港ヨコハマのミステリー!? 横浜スタジアムの住所が「横浜公園無番地」なのはなぜ?
ココがキニナル!
「横浜スタジアム」の住所が「横浜市中区横浜公園無番地」です。なぜ「無番地」なの?「横浜公園」は住所なの?どういう経緯でこのような住所になったの?(ひろりんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「横浜公園」は1928年に制定された正式な住所。元々は国が造った公園であり、人が住むことを目的としない国有地にあるので番地登録がない
ライター:篠田 康弘
横浜公園は、横浜市の持ち物ではなかった
行き詰まりを感じながら、改めて横浜公園を紹介しているホームページを見ていると、興味深い一文が書かれていることに気づいた。
横浜公園の紹介HP(横浜市環境創造局作成)
「なお、当該公園用地は、国有地の無償貸付を受けております」
なんと、横浜公園の土地は国有地、つまり国の持ち物だった。
だから横浜市の各機関に聞いても分からなかったのだ。
この情報に間違いがないか、横浜地方法務局に行って横浜公園の登記簿を確認してみた。
横浜地方法務局が入っている横浜第2合同庁舎
すると権利者の欄には「大蔵省」と書かれていた。国有地という情報は間違いないようだ。
大蔵省はもうないが、財務省が権利を引き継いで管理しているとのことだ。
なお登記簿を申請した際に、横浜地方法務局の人から面白い話を聞くことができた。
無番地という登録で問題ないのか聞いてみたところ、「国有地なら問題はないですよ。人が住むことを目的としていないから、番地を登録しなかったんじゃないですかね」という答えが返ってきた。
公共の道路や山奥の土地といった、人が住まない国有地には番地が無いことがよくあるそうだ。
なるほど、確かに横浜公園に人は住んでいない。この可能性は高いな。
そして、土地の所有者である関東財務局横浜財務事務所にも話を聞いてみた。
関東財務局横浜財務事務所は、横浜地方法務局と同じ横浜第2合同庁舎にあった
関東財務局横浜財務事務所に伺い、横浜地方法務局で聞いた話をしてみたところ、「昔の話なので正確には分かりませんが、多分そうでしょう」という回答があった。
よかった。無番地の答えはこれで大丈夫だろう。
続けて、なぜ国有地なのかを聞いてみたところ、「理由はちょっと分からないが、明治時代から国有地を横浜市に貸し出している」ということであった。
うーん、無番地の答えは大丈夫だが、国有地の理由が分からないと釈然としないな。
横浜公園は、初めから国の持ち物だった
その後『ヨコハマ公園物語』という本に目を通していて、以下のような一文を見つけた。
『ヨコハマ公園物語』
「横浜公園は政府自らが建設した『彼らと我らの公園』であった」
横浜公園は政府自らが建設した・・・そうか、横浜公園は最初から国の持ち物だったのか。
ここで、最初に述べた横浜公園の歴史を思い出してほしい。
1909(明治42)年 横浜市の管理となる。「横浜公園」に名称を変更。
となっている。
さまざまな資料に「管理」と書かれていたので、筆者も意識せずにそのまま記したが、あくまで「管理」であって「所有」ではない。
つまり、横浜市は一度も横浜公園を所有したことがないのだ。
横浜公園は初めから国の持ち物であり、居住を目的としない国有地なので番地を登録しなかった。そして番地がないまま、1909(明治42)年に所在地の横浜市に管理のみを委託。その後、所有者は国、管理は横浜市、番地は無番地という状態が今日まで続いていると考えれば、すべてのつじつまが合うのである。
国が造った市民のオアシス。横浜公園
ちなみに現在は、同様の公園については管理の委託のみではなく、管理している地方公共団体に国有地を無償貸与することが、都市公園法で定められている。
まだ残る謎
無番地の謎は解けた。
しかし、ここで新たな疑問が浮かんでくる。
横浜公園に住んでいる人はいないが、毎日働いている人たちはいる。そう、横浜スタジアムの職員は、毎日横浜公園で働いているのだ。
プロ野球シーズンはもちろん、シーズンオフもアマチュアスポーツやさまざまなイベントで利用されているから、荷物のやり取りが一年中発生しているはずだ。番地が無くて困ったりしないのだろうか。
番地が無いのに、荷物がきちんと届くのだろうか?
番地が無くて問題はないのか、横浜スタジアムに電話で聞いたところ、「全く問題ないですよ」という回答があった。
「横浜市中区横浜公園 横浜スタジアム」
と書けば、ちゃんと荷物が届くそうだ(ただし荷物によって受け取る部署が異なるので、どの部署宛かちゃんと分かるように宛先を記入してほしいと話していた。もし送る場合は注意してほしい)。
よかったよかった。これにて一件落着。
取材を終えて
「無番地」という文字を見るといわくつきの土地のような感じがするが、何の問題も無い至って普通の土地であった。今回取材した横浜公園以外にも、横浜市内にはまだ無番地があるようなので、残りは読者の皆さんが探してみてほしい。
最後になりますが、横浜市役所、中区役所、都市発展記念館、横浜地方法務局、関東財務局横浜財務事務所、横浜スタジアムの各担当者の皆様、取材にご協力いただきありがとうございました。
―終わり―
参考文献
『横浜の町名』(横浜市市民局総務部住居表示課編、横浜市市民局総務部住居表示課、1996年)
『ヨコハマ公園物語 港町の歴史を歩く』(田中祥夫著、中央公論新社、2000年9月)
横浜スタジアムホームページ内『横浜スタジアムの歴史』
みなと301さん
2017年09月12日 14時43分
確か、山下公園も「横浜市中区山下公園「無番地」」だったと思います。
chaikunさん
2017年04月06日 12時02分
自衛隊の基地などは無番地が多いですよ
Ozokさん
2017年04月05日 17時45分
かつての関東自動車工業(今はトヨタ自動車東日本横須賀事業所)も,横須賀市田浦港町無番地です.これも,民間の活動が普通に行われている場所なのに無番地の例ですね. ところで,人が住まないから‘番地’は無用はわかりますが,土地の番号である‘地番’はないと不便じゃないのかな? それとも,横浜公園の土地って一筆(全体で区割り一つ)なんでしょうか.公図を見てみたいです.