返還の話があった深谷通信所と上瀬谷通信施設、現状はどうなってる?
ココがキニナル!
泉区の深谷通信所と瀬谷区・旭区の上瀬谷通信施設は、返還の話も出たように聞いていますが、どうなっているのでしょうか。また、その後の土地利用計画は?(海の狸さん、りょ~。さん、ポタリんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
8年前に日米間で返還方針が合意されたが未返還のまま。返還時期は未定。市では国や住民との調整を図りつつ、跡地利用指針等を策定している。
ライター:沢村 友美
現地はいま、どうなっている?(つづき)
まずは上瀬谷通信施設。一部はフェンスで囲まれており、関係者以外は立ち入り禁止。
井田さんによると「現在も残る建物は、米軍が訓練や保管などで利用していると聞いています」とのことだったが、確かめることはできなかった。
一方でフェンス外側は民間の利用が許可されており、畑や広場があった。
畑なども許可を持つ人のみ入ることができる
北から南にかけては海軍道路が通っており、一般車両の通行が可能。
基地を南北に横切るまっすぐな道
そして深谷通信所。こちらも基地内に車道(かまくら道など)が通り、一般通行が可能。
通信隊の名前が付いた交差点やバス停がある
かまくら道沿いには畑や野球場があり、何も知らなければここが基地だとは気付かないかもしれない。時折、英語の警告板やフェンスに出くわすので、かろうじて特別な区域であることが分かる。
遊休地化しているスペースも多く見られた
実際に訪れてみると、どちらの基地も、地元の風景や人々の生活にすっかり溶け込んでいるような印象を受けた。
取材中、一部では「いま基地を返還されては困る」という意見を持つ人がいることを知った。
畑や野球場の使用など、米軍と民間とが直接交わした取り決め(市など行政が関与していないもの)がある場合、返還後に現状が維持されるのかどうか不安を感じている人や、後継者問題を抱える農家が存在しているからだ。
返還後の利用計画はどうなっているの?
いつ返還されるのか分からないとはいえ、市では返還に備えて利用指針や行動計画をまとめている。これらについても井上さんと井田さんから話を聞いた。
区役所などで冊子を配布しているうえ、ウェブ上でも確認できる
①上瀬谷通信施設の跡地利用方針・行動計画について
上瀬谷通信施設は、民有地と国有地が面積の各45%程度を占め、残りが市有地だ。
「跡地利用に際しては、地権者、国、地元の方と慎重に話し合いを行った上で進めていかなくてはなりません」
関係者間での意見交換を随時行い、環状4号線の整備を図るなどしながら、跡地利用のテーマを「農・緑・防災の大規模な野外活動空間」と定めた。
上瀬谷通信施設跡地利用概念図(横浜市「米軍施設返還跡地利用指針」より)
「広大な面積、豊かな緑環境、広域道路の利便性、市街化調整区域という地域特性などを考慮した上で、日常的には広く首都圏の人が訪れて農や自然と親しみ、災害時には防災活動拠点となりうる空間の形成を目指します」とのこと。
今後の主な取り組みとしては、「環状4号線の開通に向けた事業への着手や、国に対する国家的プロジェクト導入・国有地の有効活用などの要請を計画しています」。
②深谷通信所の跡地利用方針・行動計画について
深谷通信所は100%が国有地。直径ほぼ1kmの円形という特徴的な形状を活かした空間演出を考えているという。
テーマは「自然・スポーツ・文化の円形緑陰空間」。
「大規模な公園・緑地として、市民がレクリエーション活動にも利用できるような場所にしていきたいと考えています」
深谷通信所跡地利用概念図(横浜市「米軍施設返還跡地利用指針」より)
今後は、アイデアコンペで出された案なども参考にしながら、地域の意見・要望などを踏まえて具体化の検討を進めていくとのこと。
「今年度中をメドに地域の意見をまとめる方向で動いています。8月には泉区、9月には戸塚区の方々から、跡地利用について意見をいただきました。国有地では市民利用停止など返還に伴う課題についても、適切な対応と協力を国に求めていきます」
調査を終えて
現時点での結果だけを見てしまうと、基地問題はあまり進展がないように思われるかもしれない。
しかし時系列を振り返りながら、一つひとつどんな取り組みがなされているのかを知れば、その積み重ねが今を変え、着実に未来へと向かっているのだということに気が付く。
また、小柴貯油施設・富岡倉庫地区など合意後に返還が実現したケースもある。
これは行政だけでなく、市会も市民も皆が一体となり活動を続けた結果だと聞く。
今後の進展を願うならば、それぞれがもっと情報を共有し合い、関心を示し続けることが必要であると感じた。
米軍基地に関する情報は神奈川県や横浜市のウェブサイト、市発行のパンフレット、「広報よこはま」の各区版などで提供されている。ぜひ活用してほしい。
―終わり―
ころっけさん
2012年10月27日 19時32分
米軍の施設であったからこそ、未だに残る自然。接収されていなかったら、ウサギ小屋やヨウカンみたいなひょろ長い住宅がぎっしりだったろう。何とも皮肉な話。 お役所仕事で公園にしても、人工的・無味乾燥な感じになるでしょうね。
高木規行さん
2012年10月27日 19時01分
米軍提供施設だった国有地を地方自治体が取得するには国有財産特別措置法により使用目的によって売却価格が変わるという問題があり、売却価格は基本的に国税庁が告示する路線価によって決まる。提供施設内の路線価はないが、施設に接する道路の路線価をみると上瀬谷も深谷も概ね13万円/1平方m。上瀬谷の国有地面積を値引きなしで考えると1092619×13万円=1420億4,047万円もの土地取得費用が必要になる。深谷も同じ条件として国有地4514平方m×13万円=5億8,682万円の取得費用が必要になる。まして上瀬谷は「大口返還財産の保留地の扱い」を受ける可能性が高く、適用になると返還財産は市有・国有・保留地となり都市計画は難しくなる。その実例は小田急線相模大野駅前の米陸軍病院跡地返還事業を見れば判る。もっと良く下調べを行なって記事を書いて欲しいです。
yamakenさん
2012年10月27日 01時05分
深谷通信隊に関してはあのままひっそり残しておいて欲しい・・・米軍施設も鉄塔も。他の方の感想にもありますが、役所の作る施設に面白いものなど期待できませんし。通信隊の前のバス停の「住宅前」という名前がいまだに残っているように、そっと残して欲しいです。(実は50年前、まさにバス停前に住宅があった頃、そこで生まれ育った者です。接収と共に転居しましたが、ある意味接収のおかげで故郷が変わらずに残っているのも事実です。(以上、全くの個人的な意見ですが)