
2008(平成20)年に取り壊されたEMIミュージック・ジャパン旧本社
(画像提供:Kure:Wikimedia Commons)
現在ではもう無くなってしまったレーベルだが、統合先である「ユニバーサル ミュージック ジャパン」に問い合わせをした。
しかし「曲が出された背景などは資料が残っておらず不明」ということで、こちらでも浜音頭が作られた背景は分からないまま。
ならば、浜音頭のB面に収録されている『保土ヶ谷音頭』を製作した保土ケ谷区ならば何かご存じないだろうか?
保土ケ谷区役所の外観
保土ケ谷区地域振興課に問い合わせをさせていただいたところ、こちらも記録保持期間が終了してしまっているため、残念ながらレコードが出された当時の記録が残されていないということだった。
レコードが発売された年についても伺ったところ、正確なことは分からないが、同じレコードに収録されている「保土ヶ谷音頭」は保土ケ谷区制30周年を期して1956(昭和31)年に作成されたものなので、それ以降だと思われるとのこと。
だがここで、担当者の方から浜音頭が中区で作られたのではないか、というような情報をいただくことができた。
茶色い建物が中区役所
さっそく中区に問い合わせてみたが、こちらも記録保持期間が終了してしまっているため残念ながら記録もなく、当時を知る人もおらず、浜音頭が本当に中区で作られたのかどうかはも分からなかった。
では、浜音頭が作られたというのが開港百年祭の年なら、その年の新聞に新曲発売の広告などは載っていないだろうか?
そう考えて横浜市中央図書館で開港百年祭があった1958(昭和33)年の神奈川新聞を一年分調べてみたが、残念ながら浜音頭発売というような広告を見つけることはできなかった。
また「百年祭の実行委員会」を構成していた横浜商工会議所、神奈川県、横浜市市民局の各部署にもお尋ねしたが、いずれも古い話なので「浜音頭」については資料が残っておらず、百年祭に合わせて作られた曲なのかどうかも確認することはできなかった。
幻の「浜音頭」に行き着くことはできるのか!?・・・キニナル続きは次ページ ≫