今や伝説となったあの名店で修業した店主が白楽で営業する行列店「くり山」のつけ麺の味は?
ココがキニナル!
六角橋のピーコックの裏手にある白いのれんに「つけめん」とだけ書かれたお店があります。よく行列ができていますが入る勇気がないので見てきてください。(ふんわりハミングさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
池袋の名店「大勝軒」で4年に渡って修行したのち白楽に開いた「くり山」は、濃厚で深い味わいはもちろん、栗山さんの優しい人柄が魅力である
ライター:永田 ミナミ
六角橋ふれあいのまちへ
街を歩いていて行列ができている店があると、どんな店なのだろう、そんなに美味しいのかなと気になってしまうものだが、だからといってその場で「よし、じゃあ並んでみよう」とサッと最後尾につけるだけの決断力と行動力を持ち合わせていてたまたま空腹の人、というのはそれほど多くはないかもしれない。
というわけで、ふれあいのまちへ繰り出した
そしてファミリー通り商店街へと右折して少し歩いていくと
ピーコックを過ぎた角を曲がったところに白い暖簾(のれん)が見えてくる
近づいてみると暖簾の左端に「つけめん」、そして白提灯に「つけめん」
店の看板を飾るらしい場所には以前の店の看板の跡のようなものが残るばかり。ベージュがかった白い外壁と白い暖簾と白い提灯と赤いベンチと赤い自動販売機。外連味(けれんみ)のないすっきりとした佇まいの店である。
場所はここ。東急東横線・白楽駅からは歩いて6分
ちなみに迫り来る台風5号は吹かす強い風によってはためく暖簾をよく見ると、右端にも端正な筆致(ひっち)で何か文字が書かれている。
店の名前「くり山」である
「くり山」に至るまで
さて午後3時になり、昼の営業が一段落したところで、店主の栗山さんに話をうかがうことに。
穏やかで気さくな栗山さん
千葉県で食堂を営む家に生まれた栗山さんは高校卒業後、ゆくゆくは実家の食堂を継ぐつもりで、和食店で修行をしていた。その時期に趣味としていろいろなラーメン店を食べ歩いているうちに、ラーメン、特につけ麺への思いが強くなり、両親に相談してみると背中を押してくれたこともあって、あの池袋の伝説店「大勝軒」で修行をはじめたという。
店内の壁には「大勝軒」の山岸一雄さんを描いた映画のポスターがあった
「大勝軒」では「必要なことは3ヶ月ですべて教える」ということになっていて、3ヶ月の修行を終えたあとは他店に移るなど独立していくのだが、マスターの山岸さんの人柄に惚れ込んだ栗山さんは4年間「大勝軒」で修行を続けたという。
修行時代の4年間のほとんどは、大勝軒近くの4畳半の寮で過ごした栗山さん
「大勝軒」で学んだものはと聞いてみると「仕込みなど味に関することはもちろん、お客様に対する姿勢」だという。
山岸さんの温かい人柄と、その人柄がそのまま表れたような居心地のいい店の雰囲気。常連客が全員、山岸さんを慕って「マスターごちそうさまでした」と声をかけて帰っていく「大勝軒」は、そのときから今日まで変わらず栗山さんの理想の店の姿だそうだ。
お土産用つけめんの箱には山岸さんの文字と言葉がある。実に達筆である
なるほど、暖簾の「くり山」の文字は山岸さんによるものだったのだ
その文字はスタッフTシャツの左袖にも。「家紋」はもちろん「栗」である
「大勝軒」で4年間修行を積んだ栗山さんは、最先端のつけめんも吸収しておきたいと考え、大崎の伝説の行列店「六厘舎(ろくりんしゃ)」でも3年ほど修行を積んだ。
そして2008(平成20)年、まだつけ麺文化があまり根づいていなかった横浜につけ麺を、と考えて現在の場所に、六厘舎のもとで店長として「仁鍛(じんたん)」を開店。「仁鍛」はその際に山岸さんにもらった「仁義を貫き己を鍛える」に由来する。そしてその後2011(平成23)年10月に六厘舎からの初の独立店として名前を変え「くり山」となり現在に至るとのこと。
かつての「仁鍛」時代のお土産つけめんの箱はこうだった
横浜には家系ラーメンという象徴的ジャンルがあるが「良いものを提供していればきっと受け入れられる」とスープの濃度などを調整し、より良いものを目指しながら営業を続けていくうちに、1年ほどたって神奈川大学を初めとした学生や近隣に住む人々に常連として通ってもらえるようになったそうだ。
火曜日のくり山は特別な日
さて「くり山」に至るまでをうかがったあとは、いよいよ実食であるが、この日は火曜日。上記のように「くり山」はつけめん店だが、火曜日の「くり山」は特別限定メニューを提供しているのであった。
その名も「煮干醤油蕎麦(700円)」
本来は定休日であった火曜日を、この「煮干醤油蕎麦」で独立する予定のスタッフのために「煮干醤油蕎麦」デーとして営業しているのである。このあたりの懐の深さも栗山さんの温かい人柄を感じさせる。
もちろんつけめんも食べたいが、この「煮干醤油蕎麦」も食べてみたい。ということで、ひとまず取り急ぎ火曜日の「くり山」にやってきたのだった。
店内を見せてもらいながら「煮干醤油蕎麦」の完成を待つ
客席は話をうかがった4席のテーブルと8席のカウンターの12席
こちらの製麺機は何と大勝軒にあったものを譲ってもらったものなのだそう
こちらは丁寧な説明が添えられ、表記もすっきりとしてわかりやすいメニュー
スープは「昼は中濃、夜は濃厚」と濃さを変えている。後日必ず食べに来よう
ちなみにこちらは実食後に見せていただいた「出てる感」溢れるスープ
そうこうしている間に煮干醤油蕎麦は盛りつけの段階に進んでいた