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横浜だけでなく横須賀にもある二つの「鴨居」は関係があるの?

ココがキニナル!

2つの石川町の記事面白かったです。緑区に「鴨居」という地域がありますが、横須賀市にもあります。この2ヶ所には何か関係はあるのでしょうか(はまっこさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

同じ由来を持つ可能性を感じさせる説が、いくつか残されていたものの、記録がないため、正確なことは分からなかった

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ライター:田中 大輔

距離の離れた場所に同じ地名。

これはままあることだが、よくよく考えてみると不思議だ。今のように通信や交通が発達していない時代に、縁もゆかりもない、遠く離れた場所に住んでいた人たちが、たまたま同じ地名を付けたということなのだから。今回の話題もそんな地名だ。

横浜市緑区の鴨居と、横須賀市にある鴨居。もしかしたら、ちょっと縁があったかも、と思わせる絶妙の距離にある二つの「鴨居」。何かつながりは見つけられるだろうか。



二つの「鴨居」



まず、それぞれの場所や歴史を簡単に紹介していこう。

横浜市緑区の「鴨居」は、JR横浜線の駅名にもなっているので耳にしたことがある人も多いだろう。鶴見川沿いに位置し、現在は鴨居町と鴨居1丁目~7丁目までの地域に付けられた町名だ。
 


JR鴨居駅。鶴見川は駅舎の向こう側にある
 

鴨居の名前が出てくる史料で最も古いのは、1559(永禄2)年に成立した『小田原衆所領役帳(おだわらしゅうしょりょうやくちょう)』だ。文化・文政期(1804~1830年)の『新編武蔵風土記稿(しんぺんむさしふどきこう)』には「鴨居村」として登場している。

一方の横須賀市鴨居。こちらは、黒船来航でおなじみの浦賀に近い場所。観音崎公園がある場所(公園の一部は隣町の走水)で、海に面した町だ。
 


日本初の洋式灯台として知られる観音埼灯台の所在地は「鴨居」
 

こっちの鴨居も、緑区鴨居と同じく『小田原衆所領役帳』でその地名が確認できる。

ただし、表記は「鴨井」となっている。もっと古い1373(応安6)年の史料では「鴨江(かもえ)」と記されているようだ。『新編相模國風土記稿』では、現在と同じ「鴨居」村として記録が残されている。

さて、片一方は内陸、もう片方は海辺にある二つの「鴨居」。

それぞれの地名の由来は、結論から言うとハッキリは分からない。明確な資料が残されていないからだ。そのためか、その由来についていくつかの説が飛び交っている。それらを比較して関連性を探ってみよう。



カモ様のいた場所?



『横浜の地名(初版)』では、横浜市緑区鴨居について、大正・昭和期の地理学者である松尾俊郎(まつお・としろう)氏の著書『日本の地名』から「神居(かむい)」が「鴨居」に変化した可能性についての記述を引用している。

神様の居る場所、すなわち、神社の所在地を表す地名なのではないか、というわけだ。
そして『横浜の町名』では「この説が正しいとすれば杉山神社か神明社のことだろう」としている。
 


今でも地元の人に大切にされている杉山神社
 

現在でも、横浜市緑区鴨居4丁目には杉山神社が鎮座している。
かつての鴨居村の鎮守だったこの神社は、1449(宝徳元)年の創建だそうだから、ひとまず史料との辻褄も合う。
 


お社の中にある一畳ほどもある大きな絵馬。「嘉永4(※編集部注:1851)年」の文字が
 

杉山神社の御祭神は日本武尊(現在は天照大神も祀られているが、御由緒に明治39(※編集部注:1906)年合記とあるため、今回の件とは無関係)なので、この説が正しければ“神様である日本武尊がおわす土地”ということで「神居」となり、「鴨居」に変化したということになる。

『横浜の町名』で引用された『日本の地名』には、実は面白いことが書かれている。

それは「鴨居」が神社の所在地を表す可能性に触れた場面で、例として“横須賀市鴨居-八幡神社”が挙げられているのだ。

つまり「横須賀の鴨居も同様に『神居』が変化した地名である」としているわけだ。
 


取材日には地元のイベントが開かれていた横須賀市の鴨居八幡神社
 

当地には、現在も八幡神社がある。こちらは横浜市緑区の杉山神社よりも歴史が古く、1181(養和元)年に鶴岡八幡宮を勧請して建てられたと伝えられる神社だ。
 


二つの鳥居の先は、すぐに海だ
 

この「神様が居る場所」=「鴨居」説が正しければ、二つの町名に直接のつながりはないものの、同じ由来を持つ地名ということができるようだ。