日本のウラ社会を支配してる!?吉野町市民プラザのトイレに貼られた「日本のアンダーグラウンド社」とある謎のシールの正体は?
ココがキニナル!
公共施設「吉野町市民プラザ」の4階男子トイレに、「日本のアンダーグラウンド社」と書かれた点検済みシールが貼ってあるんですが、いったい何の会社なんでしょう?(ryutafeijoadaさん)
はまれぽ調査結果!
日本のアンダーグラウンド社は1990年前後に活動、インディーズアーティストのカセットテープのレーベル。トイレのシールはレーベル販促用のもの
ライター:小方 サダオ
吉野町市民プラザに貼られた意味不明なシール
吉野町市民プラザ
投稿によると横浜市南区にある吉野町市民プラザのトイレに不可解なシールが貼られている、という。
吉野町市民プラザとは、1989(平成元)年に横浜市初の市民プラザとしてオープンした市民が利用できる文化施設だ。舞台のある多目的ホールや大小3つのスタジオやギャラリー等を貸していて、現在は公益財団法人横浜市芸術文化振興財団によって管理運営されている。
そこで吉野町市民プラザを訪れ、副館長の尾形さんに問題のトイレに案内していただいた。
4階の奥にある男子トイレ
男子トイレの奥にパネルがある
4階へ上り、男子トイレの入り口を入る。そして奥の壁面にあるパネルを見ると、たしかに横6cm縦4cm程度の小さなシールが貼られていた。
パネルに貼られた小さなシール
シールには「確認 日本のアンダーグラウンド社 平成二年度」と印刷されている。シールの左右は、何者かによってはがされそうになった痕跡がある。
「日本のアンダーグラウンド社」と印刷されたシール
一見すると、よくエレベーターなどでパネルに貼られている、定期点検の際の点検済みシールに見える。
しかし「日本のアンダーグラウンド社」という社名が気にかかる。
「日本アンダーグラウンド社」ならありそうだが、社名に「の」を入れるものは珍しいと言えよう。
またアンダーグラウンド(地下)という文字を社名に含めるのも、好印象を受けづらい名称と言え、特異なものだろう。
この本名とも偽名ともとれる社名のせいもあり、謎めいた雰囲気を感じさせるシールだ。
そこでこの会社の「“確認”したもの」に関する手がかりはないかとはまれぽをひいきにしてくれているという、尾形さんのご協力をいただき、まずはパネルを開けていただくことにした。
パネルを開けてみる
中には青、赤、緑、黒などのテープの巻かれた4~5本の太いパイプが通っていた。
大きなバルブ開閉用のハンドルが
パネルの中から上を覗くと、それぞれのパイプが5階へとつづいているのが見える。下の方はというと、パイプが3階につながっているのが分かる。
5階へとつづくパイプ
3階を抜けて2階へとつながるパイプ
バルブにつけられた「常時開」の札
札の裏には4階の便所用のバルブであることを示す記述が
もしこのシールが何かの確認を示したものだとしたら、青いテープの巻かれたパイプのバルブについてだろう。バルブには、表面に「常時開」裏面に「4F 男子便所 女子便所 身障者便所」と書かれている。ということは「このバルブが開いていることを日本のアンダーグラウンド社が平成二年度に確認した」という想像ができる。
つぎにほかにも館内にこのシールが貼られていないかを確かめるため、可能性がありそうな場所を、倉庫から屋上という、通常見られない場所にいたるまで案内していただいた。
屋上にある空調機材等
トイレの方を見ると、屋上に突起物のある何かの装置がある
秋祭りが有名なお三の宮・日枝神社も屋上から一望できる
すると館内で目にとまったのは、受水槽に貼られた点検シールだった。
機械室の中を通る、青いテープの貼られたパイプ
受水槽に貼られた検査済みシール
シールには「検査済み (社)日本海事検定協会 平成21年」と書かれ、一見先ほどのシールと似ている気がする。
(株)日本海事検定協会による検査済みシール
しかし実際に定期点検が行われている場所のシールを見て分かったのは、シールは大量に同じものをコピーして、検査年の数字の部分だけは、手書きかスタンプで表示する形になっていることだった。それは一緒に検査年まで印刷してしまうと、余った場合に使えなくなってしまうからだ。
先ほどのシールの「二年」という数字の部分まで社名などと同時にプリントすることはあまりないのではないだろうか? すると少量だけ、限定的に作られたものなのかもしれない。
やはり本物の点検シールである可能性は低い、そう思われたが“アンダーグラウンド”“確認”という記述から「地下関連の装置の確認」については、考えられることがある。
実は吉野町市民プラザは「吉野ポンプ場」という下水道関連の施設の地上部分を活用して作られた施設で、施設の地下には下水処理に重要なポンプが設置されているのだ。
吉野町市民プラザは吉野ポンプ場の地上部分を利用したものだ
1989(平成元)年に建てられた横浜市環境創造局吉野ポンプ場
吉野町市民プラザ内にある、ポンプ場の仕組みを示す模型
雨水管を通った雨水がポンプ場を通って海や川に流されるという
この水門を通って大岡川に雨水が流される
しかもちょうど問題のトイレの真下に1階はなく、地上には地下部分へとつながる巨大な蓋が設置されている重要な場所なのだ。例のパネル内のパイプが、この蓋に向けられていることを考えると「日本のアンダーグラウンド社がこの真下の地下にある装置と関連したパイプの確認を行ったのではないか?」との想像をさせた。
1階部分はなく、この上にトイレがある
天井には巨大な蓋を持ち上げるための取っ手がある
地下部分の入り口になる巨大な蓋
しかしトイレ内のパイプが何のためのものかと尾形さんに伺うと、空調または排水関係とのことだった。するとやはり“地下施設の装置の確認”の可能性は否定された。
本物の確認シールだったのか、偽物だったのか? 謎を残したまま、吉野町市民プラザをあとにした。
インターネットで「日本のアンダーグラウンド社」を検索してみる
その後インターネットで「日本のアンダーグラウンド社」と検索すると、吉野町市民プラザと同様に街中のさまざまな場所でシールを貼られていることが分かった。シールを見かけた人たちがブログなどを投稿し写真入りで話題にしている。
「中華屋が入る雑居ビルのエレベーター内」「渋谷の鉄板焼き屋の入居するビルのエレベーターの階数ボタンの上」「(浅草の)スーパードライホールの4階にあるトイレの扉」「某スタジオのトイレの手を乾かす送風機」などで発見されている。場所にあまり共通性はないが、記述されている年代は、4つ中3つが「平成二年度」で1つは「平成三年度」であった。
東京都内で発見されたシールの貼られた場所と吉野町市民プラザに共通点はあるのか?
さらにヤフーオークションで、「Ludwig II-どこかほかの場所へ」という、日本のアンダーグラウンド社によるカセットテープの入札の情報が出ていた。Twitterでも「日本のアンダーグラウンド社はインディーズアーティストのテープなの?」とつぶやかれていた。
これらの情報から、日本のアンダーグラウンド社とは音楽と関係している組織である可能性が増した。
吉野町市民プラザのスタジオ内のドラムセット
某スタジオでも発見されているように、吉野町市民プラザもコンサートや音楽スタジオを貸している施設だ。また活動期間はシールにあるように1990(平成2)、1991(平成3)年ごろだったのではないだろうか?
しかしインターネット上での決定的な情報は見つからないままでいた。