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横浜のキニナル情報が見つかる! はまれぽ.com

昭和の時代を彷彿とさせる横浜の「屋台のラーメン屋」はどこにある?

ココがキニナル!

横浜駅や戸塚駅東口には今も昭和時代を彷彿させるラーメン屋さんが夜な夜な屋台で出店してる。味の方も気になりますが、お店の歴史も気になります。取材して!(Shibaさん/yakisabazushiさん)

はまれぽ調査結果!

横浜駅西口の「来喜」は創業50年、戸塚東口の「八っちゃん」は創業27年。味のこだわりが強く、古き良き昭和の人情味がラーメンに凝縮されていた。

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ライター:山口 愛愛

横浜西口で50年。老舗屋台で舌鼓



ちどり足で歩く道すがら、絶妙に五感を刺激してくる、赤ちょうちん、たちこめる湯気、スープの香り。構えて店の扉を開けることなんてない。すーっと屋台に吸い込まれ、店主の顔に安堵する。星空の下、ちょっと暑い、ちょっと寒いもあるだろう。見知らぬ人と肩を並べてフウフウしながら麺をすする。
 


魅惑の深夜の屋台ラーメンを求めて


子どもたちが眠りにつくころに始まる、粋で贅沢な空間。そんな古き良き昭和文化の欠片(かけら)が横浜にも残っていた。

キニナル投稿で情報をもらった、横浜駅西口とJR戸塚駅東口に足を運び、至極の一杯を平らげようではないか。

編集部・小島とともに、まずは横浜駅西口へ。
夕刻になると若者でにぎわう通りに、今となっては珍しいリヤカー式の屋台が姿を現した。
 


横浜モアーズの横の通りに屋台を発見
 

来店して喜んでもらえるようにと来喜


まずは、オーナーの川崎さんにお話を伺うことに。

小島が「お店の名前、来喜(らいき)さんですよね。僕も頼輝(らいき)というんですよ。よろしくお願いします」と挨拶すると「そうなんですね、珍しい! 来てくださってありがとうございます。これはご縁を感じるわぁ」と、川崎さんの笑顔がはじける。
 


親近感のわく川崎さん(右)のキャラクターに話が弾む


「屋台形式の店はキッチンカーが主流だと思うんですが、リヤカーとは貴重ですよね?」と聞いてみると「保健所の指示もあり2015年の7月上旬ころから、車型に変わるんですよ」と川崎さん。どうやらリヤカー式屋台の見納め、食べ収めの取材となりそうだ。
 


系列店の五番街にあるもう1店舗はひと足先に車形式で販売


では、店の歴史を川崎さんから伺おう。
屋台ラーメン来喜は東京オリンピックよりも前の1960(昭和35)年に創業。元々は競輪選手だったという川崎さんのお父さんが知り合いから屋台を引き継ぎ、50年も前からこの場所で店を始めた。川崎さんは中学生のころから店を手伝い、お父さんが亡くなった今も従業員とともに店を続けている。

ふだんは自宅でネイルサロンを開き、ご自身は金曜日に屋台を引く。屋台は従業員に任せているが、繁忙期などには自身も店に立っているという。
 


店を切り盛りしている新藤(しんどう)さん


「とにかく屋台の雰囲気やお客さんが好きで、フラっと寄れてお客さんとの距離感が近いでしょう。お客さんの反応も良く、よく話かけてくれますね。変わったお客さんも来ますけどね」と川崎さん。
 


テレビ番組で紹介されたことも


数年前には相鉄線沿線で路面のラーメン店を開業した川崎さん。しかし、商品や丼、内装にまでコストをかけたが集客に苦戦し、お客さんの反応も少なかったことから、1年足らずで店を畳んでしまったそうだ。

「屋台のお客さんは『初めて食べるスープの味でうまい!』とか『最近こんなことがあって』、なんていろいろ話してくれますが、ラーメン店のお客さんは、美味しいのか、美味しくないのかリアクションもなく、なんだかつまらなくて辞めちゃったのよね」と笑う。
 


準備中でもお客さんに対応


「屋台だと、気持ちが開放的なのか、寝ちゃってまったく起きないお客さんとか、酔っ払って丼に噛り付いて、丼を食べちゃってるお客さんもいて・・・あれが一番驚いたかなぁ」と振り返る。「困ったお客さんも多いんですけどね」と話しながらも、川崎さんは楽しそうだ。

しかし、通常のラーメン店の営業と違い、屋台ながらの苦労も多い。
「近くに駐車場を借り、営業時間(午後7時~午前1時)だけ屋台を出しているんです。新たな店が路上に出すのは許可が下りないようですが、ここで1960(昭和35)年から営業をしているので、生活権(社会的、文化的、経済的に一定水準の生活をする権利)があり、営業許可証も食品衛生法の許可証もちゃんとあるんです。それでも嫌がらせをされてしまうこともあったんですよね」と声を落とす。
 


ハマっ子に愛され50年


屋台を壊されたり、放火されたりと「嫌がらせ」では済まない、法に触れるようなことを幾度もされたこともあったそうだ。ときには「違法営業」と通報され、警察に突如立ち退きを命じられたこともある。

「まわりにいるお客さんや近隣の方など、たくさんの方が『営業する権利があるでしょう!』と言ってくれて、助けられました」と語る。

以前は近隣の飲食店の協力のもと、コードをつないで電気を引いていたが、嫌がらせや酔っ払いの小便などでショートしたことがあり、店に迷惑をかけないよう、今では発電機を使っていると話す。

「いつもまわりの人やお客さんが助けてくれて『屋台がなくなったら困るからがんばれよ!』って言ってくれるんです」と川崎さん。
 


屋台にはプロパンガスと水140リットルを常備


それでは実食! 醤油ラーメン(600円)と胡麻ラーメン(700円)を注文し、いただく。
 


何種ものゴマをブレンドし、香油も使ったスープが自慢
 

西区にある「永利(えいり)の中華麺」をよくほぐす
 

細麺なので5分程度で茹で上がる
 

チャーシューやカイワレなどをトッピング
 

胡麻ラーメン完成!


スープを口に運ぶと、ふわりとゴマの香りが立つ。白ゴマベースのクリーミーな味わいはコク豊か。けれど、さらっとしていて、後を引くので止まらない。オリジナル性が際立つ。

「実はうちの兄が、自由が丘で『いちばんや』というラーメン店をやっていたんですよ。今はほかの人に譲ったのですが、当時、ゴマラーメンが有名雑誌の中でも金賞に取り上げられて人気だったんです。そのときのレシピをさらにアレンジした自信作なんですよ」
 


ゴマの洪水スープは後を引く
 

細麺と相性ヨシ


「いちばんやでは、化学調味料を使っていなかったのですが、ここでもほとんど使わず自然に近い味わいなんです」と付け加える。コクがあるのにさらっといただける秘密が分かった。きっと胃もたれもしないだろうと思い、スープを流し込む。
 


続いて醤油ラーメン


鶏ガラと野菜をベースにした出汁の旨みが醤油で生かされている、透明感のあるさっぱりスープ。コッテリ系が主流の横浜界わいでは、飲んだ帰りにすするのにはちょうど良いかもしれない。
 


なめらかな麺の食感
 

さっぱりしていて飲んだ後にも良さそう


「美味しかったです。ごちそうさまでした!」と声をかけると「お客さんにそういってもらえるのが一番のご褒美。たくさんのお客さんはさばけないし、雨風で営業できないことも多いけど、やっぱり屋台が好きなのよねぇ。横浜で屋台を残していきたいから、がんばります。また来てね」と川崎さん。
 


屋台で口にするラーメンはひと味違う


7月初旬ころからはここでもこのようなスタイルで営業する。
 


車型になるが屋台の趣はそのままに
 

五番街では「黒ちゃん」が待っています