【横浜の名建築】横浜港のシンボル、横浜マリンタワー
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第13回は、50年に渡って市民に愛されてきた横浜港のシンボル、横浜マリンタワー。シックな印象のタワーは、間近に見ると無骨で力強い美しさがあった
ライター:吉澤 由美子
横浜開港100周年を記念して、1961年に開業した『横浜マリンタワー』は、50年に渡って市民に愛されてきた、横浜港のシンボル。
吹き抜けの全面ガラスが、真下から見上げる姿をより美しく感じさせる
入場者が減ったことでいったん営業を終了した時期もあったが、その後、横浜市に譲渡され、開港150年記念事業のひとつとして保存と再生を決定。2009年5月、外観のリニューアルや内部の改装、耐震補強を終えた美しい姿でよみがえった。
案内してくださった横浜マリンタワーの総支配人、永田弦(ながたげん)さん
港町にふさわしい、灯台を意識したデザイン
東京タワーが竣工した1958年、横浜でも開港100周年を記念するモニュメント建設の機運が高まり、横浜港や市内を一望できるタワー建設のプロジェクトがスタート。
建設場所は山下公園近く。設計案は20以上ものプランから、灯台を思わせるデザインが選ばれた。
1階のギャラリーホールには、横山剣さんがツアーで使ったマリンタワーのオブジェ
それまでタワーといえば角張ったものが大半を占めていたが、横浜マリンタワーは10角形。
どの角度から眺めても、同じ姿に見えるようになっている。
106mという高さは、現在から考えるとそれほどでもないが、他にあまり高い建物のなかった1961年当時、横浜港や市内のさまざまな場所からその特徴的な姿がよく見えた。
そして当時の横浜マリンタワーの最大の特徴は、展望フロアの上の塔頂部分に実際に灯台としての機能も持っていたこと。
以前は「世界一高い灯台」としてギネスブックにも記載されていた。
1階ギャラリーホールに飾られた灯台の『90糎(センチメートル)回轉灯器』
10秒おきに紅と緑の閃光を発し、空気の澄んだ日には36km先までその光が届いたと記録されている。
しかし、横浜マリンタワーは灯台としての重要度が高くなかったことと改修に費用もかかることから、年に横浜マリンタワーの灯台機能はその役割を終える。 灯台機能の廃止が決定され、2 008
網目に組まれた鉄骨の美しさ
タワーの足元にある4階建ての円形ビルは、地下の基礎が円錐状になっている。
この構造は、鉄骨で組まれたタワーが風や地震による揺れで浮き上がることを防ぎ、またその重みで地下に沈み込むことを防ぐ設計。
タワー部分は、格子状に組まれた鉄骨を10面に組み上げたもの。
直線的な部材を3角形になるよう組み合わせたトラス構造の美しさに加え、面の多さが変化に富んだ表情を見せる。
遠景ではエレガントだが、近くで見ると無骨な美しさがある
以前は赤と白のカラーリングだったが、リニューアル後はタワーの外側はシルバー、内側はブラウンオリーブに塗られ、横浜港の景観になじむシックな色合いになっている。
リニューアル前の横浜マリンタワー 横に「TOYOTA」のネオンがあった
トラス構造が映える照明でライトアップされる横浜マリンタワーは特に魅力的だ。