横浜の秘境、田谷の洞窟近くの趣ある日本料理店「九つ井」のこだわりを教えて!
ココがキニナル!
栄区、田谷の洞窟近くにある「九つ井」。素敵なロケーションと美味しいお蕎麦で大好きなお店です。器も焼いてるようですし、あのこだわりをもっと深く知りたいです(katsuya30jpさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
食と文化を結び付け本物の空間を楽しんでもらいたいという社長のこだわりが生んだ九つ井は、手作りのぬくもりと遊び心があふれていた
ライター:ほしば あずみ
離れ個室の非日常感へのこだわり
九つ井のこだわりは、広い敷地の随所にちりばめられた遊び心にも表れている。
敷地全体に敷き詰められているタイルは、一つひとつに何かのメッセージが込められていて、眺めているだけでも楽しい。
晴れた日は外での食事も心地よい。足元のタイルに発見があるかも
「思い切り遊んだ」という男性用トイレ。よく見ると・・・
確かに遊んでいる。ちなみに女性用はこれの逆・・・ではなくテイストがまったく違う
敷地内でごとごと回る水車の脇に、さらに奥へ向かう階段。その先の様子はまったくうかがえない。
この先に、九つ井のはじまりである、8棟の離れが点在している。今でも本店の大きな特徴である離れを泉川さんに案内していただいた。
この階段をのぼると非日常空間が待っている
「こだわりの店を経営したいという信念ではじまったのが九つ井です。食は人間の原点のひとつですから、あらゆる楽しみ方があります。食と文化を結びつけて、本物の空気の中で食事を楽しんでもらいたいという考えです。お皿はただ料理を乗せるものではなく、彩りや質感で料理を引き立てるもの、絵はふと気づくと飾られているような、心地良い空間にするもの。お客さまに“来てよかった”と思っていただけたらと思っています」と泉川さん。
遠目からのみ「写真OK」という泉川さんと野趣に富むアプローチで離れに向かう
最近こういうところを歩いたな・・・
その先には、まさに隠れ家。「安土(あづち)」という名の離れ
この個室感。周りを気にせずゆっくり過ごせる
離れのメニューはコース料理になっている
8棟それぞれ席数が異なり、利用人数ごとに案内される離れは変わる。点在する離れは完全に独立しており、赤ちゃんを囲んでの会食や法事などでも、気がねなく使える利点がある。
小道は雨でも濡れないよう、さりげなく透明の屋根で覆われている気遣い
席数だけでなく雰囲気もそれぞれ違う。これは「奈良」
画壇の芥川賞とも呼ばれる「安井賞」受賞画家、小林裕児の作品が各部屋にある
食と文化にこだわり、蕎麦を打ち、器もすべて手作りという話をうかがうと、たとえば北大路魯山人のような、何か高尚な気難しさが伴うような気がして身構えそうになるが、実際の九つ井にあるのは、お客様をもてなしたいという「温かみ」である。
やきものも気難しくない。これは案内してくださった泉川さんの作品
アプローチのあちこちで愛らしいやきものたちが迎えてくれる
泉川さんは言う。「離れの建物も、本職の建築家からすれば非常識な造りをしているかもしれません。社長たちが、“こんな空間をつくりたい”と思ったままに建てているので。だからそれぞれ趣が違うし、いつも敷地のどこかで何かの工事が行われているんです」
九つ井の社長、渋谷千恵麿(しぶやちえまろ)さん
ご本人の写真はNGだったが、ろくろを回している若いころの写真が、一室に飾られていた。
工房を設けて自家窯でやきものを焼くようになったのは、開店から5年ほど経ったころだったという。その工房「陶郷(すえのさと)」へも案内していただいた。