横浜駅東口にあるヨコハマプラザホテルが営業終了した理由は?解体前の館内に潜入!
ココがキニナル!
横浜駅東口にあるヨコハマプラザホテルがいつのまにかに営業終了していました。地下のメディアカフェポパイも閉店。どうやら建物の老朽化による閉館らしいです。是非調査を!(なみきさん/スさん/こーちゃさん)
はまれぽ調査結果!
耐震診断の結果、強度不足と判定が出たため、ヨコハマプラザホテルは2017年3月に営業終了。ビル解体期日は未定。メディアカフェポパイは横浜駅西口店と統合し、入居していた店舗はすべて移転済み
ライター:橘 アリー
アクセス抜群の場所にあったホテル
投稿にあるヨコハマプラザホテルは、低層階に商業施設「ハマプラザ」を併設した複合ビル「熊澤ビル」内にある。横浜駅東口から徒歩2分の場所にあり、東京方面からもアクセスしやすく、みなとみらい地区を散歩することもできる立地は、ビジネスマンや観光客にとって利用しやすい環境のホテルだった。
横浜駅東口構内を出ると、ヨコハマプラザホテルがある
今回のキニナルは、そんなヨコハマプラザホテルがいつの間にか営業終了していた、という投稿。人気もあったはずだが、なぜこのようなことになったのだろうか。
以前、ヨコハマプラザホテル前にある記念碑を、取材したこともある筆者。なおさらこの場所の変動はキニナルところ。
取材開始は2019(平成31)年2月。現状を確認しに、現地へ向かうことした。
遠目から見たヨコハマプラザホテル。営業終了しているようには感じない
ホテルの入口付近はたしかに薄暗い印象だ
ホテル入口の横には、「ハマプラザ」の店舗案内板があり、取材したことのある記念碑もそのままだった。
案内板横の記念碑(赤丸)は健在
案内板には、アニメやゲームの関連商品を販売する「アニメイト」、飲食店の「尚(しょう)」、中古同人誌やアニメグッズの買取・販売を行う「らしんばん横浜」の店舗名が書かれているが、投稿の「メディアカフェポパイ」は見当たらなかった。
3つの店舗名が案内板に掲載されている
では、地下にあるという「メディアカフェポパイ」は、どうなっているのだろう? 地下へ通ずる入り口に向かうと、立ち入りできないように封鎖されていた。
漫画喫茶「メディアカフェポパイ」へ通ずる1階入口
入口横にある張り紙には「2018(平成30)年9月に横浜駅東口店は、横浜駅西口店と統合した」と書かれていた。
東口店は西口店と統合
そして、ヨコハマプラザホテルの入り口は、しっかりと施錠されており、ガラス越しに内部を確認すると、確かに営業していないようだ。
きれいに片付いているが、薄暗くひっそりとしていて寂しさが漂う
一方、ビルの西側には、ハマプラザの入り口がある。こちらの入り口には人の出入りがあり、「アニメイト」などの店舗が営業していた。先ほどの「メディアカフェポパイ」やヨコハマプラザホテルとは違って活気があるように感じる。
ハマプラザ側の入り口は明るい雰囲気
投稿の通り、ヨコハマプラザホテルや「メディアカフェポパイ」が営業していないことは確認できたが、ハマプラザ内には、2月時点で営業しているお店もあった。もし、ヨコハマプラザホテルやハマプラザが入る熊澤ビルの老朽化が営業終了の理由であれば、この建物は今後どうなっていくのだろうか?
これらの疑問を解決するべく、ヨコハマプラザホテルの運営と熊澤ビルの管理をしている横浜米油株式会社に話を伺うことにした。
耐震強度不足が原因
横浜米油の営業所はヨコハマプラザホテルの並びにあり、徒歩1分ほどの場所だ。
こちらのビルも歴史がありそう
取材に応じてくれたのは、総務部長の山瀬重宇(やませ・しげたか)さん、総務部次長の江成健(えなり・けん)さん、総務部課長の秋山慎介(あきやま・しんすけ)さん。
ヨコハマプラザホテルが入る熊澤ビルは、1974(昭和49)年に竣工した地下3階・地上14階建てのビル。地上6階まではテナントが入ったハマプラザが併設し、7階以上はホテルとなっている。宿泊のみならず飲食やショッピングも楽しめる施設として、長年営業していた。
4階建てのテナントビルが併設
しかし、そのヨコハマプラザホテルは「2017(平成29)年3月に、国土交通省が定める耐震診断の結果を受けて営業終了しました」と秋山さんは話してくれた。
営業当時のヨコハマプラザホテルのパンフレット
2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災を受け、国土交通省が2013(平成25)年11月25日に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の改正政令を施行したことが、営業終了に至るきっかけだった。
その改正内容には、不特定多数の人が利用する建築物や、緊急避難時に利用する建築物のうち大規模なものが対象となる「要緊急安全確認大規模建築物」と、都道府県が指定する防災拠点の建築物・緊急輸送などの避難道路沿いにある建築物が対象の「要安全確認計画記載建築物」に該当する建物の耐震診断を行い、その結果の公表を義務付けるというもの。
病院・店舗・宿泊施設に学校や老人ホームなどが対象になる「要緊急安全確認大規模建築物」
(国土交通省発表資料より)
「要安全確認計画記載建築物」は倒壊した際に道路の過半をふさぐ建物などが対象
(国土交通省発表資料より)
ヨコハマプラザホテルは、3階建て以上の大規模建築物で不特定多数の人が利用する「要緊急安全確認大規模建築物」と、国道1号線沿いにあることから「要安全確認計画記載建築物」に該当し、耐震診断を行うことになった。
ホテル横の国道1号線上には、首都高速道路も通る
耐震診断を受けたヨコハマプラザホテルは、旧耐震基準で建てられた建物でもあるため、現在の耐震基準の強度には届かなかった。そして、2015(平成27)年に、東日本大震災のような大地震が起きてしまうと、倒壊の危険性が高いという結果が下されたのだ。
その診断結果を受けて、同社では、建物の耐震改修を行うか、もしくは解体するかの検討をした。検討の結果、膨大な費用がかかる耐震改修を避けて、解体する方針に決めたという。
耐震基準の強度不足により解体することになった
その後、2017(平成29)年3月18日に大規模建築物の耐震診断結果が横浜市から公表され、これを機に、営業開始から43年目の同年3月26日に終了することになる。診断結果の公表から営業終了までの期間は9日間と短く、投稿者が感じているように「いつのまにかに営業終了」となった。
公表から9日間での終了というのは、利用者にとっては突然すぎると感じてしまうかもしれないが、これに関して秋山さんは「公表前から社内で今後に関する検討は続けており、まず2016(平成28)年11月からホテルの新規予約をストップしました。その後、2017年1月に解体を決定し、既に予約の入っていたお客様は可能な限り近隣のホテルへの斡旋を行いましたが、近隣のホテルに空きがないなど移転が難しいお客様もいらしたので、2017年3月26日までホテル営業を続けました。ホテル廃業の告知自体は館内およびホームページに1月ごろから記載していました。まず第一に、利用して下さるお客様の安全を考え今回の決断にいたりました」と、公表のタイミングを振り返る。
公表から短い期間での終了だったが、最後まで安心してお客さんに利用してもらいたかったという理由を聞き、潔い決断に思えた。
竣工当時のテナント募集の冊子
ホテル営業終了後は、ビルの入居テナントに対して、移転に向けて転居先を探すなどの協力と調整を行い、2019(平成31)年3月にすべてのテナントが移転している。
そして、ビルの解体は決まっているものの、その時期や解体後については、まだ何も決まっていないという。