歴史とともに、その顔を大きく変貌させてきた街。はま旅Vol.61「綱島編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第61回は、かつて温泉地として栄え、「綱島温泉駅」という駅名だったという綱島駅。
ライター:吉田 忍
綱島は初めての街。五月晴れの爽やかな日、どんなすてきな人々に、面白いモノに、美味しいものに出会えるだろうか。
初夏の陽射しがまぶしい午前10時
かつて温泉地だった綱島に残る 源泉かけ流しの天然温泉
まず、うかがったのは「東京園」。今も残る数少ない綱島温泉の名残のひとつ。東口からすぐの綱島街道沿いにある。
かつては赤い煙突がどこからでも見えたという
昭和初期の最盛期には70軒以上の温泉旅館があり、東京の奥座敷とも呼ばれ、新婚旅行で訪れる人々も多かった。ところが新幹線が開通し、首都圏からの温泉旅行先は熱海へと変わっていき、次第に寂れていった。
広いロビー。ガラスの外には新緑の中庭が広がる
東京園は戦後、駅の反対側で日帰り温泉を営んでいた。現在の場所は元、東急の社員向け保養所で、後に東芝の施設となり、それから東京園が譲り受けた。
当初の建物は昭和50年に全焼。このとき、関東一円から再建を望む5000人の署名が集まったという。現在の施設は53年に再建されたもの。
東京園社長の中村ゆう子さん
先代社長(現社長のお父様)の学生時代からの親友が当時、日本興業銀行の頭取で「自分を担保に資金を貸す」と言ってくれた。最初、銀行は8階建のビルにしようと話を持ってきたけれど、先代社長はビルはイヤだと自分でデザインされた。モダンでゆったりしたデザインは、今でも魅力的。
赤く高い煙突は東京園のシンボル。当時は高い建物がなく、電車に乗っていても煙突が遠くからよく見えたという。赤は炎の赤。
カラフルな壁面には、白のタイルで「TOHKYOEN」とデザインされている
先代社長は大手建設会社に依頼せず、地元の繁栄のためにと近隣の大工さんや施工業者を集めて作った。
ロビーの外にはテラス。湯上がりにここでビールは格別だろう
2階の宴会場から眺めた中庭。春には桜や桃が楽しめる
実は朝イチにここへうかがった理由でもあるのだが、営業時間前なので、お風呂の撮影もさせていただいた。
昔ながらの風情ある番台
真っ黒なお湯「黒湯」美肌効果があり、芯まで温まる天然温泉のかけ流し
男湯の天井には「♂」マーク
女湯の天井には「♀」マーク。女湯に足を踏み入れるのは生まれて初めて。ドキドキ……
ビールはもちろん、カレーや牛丼もある売店。一日中楽しめそう
生ビールと枝豆のセットが400円。カレー400円。牛丼350円。安い!
ここの取材は最後にして、温泉とビールで締めるというプランの方が良かったか……と少々後悔しながら、次の目的「綱島の桃」を探しに。
以前、横浜ビールを取材したときに、綱島の桃で作るビールがあると聞いたのだ。