JR大船駅を通るたびに見える大船観音、実際はどんな感じ? すみからすみまで全力レポート!
ココがキニナル!
大船駅から顔だけ見える大船観音、少し不気味な感じがします。実際どんな感じ?か気になります。(マンジンさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
戦没者の追悼と平和への願いを込めて建造された観音様。子宝にご利益があり芸能人も通うほど。ゆるキャラ「のんちゃん」や名物「観音最中」も大人気
ライター:河野 哲弥
全国でも珍しい、半身像の観音様
今回の投稿を受け、大船観音寺に問い合わせたところ、
「もうすぐ節分会(せつぶんえ)が行われますので、あわせて取材されてみては」
とのありがたい回答。
ある意味で目を引く、独特の存在感
そこで今回は、イベントレポにはじまり、観音像の内部から関連グッズまで、「大船観音の総特集」を行おうと思う。
まずは、2月1日(土)に行われた、「節分会」の様子から追ってみよう。
3時間前から行列ができるほどの大盛況
青い空をバックに、キリリと引き立つ観音様。当日の午後2時からスタートする「節分会」には、芸能人も登場し、一般参加者は境内を埋め尽くすという。そこで早めの午前11時ごろ、現地へ向かってみた。
大船駅の西口にある「大船観音入口」付近の様子
警備員の方によれば、安全のため入場制限を設けていて、800人前後のきりのいいところで打ち切りになるそうだ。昼過ぎに入場開始となるのだが、この時点ですでに20人ほどの列ができていた。
境内へ続く入口も、いったんクローズ
一方、大船観音寺では、本番を控えた準備が慌ただしく行われていた。
参加者は当日、参拝料の300円と引き替えに、粗品と豆一袋を渡される。豆が入っている袋には数字が書かれていて、イベント中に行われる抽選会の番号になっている。
粗品は日用品や台所用品など、開けてのお楽しみ
抽選会では、「油なしフライヤー」など豪華賞品11点が当たる
「節分会」では、これとは別に、約1万2000袋の豆がまかれる。ゲストは、女子プロレスラーのジャガー横田さんや、女優の伊東かずえさん、元バレーボール選手の三屋裕子さんなど総勢11人が参加予定。
さて、いよいよ時間も迫ってきたようだ。
午後1時に始まった法要を終えると、境内に設けられた特設ステージから、一斉に豆まきが行われた。
観音様を背後に、空を舞う白い袋
続けて行われた、抽選会の様子
この日訪れた参拝客は、同寺発表で820人。大学生のグループなど若い人も多く、地域にとっては毎年恒例の行事となっているようだ。
さて、イベントが落ち着いたころを見計らって、観音様の歴史や境内の見どころなどを案内してもらうことにしよう。
戦争による中断をバネに、建立(こんりゅう)が再開された観音様
「当寺の観音様は、平和への思いが強いのが特徴です」と話すのは、大船観音寺の監寺、松樹泰弘(まつきやすひろ)さん。同寺の住職は鶴見区の総持寺が兼ねているとのことで、監寺が実務上の責任者となる。
話を伺った松樹さん、会社に例えるなら総務部長といったところ
まずは、過去の経緯から説明していただこう。
観音様建立の動きが始まったのは、1928(昭和4)年のこと。第一次世界大戦を終えたばかりの日本は不況にあえぎ、飢えに苦しむ人も少なくなかったという。そこで観音様の慈悲にあやかろうと、地元の有志が「護国大船観音建立会」を設立。ところが、5年後の1934(昭和9)年には、物資不足などの影響で、築造が中断されてしまったそうである。
1934(昭和9)年当時の様子、輪郭だけができたまま放置されることに
建立が再建されたのは、それから20年後の1954(昭和29)年になる。曹洞宗管長の高階瓏仙(たかしなろうせん)や東京急行電鉄の五島慶太(ごとうけいた)が中心となって、「財団法人大船観音協会」を設立。皮肉なことに、朝鮮戦争による特需が、平和のシンボルを再起動させたのだ。
最終的に観音様が完成したのは1960(昭和35)年、実に30年越しの祈願が、ここに達成された。
見る角度によって、微妙に表情が異なる
この段階では、いわゆる観光名所としての観音様だったが、その後1981(昭和56)年には「宗教法人大船観音寺」に改称、総持寺の系列を組む曹洞宗の仏閣となった。
松樹さんによれば、なぜ半身像となったのかは不明とのこと。「おそらくですが、山の上にありますので、万が一のことを考え、立像よりも末広がりで安定しているスタイルを採用したのでは」と話す。
こうした戦争に翻弄(ほんろう)された経緯もあり、大船の観音様は、特に戦没者の追悼という意味合いが強いという。その一例が、境内にある「原爆の火(原爆犠牲者慰霊碑)」である。
平和と子宝にご利益アリ、観音様の霊験
1945(昭和20)年、広島市に投下された原子爆弾。実は、その戦火を自分のカイロに移し、自宅へ持ち帰った方がいらっしゃったそうだ。
その貴重な火を受け継いでいるのが、同寺の「原爆犠牲者慰霊碑」。
向かって左側の石碑が慰霊碑
右側の灯籠には、本物の「原爆の火」がともる
また、夏至や冬至の日前後に行われる「キャンドルナイト」というイベントでは、知的障害者の施設などで作られた紙コップ製の灯籠に「原爆の火」をともし、平和への祈りをささげるそうだ。
「キャンドルナイト」の様子と、灯籠の現物
では、一般の参拝者に向けたご利益などはあるのだろうか。
実は、節分会に登場したジャガー横田さん。長年不妊治療を続けていたのだが、ご主人の木下 博勝(きのしたひろかつ)さんが鎌倉女子大学の教授を務めていたこともあり、たまたま大船観音にお参りしたところ、見事に懐妊したという。
以来毎年欠かさず、息子さんとイベントに参加しているそうである。
大切にされている「子育て地蔵尊」
また、これからの季節は、桜が見頃を迎えるとのこと。個人的には、初夏の藤棚もオススメだ。
では、いよいよ観音様の内部に入らせてもらうことに。