港北区新羽町で作られていた「寒そうめん」について教えて!
ココがキニナル!
昔、新羽のあたりは、寒ソウメン作りで有名だったと聞きました。かつては田んぼが広がる農村地帯だったと思いますが、麦も作っていたの?また、いつごろまで作っていたのでしょうか?(ねこぼくさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
寒そうめん作りは江戸中期から農家の副業として始められた。小麦は周囲の村から調達。江戸にも出荷されていたが、昭和初期の恐慌をきっかけに作られなくなった
ライター:橘 アリー
「寒そうめん」作りの様子について
「寒そうめん」は、当初は1月~2月ごろに造られていたが需要が増えてからは11月~翌年の3月あたりにかけて作られるようになったそうだ。
なお、「寒そうめん」作りには、地方(何処かは不明)から、そうめんを作る“そうめん職人”が雇われていたそうだ。
そして、そうめん職人と一緒に、手伝いの子ども2人、そうめんの箱を造る箱職人2人も雇われたそうである。
そうめん作りの作業は、冬の厳寒(げんかん)の中、深夜の午前1時ごろから起きだして、午後5時ごろまでかかる重労働で、2日がかりで作り、その後、蔵の中で熟成させて田植えの終わった6月下旬に出荷したそうだ。
「寒そうめん」作りに使われていた臼(長谷川さん資料より・萩生田〈はにゅうだ〉家所蔵)
「寒そうめん」造りに使われていた包丁(長谷川さん資料より・萩生田家所蔵)
ちなみに、そうめん作りの材料は、小麦と塩と油である。
小麦は太尾(ふと)・高田・小机から、菜油は菅田(すげた)から、塩は神奈川から、製品を包む菰(こも)は高田・駒林・山田から、木箱に使う板は小机・石川から、木箱をしばる縄は山田・高田からと、近隣の村々から調達していたようである。
当時の「寒そうめん」の銘柄としては、本白髪(ほんしらが)・富士雪・志ら糸・万国一・玉椿・志ら梅・初雪などがある。
「寒そうめん」の銘柄が書かれた当時のラベル(長谷川さん資料より・萩生田家所蔵)
これで、新羽で麦を作っていたのではなく、近くの村から調達していたのだと分かった。
続いて、「寒そうめん」の出荷先と、いつごろまで作られていたのかについて。
船で運ばれていた!?
「寒そうめん」は、江戸時代から幕府御家人や商家の中元用の贈答品として珍重されていたそうだ。
鶴見川が流れているこの地域には、昔は、船で物を運ぶ「舟運(しゅううん)」と呼ばれる伝統があり、「寒そうめん」は、田植えの終わった後の6月下旬に蔵から出され、太尾河岸(ふとおがし)まで手車で運び、「舟運」を利用して江戸(東京)へ出荷されていた。
太尾河岸の様子の絵(「鶴見川舟運復活プロジェクト」の資料より)
ちなみに、2007(平成19)年に、鶴見川の舟運を復活させようという「鶴見川舟運復活プロジェクト」が始まり、長谷川さんはその会長を務めておられる。
「鶴見川舟運復活プロジェクト」の資料
また、「水運」の利用ではないが、横浜市内の神奈川町、関外の野毛・寿町・吉田町・長者町、関内の太田町・相生町、根岸、蒔田などへも出荷されていたようだ。
このように、新田地区で造られた「寒そうめん」は贈答品として非常に好評だった。
最後に、そんなに好評だった「寒そうめん」が作られなくなった時期について。
「寒そうめん」が作られなくなったのはいつごろなのか!?
「寒そうめん」作りは、昭和初期の恐慌のころに途絶えてしまったそうだ。
長谷川さんによれば、その理由としては以下の3点が考えられるという。
(1)明治30年代後半ごろから製麺機が導入されるようになり、新羽で行われていたような手造りの作業によるそうめん作りの需要が減っていった。
(2)明治40年代以降になると、贈答品の需要が日用衣服反物や醤油などに変わってきて、麺類は人気がなくなってきた。
(3)1920年代以降、新羽・新吉田などの地域が、地域の都市化の影響を受けて、農家がそうめん作り以外の副業をする機会が増えていった。
これらの理由により、手造りの「寒そうめん」の需要は減っていき、作られなくなったそうである。
残念ながら横浜市内では作られなくなった寒そうめんだが、日本三大そうめんの産地と呼ばれる奈良県(三輪そうめん)や兵庫県(揖保乃糸)、香川県(小豆島そうめん)、関東では埼玉県川越市の「舟運亭」などでは、現在も作られているそう。
埼玉県川越市の「舟運亭」。うどんも有名だそうだ
取材を終えて
昭和の始めごろまで、新羽周辺で作られてた「寒そうめん」。
現在は作られてはいないが、そうめんを貯蔵していた蔵が今も残っていると分かった。
そして、新羽には、こんなのどかな風景も残っている
当時の様子を思いながら、訪れてみてはいかがだろうか。
―終わり―
ながしめさん
2014年10月14日 10時50分
新羽の辺りは冬の谷?だかなんか寒そうな地名で呼ばれてたらしいですから、そうめんは、分かる気がします。