創業58年、昭和の香り漂う野毛の老舗Bar「世界のカクテル 山荘」最後の日をレポート!
ココがキニナル!
野毛の老舗Bar「世界のカクテル 山荘」の最後の日をレポート(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
1955年に創業以来、58年続いた「世界のカクテル 山荘」。最終日は閉店を惜しむ多くの方が来店した!「山荘」は今後も皆の心に生き続けるだろう!
ライター:松宮 史佳
懐かしの名画を感じさせる空間
壁には女優のソフィア・ローレンや俳優のハンフリー・ボガートのポスターが貼られている
ポスターは「お客さんが(映画好きのマスターに)持ってきた」とのこと。
カクテルにも「血と砂」「南太平洋」など、洋画のタイトルが並んでいる。ちなみにカクテル名は当時いたバーテンダーが名付けたそうだ。
マティーニではなく、“マテニー”というのが味わい深い
横浜港に沈む夕日をイメージしたカクテル「横浜」
ライトブルーが鮮やかな「南太平洋」
店で出すカクテルはメニュープラス20~30種類
“世界のカクテル”ってキャッチコピーについてるけど「(数は)大したことはない(笑)」とジローさん。
一番人気のカクテルはやはりオリジナルの「山荘カクテル」
すっきりさわやかな飲み口が特徴だ。
ほかには「マティーニ」や「ソルティードッグ」など、オーセンティックなカクテルが人気。
食べ物は腸詰がおすすめ
ふと、天井を見上げると網が! もともと、天井は真っ白だったが、長年のヤニが蓄積され、茶色くなったらしい。
天井が真っ白過ぎて空間的に寂しいと網が飾られた
壁には消えかけた「メッセージ」もあり、「山荘」が歩んできた長い歴史を感じさせる
「山荘」といえば、今ではほとんど見かけなくなった“ジュークボックス!”
100円で2曲もリクエストできるのがうれしい
「スカーレットとレット」「ムーンリバー」「甘い生活」など、懐かしの映画音楽が並ぶ
「山荘」閉店後、趣きあるジュークボックスはどうなるのだろう。尋ねてみると、次の引き取り手が決まっていると聞き、ひと安心。
会社員からバーテンダーに
ジローさんが会社員からバーテンダーに転職したのは1970(昭和45)年のこと。旭区鶴ケ峰出身で横浜の会社に勤めていたというジローさん。もともと「山荘」にはお客さんとして来ていた。だが、仕事を辞めることになり、「うちでバイトしない?」とほかのバーテンダーから誘われたのがきっかけだったそう。
ところで、本名は力さんなのに、なぜジローさんなのだろう? 不思議に思い、尋ねてみる。すると、もともとは「本名で(バーテンダーを)やっていた」とジローさん。だが、「覚えにくい」というお客さんの声から、「(歳の順番に)タロー・ジロー・サブロー・ゴロー」と名付けたらしい。そして時が経ち、今残っているのはジローさんだけとのこと。
バーテンダーになって今年で44年というジローさん
44年間のバーテンダー人生で一番印象に残ったお客さんを尋ねる。すると、「うーん、特にないなあ」とジローさん。楽しいのは「やっぱりお客さんが喜んでくれた時」と答えてくれる。長年の経験から「あのお客さんは恋をしている」「失恋した」など、「話を聞かなくてもわかります(笑)」とのこと。
一番忙しかったのは「昭和30~40年代」。ジローさんが入ったころは深夜2時まで営業していたそうだ。ちなみに「(自分が)入る前は始発まで営業していた」とジローさん。
現在の営業時間は17時半から12時まで
(はまれぽのステッカーは許可を得て貼らせていただいた)
出火を乗り越えて
実は現在の建物は二代目。40年ほど前、出火により全焼したらしい。時期ははっきりしないが「昭和50年ごろの7月、月曜日の午前中だったと思う」とジローさん。
客層は常連客が中心。なかには50年来の常連さんもいるとのこと。以前は中高年が中心だったが、2004(平成16)年に東急東横線桜木町駅が廃止になったことにより、野毛の客層が入れ替わり、若いお客さんも来るように。
店は、カウンターから埋まっていくそうだ。やはり“ジローさんやスタッフと語らいたい人”が多いのだろう。
ジローさんやスタッフの方と語らえるカウンター席は“特等席”
ちなみに、店内は2階もある。
2階ではカラオケができる
1時間ほどお話を伺い、時刻は17時。新聞で閉店を知ったお客さんが開店前から押し寄せ、「連日満席」とのこと。ジローさんにお礼を言い、「山荘最後の日(1月20日)」に再度取材することに。