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かつて採石されていた鎌倉石って、どんな石?

ココがキニナル!

鎌倉周辺では昭和初期まで鎌倉石という石材が採石されていたそうです。どんな石なのか取材してください。キニナル。(にゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

水生砂岩の一種で、その希少性から別名「石材のダイヤモンド」とも。比較的柔らかいので、加工がしやすい反面、すり減りやすいという欠点があります。

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ライター:河野 哲弥

石のことは石屋に聞け



今回の投稿にあった鎌倉石。
インターネットで調べてみると、「水生砂岩の一種」という説明が多いようだが、いまひとつイメージがつかみにくい。ここは、地質学的なアプローチを避け、実際に石材を扱っている会社に、より具体的な話をうかがってみたい。

 

江戸時代から続く石材加工業、「石長」本社外観


そこで、慶長9(1604)年創業以来、約400年に渡り石材加工に携わってきた株式会社石長(鎌倉市小町)に連絡してみたところ、取材を受けてくださるという。鎌倉石とはいったいどんな石なのか、詳しくお話を聞いてみることにしよう。



現在では採石されていない、貴重な石材



取材に応じてくださったのは、同社植村さんと、佐野さん。まずは「水生砂岩」とは何なのかから、教えていただいた。
佐野さんによれば、「水生」とは、湖底や海底に沈んだ堆積物によってできた岩石のことを指すらしい。このうち、堆積物の直径が0.06から2ミリメートルのものを「砂岩」と呼び、それ以下のものは「泥岩」、それ以上は「れき岩」に分類されるとのこと。鎌倉石は、この「砂岩」の一種になるようだ。
 


さまざまな石材サンプルが並ぶ、本社1Fの様子


さて、問題の鎌倉石だが、かつては鎌倉を中心に逗子市や藤沢市の一部で採石されていたものの、現在では禁止になっているそうだ。理由としては、鎌倉の山の景観保護などが挙げられるという。このため、その希少性から「石材のダイヤモンド」と呼ばれているのだとか。
そこで、現在でニーズがあるときには、採石が許されている石材のうち最も近い性質の白河石などで代用することが多いそうだ。
 


福島産の白河石サンプル、所々欠けているのが分かる


この白河石と同じように、鎌倉石も、コインなどを使えば容易に削ることができるぐらいの硬さなのだとか。それだけに加工のしやすさが特徴で、その反面、摩耗など経年劣化のスピードも早いらしい。
また、堆積物の粗さもあり、水を吸いやすい性質を持っているとのこと。このため、鎌倉石で石塔などを造ると、その上にコケが生えやすいのだという。鎌倉には禅宗の寺が多いため、「ワビ・サビ」の世界観とマッチした鎌倉石の特性が、昔から好まれていたのではないかと、佐野さんは話していた。

鎌倉石の特徴が分かったところで、実際に使われている寺院の様子も見てみたい。そこで、鎌倉石を使用した石段で有名な、臨済宗淨智寺(じょうちじ・鎌倉市山ノ内)を訪ねてみた。



約100年で今の姿に、驚くべき風化の実態



対応頂いたのは、同寺の朝比奈住職。
まずは、境内を案内していただいた。
 


全体にすり減り、丸みを帯びた参道の石段
 

鎌倉石を用いた石橋の姿 (現在通行禁止)


住職によれば、この石段は関東大震災で崩れたのをきっかけに、修復したのだそうだ。ということは、たった100年間余りで、ここまで摩耗したことになる。「鎌倉石を使うと風化が早く、古寺の雰囲気になじむのが早かった」と住職は言う。
一方、石橋のような構造物は、壊れてしまうと参拝客に危険が及ぶので、15年ほど前から通行禁止としているそうだ。