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【横浜の名建築】横浜開港資料館旧館(旧英国総領事館)

ココがキニナル!

横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第19回は、英国総領事館だった『横浜開港資料館旧館』は威信あふれた外観と質実剛健な室内という本格的な英国建築だった。

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ライター:吉澤 由美子

大桟橋通と日本大通にはさまれた場所にある横浜開港資料館。海岸通りに面した部分には商館倉庫風にデザインされた新館が建っており、中庭をはさんだ奥に小ぶりながら壮麗で優雅な旧館がある。
 


開港広場から見た旧館東側。ツタの紅葉がはじまっている


旧館は、もともと英国総領事館として、1931(昭和6)年に建てられた。英国工務省が設計し、資材すべてを英国から取り寄せて建築したもの。鉄筋コンクリート造の3階建てで、一部地階が付いている。屋根は銅板葺で、石造の外観を持っている古典様式の建物だ。
 


門柱や灯り、門扉も総領事館当時のもの


長く総領事館として使われていたが、1972年に東京の英国大使館へ業務をすべて移管。1979年に横浜市が建物を買い取り、1981年に「横浜開港資料館」としてオープン。2000年には横浜市指定文化財に指定されている。
 


開港広場に面した東門には旧守衛室をそのまま使った喫茶室




正面玄関は最大の見どころ

旧館の正面玄関は、中庭にあるたまくすの木の向こうにある。
 


開港広場寄りの角から正面玄関を眺める


建物は、1階と2階の天井は高く、2階と3階の間にエンタブラチュア(張り出しや帯飾り)が入っていて、3階は天井が低い。これは、1階と2階を主要階として、3階は屋根裏階であることを示したもの。

総領事館として、1階は執務室、2階は事務官2世帯の住宅、3階は使用人の住居にあてる計画でこうした設計がされていた。

この建物で一番ドラマティックなのは、正面玄関。左右に立つ大きな柱はキャピタル(柱上部)にアカンサス(葉薊/ハアザミ)の葉と蔓が彫刻されているコリント式で、その奥に玄関ドア、2階窓、そして3階の半円窓までを吹き抜けとした印象的なデザイン。
 


奥まった場所に壮麗で優雅な正面玄関


ドアの上部には、屋根のような櫛形のペディメント(破風/はふ)がついているが、2階の窓台の部分と重なるあたりが切れている。この場所には英国総領事館時代、英国王室のエンブレム(紋章)が飾られていたので、こういったデザインになっている。


正面玄関のコリント式の柱が支える2階と3階の間は切り取られ、3階部分はアーチ状の切れ込みのヴォールト天井(カマボコ型の天井)。天井格子で飾られ、扇型の窓につながっている。
 


見上げるとその圧倒的な眺めに魅了される




エレガントな丸窓がアクセントとなる外観

玄関の左右には、シンプルな窓をはさんでペディメントのついた窓が対象に配されており、3階には丸窓がある。

丸窓は、上部にキーストーン(アーチを支える要石)がはめ込まれ、カーテンのドレープのような飾りがつけられている。
 


1階のペディメントがある窓と丸窓。屋根の上には煙突も見える


正面玄関にあったエンブレムは、開港広場や日本大通に面した通用口の上部にも飾られていた。
 


日本大通側から見た西の通用口


エンブレムがあった時には、意匠で飾られた丸窓が威厳をより強めていたのだろう。
 


エンブレムを取り付けるための金具が2階窓下に残っている
 

西側通用口のドア上部にあるアイアンワーク
 

花の意匠を彫ったドアノブ