洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」野毛「グリル・ラクレット」編
ココがキニナル!
横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第8回は、あの店の味を広めたハンバーグを作る野毛「グリル・ラクレット」初代コック中村照吉(なかむら・てるよし)さん
ライター:クドー・シュンサク
「コックになるのが夢だったんですよ・・・・・・それからもずっとね、夢をもってやってきました。やっぱり、夢をもって働くのはいいことですよ」
洋食の町、横浜。変わらない、穏やかで、それぞれの確かな思い出がつまった横浜の洋食の味。
そして、その文化。
美味しい、嬉しい、いつもそばにある洋食を支え続けるコックさん。
横浜が日本に、世界に誇る「横浜の洋食」を作るコックさんを、横浜の国宝としてその1日に密着し特集する「横浜コック宝」。
今回のコック宝はこの方
今年最後、8人目の選出となる今回は、野毛の、横浜の至宝「グリル・ラクレット」初代コック中村照吉(なかむら・てるよし)さん。
2016年の夏には引退をすると決めている御年71歳のコックが作り上げる独自のレシピによる洋食の味。そしてハマッ子には馴染みの深い、あの店の味を広めた張本人であるコック宝、中村照吉さんの回です。
それでは。
始めたいと思います
50年以上の時間とそのコック姿
今回のコック宝、中村さんは2015(平成27)年の夏に一度は引退を考えていた。
現在は後継者が見つかり、その指導のために厨房に立ち、グリル・ラクレットの味とコックの仕事を言葉とその姿で教えている。
野毛の音楽通り
この看板が目印
ハンバーグやシチュー、ポークソテーに日替わりのランチメニューが評判のグリル・ラクレット。午前9時前、グリル・ラクレットの1日が始まる。
この時点でまだ、コック宝の姿は見えない。
オープンキッチンの厨房内
午前9時前、開店の2時間以上前から慌ただしく仕込みが始まる。
スタッフの方々に話を伺うと、コック宝は開店直前に来るという。仕込みと開店準備はグリル・ラクレット後継者のコックさんとスタッフの方々が担当。
タマネギを刻む軽快な音と
グツグツと煮えるソース類の音
開店前の静かな洋食店に仕込みの音が響く
静かに、静かに、各種仕込みが続く。
ゆっくりと、店内には火の入り始めたソースのいい香りが漂う。
約2時間の仕込みが終わり
間もなく午前11時の開店時間となり
店に現れた
今回のコック宝、あらためてご紹介。
中村照吉さん71歳
コック歴53年。18歳からコックの道へ。野毛に自身のお店「グリル・ラクレット」を開店したのは今から17年前、54歳の時。コック宝は小さな声で「私なんかでいいんですか本当に」と話し「よろしくお願いします」と小さく笑顔で挨拶をくれた。
それからコック宝は
なめらかに
目を見張るような手つきで
仕込みの仕上げにかかる
フライパンをあおる手つき、ミルでコショウをふる手つき、ソースを混ぜるその手つきすべてが、鮮やかでいてなめらか。御年71歳とは思えないその華麗な動きは本物の迫力を感じさせてくれる。
午前11時をまわり、概ね準備を終えたところで
お客さんが一気に来店
とたんに活気づく店内。
コック宝は
その熟練の手つきで
いくつものメニューを
仕上げていく
コックさんのその手さばきには、いつも感銘を受けるものだが、今回のコック宝である御年71歳の中村さんのそれは、ひとつ違う次元の素早さと鮮やかさを感じた。
どこまでも端正な料理さばき
奥深い何かが伝わってくる
インタビューの前から、そのコック然とした料理さばきと佇まいに感服。
今さらながら、その生きざまと積み重ねてきた時間とその結晶。本物とはそういうことで、それが本物だと強く感じた。
その何かに
迫ります
コック宝の夢
盛況のランチタイム
注文をさばく合間にもコック宝は
仕込みや後継者への指導と目配せ、お客さんとの和やかな会話、休む間もなく時間が過ぎていく。
時刻が午後3時になるころ
ランチの営業が終了
リラックスした表情でソースの具合をみるコック宝
コック宝、休憩時間は私用で外出するのでとのこと。お話に30分ほどの時間をいただいた。