戸部で不思議な標語を掲げる「ヨコハマワープロセンター」って一体なに?
ココがキニナル!
西区の戸部通り沿いにワープロの専門店があります。中古店なのか?この店の謎を知りたいです。また横浜でワープロの知名度、実際に使ってる人とかどれくらい需要があるんでしょうか?(Zoo3さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
長年なれ親しんだワープロでないと駄目だ!という愛好者のための専門店で全国のユーザーから絶大な信頼を得ている。市内の聞き取りで実際の使用者はゼロ。
ライター:細野 誠治
さぁ、みんなに聞いてみよう
はまれぽ読者のみなさま、ワープロを使っていますか? もしくは過去、使用していましたか?(ひょっとしたら今でも?)
文字を“書く”から“打つ”へと「ものを書く」環境を劇的に変えたと言っていい存在のワープロ(ワードプロセッサーですね)。でも気づけば、いつの間にか「ものを書く環境」はパソコンの前での出来事になりまして・・・。
今でもワープロを使う方はいるのか? “なぜワープロなの? パソコンでは駄目なの?” 今回の、このキニナル。まずは横浜の街角で聞いてみよう。
聞き取りは“みなとみらい地区”で実施した
平日の昼、桜木町駅前で「ワープロを知っていますか? また、今も使っていますか?」とアンケートを実施(年齢は30代〜70代/20人に聞き取り)。
みなさんの答えは、すべて同じ。ワープロの認知は全員が「知っている」。しかし、現在も使っている方は「ゼロ」。30代の方の中には、存在は知っているが触ったことがないという人も・・・。
約1時間、聞き取りを行うが、(存在を)知らない、(現役で)使用中という方とは会えなかった。
それならばキニナルにあったお店は、一体どうなっているんだろう? 行ってみよう。
お店へ突撃してみよう
インタビューを行った桜木町駅から野毛の町を、ゆるゆると進み戸部通り沿いを歩くこと10分。お店はすぐに見つかった。
緑と白が基調のお店。「ワープロ修理」とある
こぢんまりとした印象の、どこか可愛らしいお店だ。
買い取りも行っている模様
標語のような・・・
意を決して、なかに入ると沢山のワープロが、ところ狭しと並べられていた。そして店内には陽気なハワイアンソングが流れる。
各メーカーごと、ざっと50台以上がビッシリ!
こちらが代表の田中照秋(てるあき)さん。御歳81歳
店主の田中さんに、はまれぽの説明をし、取材をお願いする筆者。
「いいですよ。お客さんのいない時であればいつでも。何でも聞いて下さい」
―ありがとうございますっ!
屋号はヨコハマワープロセンター。元はテレビの販売店をしていたものを3年前に現在のかたちにしたそうだ。業務は中古ワープロの販売・買い取り・修理だ。
メンテナンスを行う田中さん。作業は必ず外から見える窓際で
まず最初に、一番の疑問をぶつけてみる。
―ワープロの需要って今でも多いんですか?
この質問に田中さん、にっこりと微笑む。
「多いです。ウチは全国の電話帳に広告を出しているんですが、ワープロじゃなきゃ駄目だ、というお客さんがいるんです」
―やはり年配の方々ですか?
「えぇ。年配の方たちですね。70歳より上の方々です。よくいらっしゃるのが町内会の会長さんとか。会報を書かなくちゃいけないからとか。そうそう、市内の某大学教授の方も見えられますよ」
田中さんいわく、市場はすべてパソコンに駆逐されてしまったが、年配の方たちのなかにはパソコンへの移行ができなかった人もいるのだそう。
「歳を取ると、イチからパソコンを覚えることが難しいんですよ。それに(パソコンは)いろいろなことができるでしょう? ハードルが高いんですよ。でもワープロのできることは、ただひとつ。字を書くこと。ひとつ覚えればいいんですから」
―なるほど。慣れ親しんだ、使い勝手がいいものが安心できる、と。
「そうです、そうです。万が一、壊れてしまっても、みなさん同じものか同メーカー品を買いますよ」
全台、良好な状態
1978(昭和53)年に東芝が初めて日本語に対応したワープロの販売を開始。一時代を席巻したが、パソコン市場に飲まれ、新世紀を目前に控えた1999(平成11)年、すべてのメーカーが生産を止めてしまったという。
インクリボンなどの消耗品も入手可能
販売を止めてしまった製品は、もう新品を買うことができない。もしも壊れてしまったら中古品を買うか、直すしか手はないのだ。
田中さんは使われなくなったワープロを買い取り、「部品取り」という方法で壊れてしまった部品を交換し、修理を行っている。
まず修理箇所を特定し、見積もりを出してお客さんに見積りを提示(部品のない場合、買い取りまたは、同一メーカーのワープロを薦める)。故障箇所、メーカー、部品在庫の有無によって修理代金は異なる。
最も壊れやすい部品が「プリンター部分」(左)。 次いで記憶を司る「ヘッド」
「下取りが5000円、買い取りのみは1000~3000円。とにかく部品を集めなきゃならないからね」と田中さん。
自宅庭の物置2つ分のストックがあるそうだ。
大量の部品ストックたち
集められたワープロは田中さんの手によって蘇り、全国の愛好者の元へ旅立って行く。「大体、週に2~3台かな」と田中さん。
筆者の感覚では、それより、もっと多そうだ。取材中だけでも2人のお客さんが訪れていた。
磯子からやって来た男性。取材はNGとのこと