鎌倉から世界へ!「鎌倉シャツ」の魅力に迫る!
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鎌倉シャツを取材してください。(jckさんのキニナル)
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鎌倉シャツは1993年創業の「メーカーズシャツ鎌倉」が製造するシャツの愛称。天然素材100%のドレスシャツは世界基準を見据えて作られている。
ライター:松崎 辰彦
鎌倉シャツはなぜ売れる?
鎌倉シャツ──正式名称「メーカーズシャツ鎌倉」。鎌倉を本拠地として全国に店舗を展開する注目のアパレルメーカーである。
鎌倉シャツ本店
従業員数120名、昨年度5月時点での年商が約28億円という現在躍進中の企業だ。創業者の貞末良雄(さだすえよしお)会長は、日本を代表するファッションデザイナーの故・石津謙介が設立した株式会社ヴァンヂャケット出身。その後大手スーパーなどを経て、1993(平成5)年、まだ自身がサラリーマン時代にメーカーズシャツ鎌倉を創業した。
貞末良雄会長(写真提供・メーカーズシャツ鎌倉)
天然素材を活かした自然な着心地が特徴で、素材のみならずデザイン面においても、洋服の本場である海外でも恥ずかしくない“本物のシャツ作り”を社是としている。
2013年2月現在国内24店舗、海外1店舗という営業展開の最中である。
鎌倉シャツはなぜ売れるのか・・・その秘密に迫ってみた。
在庫を持たず現金一括払い
「目指したのは『4900円(税抜)の最高品質のシャツを作る』ということでした。本物と言えるシャツは当時2万円はしましたが、会長はそのころ“サラリーマンがシャツ一着に気軽に出せる上限は4900円。これなら1回飲みに行くのを我慢すれば買える”と考え、最初に4900円という価格を設定しました」
こう話すのはメーカーズシャツ鎌倉の管理部シニアマネージャー、松井亜由子さん。東京・広尾にある株式会社サダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブ(メーカーズシャツ鎌倉の企画・管理会社)で話を伺った。
「アパレルは積み上げで価格が決まります。生地がいくらで工賃がいくらで、と加算して価格を設定するものなんですが、弊社では4900円という価格が最初にあり、たとえ原価ギリギリでもその値段で売ることになっています」
このシャツが一着5145円(税込み)(写真提供・メーカーズシャツ鎌倉)
毎週新しいデザインの商品が入荷する鎌倉シャツ。あまりに原価が高くつくとさすがに“失敗した”とボヤくこともあるそうだが、それでも価格は動かさない。
安さの理由の一つが流通過程が極端なまでにシンプルなこと。商品が工場から直接、宅配便を使って店舗に運ばれる。いわゆるSPA(speciality store retailer of private label apparel:製造小売り)であり、流通コストを極限まで削減したことが「一回飲みに行くことを我慢」すれば足りるほどに価格を抑えることができた秘密である。
さらに特徴的なのは商品と資金の回転が迅速なこと。ドレスシャツ(ワイシャツ)は国内生産(一部商品を除く)なので翌月の生産を調整できるという。
「いま作っているのが来週の商品だったりします」
そもそも“在庫をもたない”を鉄則にしているそうで、工場からの買い取りも手形でなく現金一括払いで徹底している。商社などの仲介もなく常に商品とお金が動いている。現金払いで安定的な受注が見込めるとあれば、取り引き相手にすればたしかに魅力的な、長くつきあいたいパートナーである。
日本人はファッション文化を知らない
創業はコンビニの2階、社員は自分と妻(現・民子社長)の計二人というささやかな船出だった。
民子社長(写真提供・メーカーズシャツ鎌倉)
すでに50歳を過ぎていた貞末会長は倒産企業をわたり歩いた経験から、「どうしたら会社がつぶれないかがわかった」としていくつかの基本方針も定めた。在庫を持たない、すべて現金で払うなどもそうだが、もう一つ“社内の風通しをよくする”にも気を配った。
松井さんによると鎌倉シャツには組織がない。会長が社員の部屋の隣に座っていて、社員が直接会長にメールを打てる仕組みである。中間管理職が下の意見をストップさせない構造になっているという。
こうした数々の努力もすべては貞末会長の“日本人をおしゃれにしたい”という悲願あってのことだ。松井さんの言葉を聞こう。
「日本人は本物のファッション文化を知りません。あるときアメリカで、日本の有名電機メーカーの方が、いわゆるつなぎの作業服で商談に現れたことがありました。欧米ではどれほど優秀な方でも、商談につなぎを着てくるような人は相手にされません」
貞末会長はヴァンヂャケットで営業部長だったが、石津謙介から「貞末君はぼくの夢をかなえてくれた」と言われたという。
貞末会長と石津謙介(写真提供・メーカーズシャツ鎌倉)
日本人の服飾文化を欧米レベルにまで引き上げることが、鎌倉シャツの使命のようである。