金沢動物園で発見された外来生物「アギトアリ」って?
ココがキニナル!
金沢動物園で発見された「アギトアリ」は私たちの生活に支障が出る? また横浜近辺に何種類ほどのアリが生息しているの?(sakuragichoさん/masa-hさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
発見されたアギトアリは調査中。直接人に危害を加える可能性は低く、横浜周辺で身近にみられるアリの種類はおよそ50種、珍しいものも含めると100種ほど
ライター:ほしば あずみ
謎のアリ発見
「アギトアリ」という聞き慣れない名前のアリ。
「アギト」とは顎(あご)を意味し、名のとおり大きなアゴが特徴的で、体長は10~13mmと、一般的なアリが5mm程度なので比較すると大きい。生息域は東アジア南部から東南アジア、中国など熱帯・亜熱帯地域から温帯地域の一部まで分布し、日本では屋久島、種子島、口永良部(くちのえらぶ)島と鹿児島県本土に局所的に生息する事が知られていた。
そんな、本来横浜には生息していないはずのアギトアリが確認されたのは2012(平成24)年7月の事。発見場所は横浜市立金沢動物園のある横浜市金沢自然公園(横浜市金沢区釜利谷東)だ。
発見されたアギトアリ(提供:横浜市立金沢動物園)
本来生息していなかった外来種の虫といえば、近年では毒グモの一種「セアカゴケグモ」や人家に侵入する「アルゼンチンアリ」などが記憶に新しい。
はたしてアギトアリとはどんなアリなのか?
現在どんな状態にあるのか、発見場所である横浜市金沢自然公園で話を伺ってきた。
金沢自然公園入口。京急「金沢文庫」駅からバスで10分ほど
アギトアリに会いに
横浜市金沢自然公園は世界の希少草食動物に会える金沢動物園(有料)と、動物園や周辺緑地の自然環境に関する情報センター「ののはな館」や100メートルのローラー滑り台、バーベキュー広場がある植物区(無料)に分かれており、今回アギトアリが確認されたのは「植物区」の方だ。
植物区は13.6haの広さ(金沢動物園公式サイトより)
お話を伺ったのは、園内でアギトアリを見つけた動物園職員の先﨑さん。
飼育展示係の先﨑さん(左)と広報の高橋さん
発見の経緯は、2009(平成21)年までさかのぼるのだそう。
「きっかけは羽アリだったんです。夜、外灯に集まってくる羽アリの中に見慣れないアリが混じっている事に気付いて、これはどうも在来(もともといた)種ではないなと思いました。普通に地面を這っている状態だったら、目立たないですし気付かなかったかもしれません」と語る先﨑さん。
羽アリが発生していることから、巣があるはずだと付近を探しまわったという。南方系の種類だろうと見当は付いていたそうで、当初は建物の隙間やボイラーのまわりなど、温かい場所を調べてみたが発見には至らず。ただ、毎年発生しているので繁殖していると思ったそうだ。
「やみくもに探していたら、園内も広いですし決して見つからなかったでしょう。でも捕えたアリを飼育して観察したりするうちに、性質がつかめてきて、このアリはどうも人家のまわりよりも湿った森林や林縁部などを好むんじゃないかと見当がついてきました」
とはいえ広い園内。巣の発見は、羽アリを見かけてから3年後の2012(平成24)年7月となった。専門家との共同調査でこのアリがアギトアリである事も判明。
ちょうどその頃、岡山県や大阪府など西日本での発見例も立て続けに報告されていた。
2012年9月には動物園のニュースでも発表された(クリックで拡大)