のどかな稲村ヶ崎の岸壁にポツンとある穴は戦時中に作られた「銃眼」って本当?
ココがキニナル!
鎌倉の稲村ガ崎の岩壁にある四角い穴がキニナル!どう見ても人工的ですが、やぐらにしては場所と形に違和感が…誰が何の為に、どうやって作ったのしょうか?そして中には一体何が?(さきちさん)
はまれぽ調査結果!
終戦直前に日本軍が作った穴。潜水し機雷を持って敵艦を沈める「伏龍(ふくりゅう)特攻隊」の陣地であり、四角い穴は銃眼で中は立ち入り禁止
ライター:細野 誠治
穴の空いた、離(わ)けの岬
江の島から東へ少し。相模湾に位置する岬・稲村ヶ崎。
ここを境にして湾岸を、由比ヶ浜と七里ヶ浜に分けているんです(知ってました?)。
今回のキニナルの舞台、稲村ヶ崎はそんな場所にあります。
歌のモチーフや映画の舞台として、観光や海水浴などで訪れたことがある人も多いかと。筆者自身、何度も足を運んだことがあります。
・・・でも、そんな穴あったっけ?
いただいたキニナル投稿に添付されていた写真を見ると確かに、ぽっかりと四角い穴が空いている・・・。これは一体なんだろう?
投稿に添付されていた写真。確かに穴が・・・
まずは実際にこの目で見てみよう、と最寄りである江ノ島電鉄線・稲村ヶ崎駅に。
鎌倉駅から5つめ、稲村ヶ崎駅
改札を出て左、海へと脚を向ける。5分とかからず相模湾にぶつかる。すぐに稲村ヶ崎に辿り着く。
すぐに海! 稲村ヶ崎だ
ズームで寄ると、確かに穴が!
「かながわの景勝50選」のひとつであり、太平記に記述された武将「新田義貞(よしさだ)徒渉(としょう)伝説の地」でもある。
(ちなみに稲村ヶ崎の名の由来は岬のかたちが、稲束が積み重なった様子“稲村”に似ているからだとか)
風光明媚な景勝地。奥に江の島。晴れていれば富士山も見える
新田義貞徒渉の地
では・・・と浜に降り立ち、岸壁沿いに穴へ向かう。
・・・が、立入り禁止となっていた(足元も滑り非常に危険)
ぎりぎりまで行ってズーム。確かに穴だ
間違いなく人の手によるものと推察される。潮の干満もあるが、人の背丈よりも確実に高い位置にある。確かに何だろう?
何か手がかりを探さねば・・・。公園内を散策してみる。
階段を登って展望テラスへ向かう途中、こちらにも“穴”らしきものを発見。
小高い岩山。すぐに頂に到着
崩落したのか? 穴だったと思われる場所には柵があった
今度は、側を走る国道沿いにぐるりと公園を一周。ここでも穴らしきものを発見。
コンクリートで塗り固められた絶壁
1ヶ所、穴らしきものが・・・
由比ヶ浜方面から見た様子。急峻な崖が続く
これらの2ヶ所、思うに防空壕のような・・・。とにかく聞き込みをしてみよう。
岩山に緑が成している稲村ヶ崎
1人目は公園の清掃をされていた60代男性(残念ながらお写真はNG)。
穴について聞いてみるが「そんなの、あるの?」とツレない回答。ほかの職員さんたちも同様に「知らない」とのこと。
ただ「防空壕じゃない? この辺りは防空壕がすごく、たくさんある」と教えていただいた。
(あんな崖の場所に防空壕? ハシゴを使って入ったのだろうか?)
ウオーキング途中だという地元の方に話を振るも、こちらも「知らない」と。
「生まれも育ちも稲村ヶ崎」というOさん。67歳
地元の方も知らない? 駅前に商店があった。ちょっと戻って聞いてみよう。
駅前のお店で聞くも「分からない」「防空壕じゃない?」との声
そこで稲村ヶ崎で古くからお店を営んでいる駅前の「今市」さんに話を聞くことに。
しかし具体的なものは分からなかった
駅前のお店に聞き込みをしても、知る人はいなかった。
ただ新しく聞けた情報として、グリーンマートの池田さんいわく「昔(60年くらい前)は、穴が丸かった」、今市さんの「昔は遠浅のキレイな海岸で、とてもにぎわった海水浴場だった」ことくらい。
そして皆さんが言うのは「市役所で聞いてみなさい」とのこと。
稲村ヶ崎の皆さんにお礼をして市役所に向かうことに。江ノ電に乗って鎌倉へGO。
神奈川の古都、鎌倉
駅から歩いて数分にある鎌倉市役所
向かったのは鎌倉市役所の都市整備部・公園課。
「稲村ヶ崎の岸壁の穴について」の質問をするが「分かりません」「穴に関する資料がありません」との回答。
ここでも手がかりが、まったく得られない(一体、どういうことなんだろう?)。
ここまで頭に「?」ばかりが浮かぶキニナル調査。だが都市整備部公園課の方が、すごく親切だった。ほかの課に掛け合ってもらったり「鎌倉の図書館に行ってみてください。何か分かるのではないでしょうか?」と道をつけていただいたりした。
ならば、と市役所すぐにある鎌倉市中央図書館へ。
手がかりはあるか? 図書館へ
館内に入り蔵書の検索機に「稲村ヶ崎」というキーワードを入力。
すると膨大な書籍や雑誌がヒットする。鎌倉幕府を顕した歴史書や旅行ガイドまでと大変な数。
どうしよう・・・。
しかし表示された書籍のなかに、一冊だけ入力したキーワードにそぐわない本があった。表題は『海軍伏龍(ふくりゅう)特攻隊』。
稲村ヶ崎で会った方々の言った「防空壕」という言葉が甦る。司書の方に頼んで閲覧をさせてもらう。
門奈鷹一郎著『海軍伏流特攻隊』
手に取ってページをめくる。すぐにキニナルの謎が解けた。ここまでの道筋が、導かれたもののような気までしてくる。
このことは伝えなければ駄目だ。