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ライター:ナリタノゾミ

3.政子の想い ~金沢八景・琵琶嶋神社~



金沢八景の平潟(ひらかた)湾に突き出す小島に、琵琶嶋(びわじま)神社という弁財社が存在する。
琵琶嶋神社は、源頼朝が1180(治承4)年に建立した瀬戸神社(金沢区瀬戸)から、国道16号を挟んだ目と鼻の先の場所にある。
 


琵琶嶋神社は、瀬戸神社と目と鼻の先の小島に建立されている


琵琶嶋神社を建立したのは、鎌倉幕府を創建した源頼朝の妻・北条政子だ。
 


琵琶嶋神社の社。「琵琶嶋」と呼ばれているのは、この小島が琵琶の形をしているため
 


竹生島の神・市杵嶋姫命(通称・弁天様)を祀る社殿。同神は音楽・技芸の神


琵琶嶋神社に祀られている神は縁結びの神ではないものの、政子があえて夫の建立した瀬戸神社と目と鼻の先に、自らが深く信仰していた琵琶湖の竹生島の神・市杵嶋姫命(いちきひめみこと)を招来したという史実にあやかり、夫婦円満を祈願する者もいるという。
 


瀬戸神社には海上渡航・交易の神「大山祇命(おおやまつみ)」が祀られている
 

瀬戸神社での7月の祭


頼朝と政子といえば、夫婦仲が大変に良かったと伝えられている。当時には珍しく恋愛結婚であったという説や、鶴岡八幡宮の「政子石」と呼ばれる霊石は、頼朝が政子の安産を祈願して奉納したというエピソードがあるほどだ。

さて、現在、琵琶嶋神社と瀬戸神社は地続きになっているが、かつては、両者の間(現・国道16号)は小さな海峡であったため、2つの神社は橋で結ばれていたのだとか。
 


瀬戸神社前から見た国道16号。かつては向こう側の琵琶嶋神社まで橋が架かっていた


その橋の下には、縁起物の石があり、その石の前で拾い物をすると福が来ると喜ばれ、「福石」と呼ばれた。
現在、橋は存在しないが、「福石」はそのまま残っている。
 


伝説の「福石」。「金沢四名石」の一つだそうだ
 

琵琶を抱えた弁天様が迎えてくれる


頼朝が瀬戸神社を建立したときにあわせて政子が建立したと伝えられる琵琶嶋神社。頼朝に対して、真っ直ぐすぎる愛情を持ち、嫉妬深い一面もあったという政子。琵琶嶋神社の存在が、未来永劫、夫に寄り添っていたいと願う妻の気持ちの表れと読み、夫婦円満のご利益にあやかろうと訪れる者がいることも納得できる。