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ベイスターズ・ラミレス監督の通訳とは? 丸山剛史さんの仕事に迫る!

ベイスターズ・ラミレス監督の通訳とは? 丸山剛史さんの仕事に迫る!

ココがキニナル!

横浜DeNAベイスターズのラミレス監督の通訳を担当する丸山剛史さんの仕事とは?チームを陰で支える裏方さんの仕事がキニナル(はまれぽ編集部のキニナル)

はまれぽ調査結果!

ラミレス監督の通訳を担当している丸山剛史さんは、日頃から英語漬けの生活を送り、監督の言葉を一語一句しっかり表現することを心がけ、信頼を得るための努力を重ねていた

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ライター:山口 愛愛

「自分はただの通訳。試合に勝っても負けても関係ない」。
一見、チーム愛のない冷淡な言葉に聞こえるが、それは「私論は捨て、プロの通訳に徹する」という信念を持ち、自分への戒めとして拠り所にしている思いであった――。

これまで、横浜DeNAベイスターズの裏方にスポットを当て、打撃投手の吉見祐治(よしみ・ゆうじ)さんやブルペン捕手の深澤季生(ふかざわ・としお)さんなどを紹介してきたが、今回はアレックス・ラミレス監督の担当通訳をしている丸山剛史(まるやま・つよし)さんの仕事に迫る。

 

1976(昭和51)年生まれ、現42才の丸山剛史さん
 

どんなときでも試合前後の取材対応を欠かさないラミレス監督。いつも、その横には丸山さんの姿があり、声がある。毎試合、目にする顔だ。
「自分はいち通訳」と裏方に徹している丸山さんが、これまでメディアで自身のことを語ることはほぼない。しかし、今回は、超多忙な春季キャンプの合間を縫って、仕事に対する志やラミレス監督への熱い思いを語ってくれた。ほんの束の間、丸山さんの素顔が垣間見えた。



ハマっ子がスキルアップし地元に帰ってきた



「子どもの頃は野球少年だったんですよ。地元横浜でこんな仕事ができるなんて嬉しかったですね」。
2016(平成28)年に一般応募で面接を受け、晴れて横浜DeNAベイスターズのスタッフとなった丸山さん。実は、横浜市生まれのバリバリのハマっ子だ。

「はまれぽも見ていますよ! 相鉄線のJRへの乗り入れの記事など、駅がどう発展していくのか地元の人に話を聞いたりしていて、そういうネタがけっこう好きです(笑)」

というのも、丸山さんは相鉄線沿線に住んでいたことがあり、高校まで横浜市内の学校に通学していたので、地元ネタに共感できる部分が多いのだという。

 

相鉄線ユーザーだったので、路線の拡大がキニナル
 

子どもの頃は、横浜大洋ホエールズ友の会(チケット割引制度のあるファンクラブ)に入り、ハマスタの外野に足を運んでいた野球少年だった丸山さんは「僕の時代ですと、高木豊(たかぎ・ゆたか)さんやカルロス・ポンセさんがスターです」と笑う。

 

「スーパーカートリオ」で知られる高木さんは2017年11月のレジェンドマッチに出場した
 

子どもの頃に通っていたハマスタが職場になるまでには、丸山さんは意外な経験を積んでいる。
学生時代にアメリカへ留学したことをきっかけにそのまま10年間在住し、帰国後は、株式会社ユニクロで総務の職に就いた。社員が多国籍に渡るユニクロでは外国人のデザイナーなどが在籍し、英語が堪能な丸山さんが通訳をすることが自然に増えていったという。
そんな状況の頃に、ラグビーのトップリーグであるキヤノンが即戦力の通訳を探していると知人から情報を得て、スキルを生かすために転職に踏み切った。

「ラグビーは外国人選手が10人くらいいて、コーチやトレーナーもだいたい外国人なんです。なので、監督やコーチの指示を選手に伝える役目が大きいんですよね。監督の指示を選手に伝える点では今のスタイルと一緒ですね」と話し、キヤノンで現在の仕事の礎が築かれていく。
貴重な経験を積み上げているときに、横浜DeNAベイスターズが通訳を募集しているということを知り、さらなるステップアップを目指し転職をしたという。

 

一般募集での中途採用で横浜DeNAベイスターズに入社
 

「おぉ、横浜でこんな仕事ができるんだと思いましたね。
ふつうの通訳ならテレビに映ることはほとんどないですけど、僕の場合は映るので。野球が大好きな両親に、地元のチームで仕事をしている姿を見せられるのはよかったかなと。両親も喜んでくれているので、苦労をかけた分、少しは親孝行できているのかなと思います」と語る。

そんな丸山さんだが、仕事内容はテレビに映る華やかなものばかりではなかった。
球場やテレビ放送で目にする姿から、仕事の想像がつくかもしれないが、取材陣やファンの前に立っている時間は業務のほんの一部に過ぎない。

 

テレビに映る派手な仕事だけではない
 

ハマスタでの試合なら、ラミレス監督が球場に到着する午後1時より先に入り、監督を待ち、その動きに合わせて行動する。

まず、相手チームの対策などを練る、コーチやデータ分析のアナリストらとのミーティングで監督の通訳をする。
そして、コーチ全体のミーティングに同席して通訳。その後も監督からの考えを各コーチに伝えてまわっていく。
それらの仕事がひと段落してから、ベンチで、筆者らが待ち構えている報道陣の“囲み取材”の対応を行う。

選手のバッティング練習が始まっているので、取材対応が終わり次第、監督の指示やアドバイスを選手に伝えに行く。
もちろん、試合中も常に監督に寄り添い、コーチや選手に指示を明確に伝え、試合後の監督インタビューなどの通訳をするのも仕事だ。

 

三浦大輔(みうら・だいすけ)投手コーチに監督の指示を伝える
 

ラミレス監督といえば、データ主義で知られる知将だ。
丸山さんが訳すときに主にメモを取るのは、細かい数字だという。
たしかに取材中もラミレス監督の口から、選手の過去の対戦打率や防御率、球速など、たくさんの引き出しから次々と数字が飛び出してくる。ラミレス監督の頭に入っている膨大なデータには、丸山さんも舌を巻くそうだ。
「監督は、下準備で10枚以上の資料に目を通しているんです。
試合中に、この選手はこうなるだろう、と言うのがかなり当たるんですよ。それは本当にすごい。監督自身は『8割データで、2割がフィーリング』といっていますが、データをすごく大事にして意識されていますね。勘でいっているのではなく、数字の裏付けでこういう結果になると頭の中で細かい計算をしているのがわかって、驚きます」。

 

キャンプ中は長々と伊藤光(いとう・ひかる)捕手と話し合っていた
 

そんなラミレス監督の言葉をいつでも瞬時に訳せるよう、丸山さんはヒアリングも重要視している。
「特別なことをしているわけではないですけど、家で見るテレビ番組は日本語のものを避け、野球だけではなく、海外ドラマやCNNのニュースなども見るようにしています。音楽も洋楽を聴き、常に英語を耳にしています」と、勘が鈍らないよう、英語漬けの毎日を送っていた。

訳すときに、うまい言葉が見つからないこともありそうだが・・・
「英語は直訳することができないものもありますけど、イディオム(2つ以上の単語が結びついて別の意味をもつ言葉)があって、例えば『ラップ アップ ザ デイ』を直訳すると、『その日を包み込む』になりますが、『その日を終わりにしましょう』と、そういう風に変換できます。通訳は、日本語にない表現でも上手く訳すのが仕事。
余計な解釈をつけず、監督が言ったことをそのまま言うように、監督の感情にあった相応しい言葉での通訳に徹しています」という。

 

「トゥモロー イズ アナザーデイ」も、端的に「明日は明日」と訳すことが多いという
 

通訳者によっては、怒りや笑いがこもった言葉でも、テンションを変えずに淡々と訳すタイプの人もいるが、丸山さんは感情まで伝わるように、監督がきつい口調で喝を入れれば、その通りに言い、笑っていえば、笑いながら伝えている。
「僕の通訳の考え方としては私論はいらない。監督に“なりきる”ことが大事なんです。監督のテンションに合わせて口調も変えています」。