【横浜の名建築】優美で気品ある女王 横浜税関本関庁舎
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第9回は、海岸通りにある横浜税関本関庁舎。繊細で優しい印象の中に、威厳と美しさを備えた姿は、クイーンの称号にふさわしいものだった。
ライター:吉澤 由美子
創建時の姿をとどめる4室、そしてクイーンの塔内部
(続き)
ロマネスク様式(ローマ風の古典的スタイル)の典型である正面玄関を入ると、落ち着いた空間が広がっている。
中の灯り自体はガス灯から電気に変わったが、照明器具自体は創建時のもの
床には凝ったモザイク。まず真鍮の枠を敷き、その間に石をはめ込んでいる。
白黒の市松模様も真鍮で縁取りされている。なめらかで丁寧な仕上げ
羅針盤を思わせるクロス(十字)の意匠は、さまざまな場所に配されている。
玄関の天井にあるクロスの意匠
三角とクロスを組み合わせたライト
外観は昔のままだが、内部はかなり近代的に補修改装されている部分も多い。
天井から下がったライト以外は、往時の姿のままの廊下
そんな中に、創建時そのままに残された部屋が3階にある。
旧貴賓室、控室、税関長応接室、税関長室の4部屋で、普段は見学できないが、毎年6月と11月に一般公開が数日行われている。
階段にある階数表示もレトロ
3階にある旧貴賓室は現在、会議や記者会見などが行われる場所だ。
こちらの床は、絨毯の回りをぐるりとフローリングが囲んでいる。
格式はあるが重すぎない上品な内装。ヒーターを隠すグリルにクロスの文様がある
梁に銀のプレート。貴賓室だけに、菊の文様
ドアにも細かな意匠が施された銀の金属飾りがある
隣には控室があり、貴賓室より抑えめながら、こちらも格式ある内装。
さりげなく置かれた衝立も素晴らしい名品。上質の木を使用しているのでかなり重い。
獅子、鳳凰、麒麟などが細かく織られている。木枠部分の中心には菊