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殺処分「ゼロ」?神奈川県における動物保護の光と影・前編

ココがキニナル!

神奈川県は2016年度の犬猫殺処分はゼロと発表したが、横浜市はどうなの? 時を同じくして市は待機児童が2人と発表するも、実態とかけ離れ過ぎていると批判されたばかり。キニナル!(よこはまいちばんさん)

はまれぽ調査結果!

2016年度、横浜市動物愛護センターで安楽死処分されたのは、犬36頭、猫404頭。対して神奈川県動物保護センターは犬猫共にゼロ。理由は本文参照

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ライター:関口 美由紀

神奈川県動物保護センターへ

 

小田急線秦野駅からバスで約20分。南平橋バス停下車
 

「神奈川県動物保護センター」は、平塚市の自然豊かな場所にある
 

神奈川県動物保護センターは、平塚市にある神奈川県管轄の施設。
管轄区域は、横浜市、川崎市、横須賀市及び相模原市、藤沢市を除く28市町村の全域と広域をカバーしている。

1972(昭和47)年4月、神奈川県犬管理センターとしてこの施設は誕生した。当時の役割を簡単に言ってしまえば「野犬(野良犬)を処分するための施設」ということになる。
時代は流れ2013(平成25)年度、神奈川県動物保護センターは初めて犬の殺処分「ゼロ」となり、全国レベルのニュースへと発展し話題となった。

 

業務課長の岩屋修(いわや・おさむ)さんに話を伺った
 

岩屋さんは「殺処分を『ゼロ』にしようとして何かをしたというのではなく、保護した動物を1頭1匹ずつ譲渡していった結果、2013(平成25)年度に気が付いたら『ゼロ』だった、ということで『本当に殺処分しないで済んだんだね』という話なんです」と説明してくれた。

横浜市では、病気の個体や攻撃性等が改善されない個体などは、致死処分対象となるということは前述したとおりだ。ところが神奈川県では、どんなに凶暴な犬でも時間をかけて正しく飼育すれば躾も入り、飼えるようになると言って引き取ってくれるボランティアがいるという。

 

犬猫のほかインコや亀も譲渡対象
 

「センターで最期を迎えるのは可哀想だと、回復の見込みがない重篤(じゅうとく)な状態の仔を積極的に引き取ってくれるボランティアさんもいるので、センター内での自然死も数が減っています」とのことだ。

交通事故などで負傷している猫については、公益社団法人神奈川県獣医師会員の開業獣医師に委託しているが、病気や負傷した犬に関しては、このセンターで出来る限りの治療をする。しかし、職員の中に獣医はいるものの、ここでは診断に必要な検査や機器、治療や予後観察を行う時間、人員が不足しているため、応急処置しか出来ない。

そういった状況を知っているボランティアが、自身で医療費を負担してまで「動物病院で治療を受けさせたい」と、引き出しをしてくれることもあるそうだ。

 

現在も使われている手術室 
 

ボランティアさんたちは、どのように情報を入手しているのだろうか?

「新たに収容した際に『こんな状態の犬(猫)が入りました』という情報を流しています。すると、それを見たボランティアさんが引き出しに来てくれます」という。

どうしても譲渡対象にならない凶暴性のある個体、気の荒い個体についても、トレーナー経験や、猟犬の飼育経験が豊富なボランティアが協力してくれるという。

「センター収容時には、触れることができない、暴れるといった感じでとても譲渡出来ないと思っていた犬でも、数ヶ月後には普通にリードに繋がれて、穏やかな表情でこちらに寄って来てくれるんですよ。ボランティアさんが時間をかけてしっかりトレーニングしてくれたんでしょうね。その姿を見た時には本当に感激しました」と岩屋さん。

 

猫たちが多くいる解剖室。猫は犬より温度差に弱いためエアコンがある
 

乳飲み猫を収容した場合も、その日のうちにボランティアに連絡を流す。これもすごいことに、必ず誰かが引き出しに来てくれるというのだ。

こうしてセンターでの犬の殺処分が「ゼロ」になり、猫の収容が500頭くらいになって来た時、あるボランティアから、「何とかできるのでは」という言葉が出た。
2013(平成25)年度から乳飲み猫に関しても収容情報を流し、職員、ボランティアが一丸となって懸命に努力を重ねた結果、次年度(平成26年)にはすべて引き取りをしてもらえるようになり、猫の処分も「ゼロ」となった。

 

センターで訓練を受ける犬用の個室。屋外のため気温調整は当然ながら出来ない