歴史とともに、その顔を大きく変貌させてきた街。はま旅Vol.61「綱島編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第61回は、かつて温泉地として栄え、「綱島温泉駅」という駅名だったという綱島駅。
ライター:吉田 忍
桃の一大産地だった綱島に、今も幻の桃があった
東京園の裏道を歩いていると、「日月桃(じつげつとう)」という石碑を見つけた。道路から見えるが、個人宅の庭。
インターフォンで「写真を撮って紹介させていただいてもいいですか?」と訪ねると、わざわざ出てきて、親切に教えてくださった。
池谷(いけのや)光朗さん87歳。今でも桃の世話をされている
昔、鶴見川は頻繁に氾濫し、地元民を悩ませていた。そこで、水害に強いという桃を育て始めたのが池谷さんのおじいさんで、明治後期のこと。以来、綱島は桃の一大産地となり、日本一の桃として人気が高く、千疋屋など一流の果実店に卸していた。最盛期には1日1000箱も出荷していたのだそう。
日月桃記念碑「日月桃の発見発表をした池谷道太郎の功績を後生に伝えるため…」とある
「あかあかと 日はつれなくも 秋の風」芭蕉の句碑もあった
昭和13年に起きた鶴見川の大氾濫や戦争、そして住宅地化が進むにつれ、桃畑はどんどん無くなり、今では桃農家は池谷さん一軒だけ。
桃畑。果実の袋かけ作業が始まっていた
梅くらいにふくらんだ桃の実
日本一美味しいと言われる日月桃。今では出荷するほどではないが、6月に収穫され近くにある「ピーチゴルフセンター」で販売される。ぜひ味わってみたい。
口いっぱいに、じゅわぁーっと広がる桃を想像していたらお腹がすいてきた。
そこでランチを食べに大綱橋を渡って樽町方面へ。
ガッツリ系ランチ「ドライカツ」を食べ、鶴見川で「バク」の謎を解く
鶴見川に架かる大綱橋
橋梁名の左にバクの絵が描かれている。動物の中でもバクというセレクトは唐突で不思議だが、この謎は後に解明する。
橋を渡ったところで綱島温泉の名残を発見「ラジウム霊泉湧出記念碑」
さて、ランチは洋食屋さん「ポワレ」。10人ほどで満員になるカウンターだけの小さなお店。
開店10周年感謝セール実施中だった
ドライカレーにカツがのって、さらにカレーがかかっているという、男子版宝石箱ガッツリ系一品「ドライカツ」を注文。
店頭のメニューを見て物珍しさで選んだが、一番人気メニューだとのこと。700円
昔ながらの庶民的な洋食屋の味なのだが、ピリリとスパイスが効いて最後まで旨い。サイドディッシュのサラダのドレッシングが爽やかで、そのバランスも絶妙。
動きに無駄がなく、たまった注文をガンガンこなすマスター
ちょうどお昼時ということもあり、カウンターは常に満席状態。お邪魔になってはいけないので、早々に退散。ランチのセットメニューも充実していて、近くなら通ってしまいそう。
食後は鶴見川散歩。ゆったりした川の流れには心を癒す力がある。青空の下、のんびりするにはこんな場所がいい。
ここにも「タマちゃん」が来たのだなぁと、思い出す
バクの謎が解決した案内板
東横線鉄橋近くに「バクの案内板」なるものが。鶴見川流域の形がバクに似ていると書いてある。なるほど、それで先ほどの橋にもバクの絵があったのかと納得。綱島はバクのお尻なのだ。案内板にはバクの説明の他、このあたりの生き物が紹介されている。