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横浜にある昔ながらの立ち飲み「角打ち店」のある場所を教えて! 番外編

ココがキニナル!

横浜にある昔ながらの角打ち店が気になります。安善のほてい屋酒店、横浜橋近くの浅見本店などが有名ですが、他にどんなお店があるのでしょうか。(ときさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

杉田にある古き良き味わいの「愛知屋酒店」と、伊勢佐木長者町にある新機軸の「たむらワイン店」を紹介。お酒を通じたお店とのコミュニケーションが味わいを生む。

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ライター:ほしば あずみ

「角打ち(かくうち)」とは、酒販店に立ち飲みコーナーが併設され、買ったお酒をその場で飲むことができる営業形態。簡単なおつまみも売っているがあくまで飲食店ではなく、支払いは原則キャッシュオンデリバリー(商品を購入し、つど支払う)形式であることが多い。

これまで、中村橋周辺や鶴見周辺の昔ながらの酒店をめぐってきたが、今回は新旧、和と洋を飲みくらべる角打ちめぐりにしてみたい。
まずは、1940(昭和15)年から続く杉田の「愛知屋酒店」。




魅惑のショーケースと銘酒でくつろぎのひととき
 


いかにも角打ちできそうな酒店の店構え


JR「新杉田」駅と京急「杉田」駅をつなぐ新杉田商店街「ぷろむなーど杉田」からのアプローチだと、書店の「静樹堂」左わきの小道を進んだつきあたりに店がある。
訪ねたのは休日の午後3時をまわったところ。店内にはすでに良い感じにほころんだ雰囲気をまとわせる常連客の姿があった。
 


おくつろぎ中のみなさん
 

店主は小林彰一さん


小林さんの祖父がこの地で1940(昭和15)年に酒屋を開業し、現在は3代目だという。屋号は、伊勢佐木町にあった「愛知屋」からのれん分けしたのが由来とのこと。開業当時から、店で立ち飲みする営業形態があったらしい。
 


カウンターの中には焼酎や日本酒などの瓶が並び
 

商品棚には缶詰類やワンカップ酒
 

駄菓子類もちゃんとある
 

さらに店の一角には圧倒的な存在感のショーケース


ショーケース内の酒肴(しゅこう)は南部市場で仕入れた業務用のものをパックに小分けにしている。
「今日は市場が休みだったから品数が少ないですが」と小林さんは言うものの、目移りして決められないほどさまざまな「アテ」が並ぶ。
 


漬物類や練り物、山海の珍味が110円より


ジュエリーショップのショーケースを覗き込むカップルよりもテンション高くかつ真剣に、編集部・山岸と吟味し、松前漬け(180円)、うめくらげ(180円)、イナゴの甘露煮(180円)をチョイス。お酒は一ノ蔵の本醸造(300円)を選んだ。なお、生ビールは380円で通年注文できる。
 


「(イナゴを見て)あきらかに脚だなあ」と山岸氏が呟いたのが印象的だった
 

下に小皿や枡はない絶妙の表面張力で注がれ、最初の一口を迎えにいく
 

うめくらげ。くらげのコリコリと梅の酸味がクセになる


常連客のみなさんから「仕事で飲めるなんていいねえ」と声がかかる。勤労は国民の義務である。
ふとカウンターの奥に並ぶ酒瓶の上に掲げられた賞状が目に入った。
 


なんと、小林さんは自販機荒らしの犯人を捕まえたことがあるそう


「若かったからできたんですよ」(事件は1994<平成6>年)と小林さんは笑うが、若くてもできるかどうかは別だ。感心していると、
「犯人ってこの人だからね」「まあね。って違うから」と客同士の掛け合いがはじまる。
 


犯人扱いされたのは常連客の「馬場ちゃん」(写真右)


馬場ちゃんは言う。
「この店の良さっていうのは、落ち着いて飲めるっていうことだよね。来れば仲間もいるし、おおらかな気分になって、心が休まる」
通いはじめて25年くらい経つそうだ。自分の家のように愛知屋酒店を知り尽くしている。
 


「にぎわう時はこっちのテーブルまでいっぱいになる」と教えてくれた
 

業務用冷蔵庫もテーブルになる


「ガラスの天板を割らないようにトレイを使うんだよ。みんな分かってるから。分からなければ誰か教えてくれるしね」と馬場ちゃん。

愛知屋の営業時間は午前9時30分から、本来は午後8時までだが最後のお客が帰るまで。定休日は日曜、祝日。以前は夜勤明けの人が朝から飲むこともあったそうだが、最近は早い人で午後2時くらいから、ほとんどは午後4時以降がにぎわうという。

たまに例外もあり、取材日は開店時間が午後3時だった。その理由は小林さんが趣味の山登りに泊まりがけで出かけ、今朝下山してきたからだ。
 


奥様も写る山の写真を見せてもらった


「金峰山(きんぷさん)に行ってきたんです」と小林さん。長野と山梨の県境にある標高2599メートルの山だ。登山に出かけ、戻ってきたその足で店に立つ。自動販売機荒らしが捕まった理由がわかる気がした。
 


なんて話を聞きながら、玉乃光の純米吟醸(350円)をいただく
 

松前漬け。カズノコの大きさが嬉しい。なんだかめでたい気分になる
 

さらに筆者故郷の味、賀茂鶴(300円)。おかあさん・・・
 

イナゴ。甘じょっぱさが絶妙で箸がすすむ


常連のみなさんは焼酎をトマトジュースやお茶でおのおの割って楽しみ、新たに顔見知りのお客が入ってくると、軽口をたたきあう。かと思うと、おつまみをおすそ分けしてくれる。地域の社交場のなごやかな空気に、時間が経つのも忘れてしまう。
 


近所に1軒、こんなお店があれば素晴らしい


幸せな時間を共有させてもらった愛知屋をあとにして、次なる店はちょっとした新機軸。