四角いピザで有名な本牧のバー「IG(イタリアンガーデン)」の今と昔について教えて!
ココがキニナル!
本牧通り沿いに昭和の時代から取り残されたような「IG」というバーがあります。いかにも駐留米軍が通っていたようなバーで、横山剣さんにも縁があるようなのですが凄くキニナル!(sakuraさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「IG」は本牧エリアが最も輝いていた1960~80年代の名店、「イタリアンガーデン」を引き継ぐ古き良きアメリカンな雰囲気のバー
ライター:大和田 敏子
1960~70年代、米軍居留地を間近にする本牧は、欧米文化の発信地として人々を魅了していた。旧イタリアンガーデンの2代目オーナー、ハリー・コルベット氏の奥様、飯田かよ子さんは、「イタリアンガーデンは、店内のジュークボックスからアメリカで流行する最新曲が流れる、四角いピザが人気の店。当初の客は米兵がほとんどだった」と話す。
1962(昭和37)年ごろのイタリアンガーデン (C) Italian Gardens Collection
1980(昭和55)年ごろ、「V.F.W」「イタリアンガーデン」「VENICE」と名店が並ぶ
しだいに、東京からも多くの客が訪れるようになり、有名人も度々来店したという。
・・・と、ここまでは、旧イタリアンガーデンについて、筆者が以前、リキシャルームの取材の中で知り得たことだ。
さて、現在の「IG(イタリアンガーデン)」は、旧イタリアンガーデンとどのようにつながっているのだろう。
「HONMOKU was American」の時代の香りを残す店!?
取材当日、店に着いたのは、開店前、まだ外が明るい午後5時前。本牧通りを走ってきた真っ赤なアメ車のオープンカーが店の前に停まった。颯爽と降りてきたのが、オーナー八木弘之(やぎひろゆき)さん。あまりにも似合いすぎて、まるでドラマのワンシーンのよう。ちょっとドキドキする・・・。
開店前の「IG」。この佇まいが昭和のまま取り残された感じ?
八木さんのオーラに戸惑いながら、早速、店にお邪魔し、話をうかがうことに。
にこやかに、本牧の話をたくさんしてくださった八木さん
ハリーさんが直接の経営を退いてから、旧イタリアンガーデンの借主は度々変わり、バブル当時にはフィリピンパブやプールバーになっていたこともあるそうだ。
その後、旧イタリアンガーデンの最後の5年間の借主となったのが、八木さんだ。すっかり様変わりしてしまった旧イタリアンガーデンを元の雰囲気に戻すのには、苦労も多かったそうだ。その名残りでもある、当時、八木さんが作ったメニュー表は、生まれ変わった現在のイタリアンガーデンの壁に貼られている。
旧イタリアンガーデン時代からのメニュー表
1996(平成8)年、マンション建設のため、イタリアンガーデンは立ち退きを余儀なくされ閉店した。
そのころ八木さんは、旧イタリアンガーデンの道を挟んで向かいのビル2階で「SHUFFLE」というバーを営んでおり、その1階にあった接骨院が閉院。店舗スペースが空いたのを機に、1997(平成9)年、旧イタリアンガーデンを引き継ぐようなかたちで現在のイタリアンガーデンをオープンする。
こちらはピザのメニュー
先に店内を部分的にお見せしてしまったが、ここであらためて店全体をご紹介!
カウンター席だけの店だ。カウンター越しの会話が心地いい
「真夏1ヶ月」「真冬1ヶ月」、どうにもならない気候の時以外は、店のドアは開けっ放し
開け放たれたドアからは、外の風や音が否応なしに流れ込んできて、解放感がある。店の前にはコカ・コーラのロゴが入ったベンチとテーブルが置かれていて、外飲みもできるようになっている。店内に飾られた写真やポスターも、昔懐かしいアメリカンな雰囲気を作り上げていて、何ともいい感じだ。
たくさんの写真やポスターが、店の壁を飾っている
ずらりと並ぶカウンターの奥に置かれたお酒。その数を八木さんにうかがうと、わからないとの返事。実は、八木さん、意外にもお酒が飲めないそう。初めはピザ専門の店のつもりで始めたので、お酒の数はごく少なかったのだが、お客さんの要望でどんどん増えていったとのこと。
「自分のつくってきた店に入ってきたら仲間だと思っている」と八木さん
「内装や椅子を決め、開店するまではオーナーの仕事だけど、開店したら“店”をつくるのはお客さん。彼らが和むための空間だから、望むものはなるべく叶えないといけない」と八木さんは言う。
それぞれのお酒を置くきっかけとなったお客さんを全て覚えていると八木さん
入口から店の奥を見る
店内に流れるのは、1950年代から80年代に活躍したDJのウルフマン・ジャックによる『ウルフマン・ジャック・ショー』というラジオ番組。かつてFEN(Far East Network :米軍極東放送網)で流れていたこの番組は、青春時代の八木さん傍らにいつもあった。軽快なトークと古き良き時代のアメリカン・ロック。昔懐かしいアメリカンな雰囲気の店に、しっくり馴染んでいる。
「ハワイのキムチ屋さんが日本進出をもくろんだ名残り」という冷蔵庫
トイレにあるスロットマシンもレトロ。「一応売り物」として置いているらしい
ちょっと謎な備品や小物も、店のアクセントになっていておもしろい。