あえて「サンマー麺」ではなく「横浜あんかけラーメン」にした理由は? マルハニチロに開発秘話を直撃取材!
ココがキニナル!
マルハニチロの「横浜あんかけラーメン」は横浜の人なら誰もが知ってるサンマー麺ですが、なぜ商品名をあんかけラーメンとしたの? 譚彦彬氏との共同開発というのも魅力です。(かにゃさん)
はまれぽ調査結果!
全国展開しているため、横浜以外の人もイメージしやすいように「横浜あんかけラーメン」と命名。現在では売上ベスト3に入る商品に!
ライター:濱屋 亘
マルハニチロ本社にいってみた
マルハニチロの「横浜あんかけラーメン」は、食べてみればいわゆる“サンマー麺(生碼麺)”なのに、なぜ商品名は「あんかけラーメン」となっているのか。そんな疑問を受けて12月某日、東京・豊洲にあるマルハニチロの本社で取材してきた。
本社外観。受付はこのビルの2Fにある(画像:マルハニチロ株式会社提供)
東京メトロ有楽町線「豊洲」駅の1C出口上がってすぐ。マルハニチロは、1943(昭和18)年設立の日本大手食品会社。代表取締役は伊藤滋氏、資本金200億、従業員数は1836人(2014年11月1日時点)。「マルハ」や「あけぼの」といったブランドを筆頭に、缶詰やビン詰、チルド、冷凍食品といった商品を扱っている。
ロゴは2007(平成19)年に経営統合したマルハとニチロの頭文字を波で表現したもの
今回快く取材に協力して下さった商品開発課課長の谷和憲さん
これが「横浜あんかけラーメン」
「横浜あんかけラーメン」は、「家庭で手軽に本格中華を」をテーマに、あけぼのブランドで1995(平成7)年9月からスタートした「新中華街」シリーズの商品の一つ。内容はいわゆる“サンマーメン”で、パッケージにも少し控えめに “生碼麺”と記載されている。
発売当時、同社内の商品ラインアップとしてお弁当向けのものは充実していたが、主食となる米・麺系の商品はほとんどなかった。そこで新しい商機を手にするべく、1997(平成9)年3月に「えび広東麺」「肉絲(ロースー)麺」などの冷凍麺を続々と開発。そして1998(平成10)年に、今回キニナル投稿をいただいた「横浜あんかけラーメン」を発売している。
「新中華街」シリーズにちなんで(?)、同社キャラクターはパンダのシュウシュウ
“サンマー麺”は、ハマっ子なら一度は食べたことのある横浜発祥のご当地ラーメン。過去にはまれぽでもその定義について調査したことがあるが、その定義は曖昧とのこと。
マルハニチロの開発担当者のリサーチでは「モヤシが入っていて、スープはあんかけであること」が鉄則で、ほかにどんな具が入っているかは店によってさまざまという結果に落ち着いたそうだ。
名前の由来についても定かでなく、一説には「具となるもやしを鍋で炒めるとき、馬が威勢よく駆け回るようだから」とも言われている。
聘珍樓さんの「発祥のサンマ―メン」
「横浜あんかけラーメン」が発売された当時、冷凍麺と言えば、麺とスープだけのものが主流だった。その中で「横浜あんかけラーメン」は異例の“具付き麺”として売り出された。そのため当時の価格は他のものと比べると、やや高めで、これは当時一般的だった“麺とスープだけ”の商品に比べて2倍以上の価格、定価で200円くらいの差があったという。
ただ、値段が高いには高いなりの理由があった。まず“具付き”であること。冷凍麺と言えば“スープと麺だけ”が主流だった当時において、具を別に買う必要のない“具付き麺”は革新的だった。
また、パッケージにも味にもこだわり抜いた。麺は小さな鍋でも調理できるよう、冷凍麺にありがちな長方形ではなく、コンパクトな正方形に。袋はまだ珍しかった電子レンジ対応のものを採用した。
味に関しても、当時の開発者自らが食べ歩くだけでなく、中華の名店「赤坂璃宮」の譚彦彬(たん・ひこあき)氏に監修を依頼して、本格的な味づくりを徹底的に追求した。
譚彦彬氏は「新中華街シリーズ」全般において監修として関わっている
当時の開発者Aさんがとくにこだわったのは、冷凍すると失われがちな野菜の風味や歯ごたえを再現すること。そのため、野菜の火の通し加減には苦戦したそうだ。特にサンマー麺の特徴でもあるモヤシのシャキシャキ感を再現するのには、てこずったという。
冷凍食品ながら、具の食感にこだわったそうだ
しかしその努力の甲斐あってか、「横浜あんかけラーメン」は消費者の胃袋と心をしっかりとつかみ、発売以来15年のロングセラーに。2013(平成25)年の年間売上は、なんと約1500万食! 先行した「えび広東麺」「肉絲麺」を抑えて、冷凍麺では第1位、同社の全商品の中でもトップ3に入る人気商品となっている。
でもなぜ「主食となるような麺類」の中から“サンマー麺”が選ばれたのか。谷さんによると、新商品を開発する際、だいたいの場合は候補リストがあり、そこからさまざまな検討が行われて選ばれるのだという。
ただ、この「横浜あんかけラーメン」に関しては、当時の開発者のAさんが、とあるお店でサンマー麺を食べていて「これだ!」と思い付いたのがきっかけだったそうで、最初から一本決まりだったという。
かつては1000円もする「ふかヒレラーメン」も作ったのだとか(現在販売終了)。
じゃあなぜ今回のキニナル投稿にもあるように、商品名を“サンマー麺”としなかったのだろうか。
「それは、この商品が全国発売だったからです」と谷さん
「同商品は1998(平成10)年に全国発売という形で出されました。そのため、商品の名前はどの地域の人にとっても分かりやすいものである必要があったんです。そのため、サンマー麺ではありますが、あえて“あんかけラーメン”としたのです」
確かに、“サンマー麺”と言われると、ハマっ子にはわかっても、横浜以外の人にはわかりづらい。
京都出身の筆者は正直、魚のサンマが乗っている“サンマ麺”かと思っていた。それを谷さんにお伝えすると「よく言いますよね。もちろん、サンマはのってません(笑)」
サンマー? さんま? 秋刀魚麺? いや、違う。これじゃない。