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『横浜今富嶽三十六景・其の四』

ココがキニナル!

いわゆる高低差の魅力溢れる横浜では、ふと景色がひらけると富士に出会う。かの北斎のように「横浜の今の」富嶽三十六景を仕立ててみる。

はまれぽ調査結果!

『横浜今富嶽三十六景・其の四』「旭区南希望が丘」(住所不明)の富士をご紹介!

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ライター:永田 ミナミ

『横浜今富嶽三十六景・其の四』
 

2014(平成26)年冬、横浜で最も急な坂はどこにあるかと探していたある日のことである。

その日は自動車で栄区、戸塚区、泉区へと移動しながらあちこちの坂を測り、旭区にたどり着いたのは日没が間近に迫ったころであった。

カメラのISO感度を高くしてもさほど画像の荒れない時代になったとはいえ、坂の上あるいは坂の下から斜度が分かるように写真を撮るには、すっかり日が暮れてしまうと具合が悪い。

フラッシュを使うとさらに具合が悪い。明るく写るのは光が届く手前ばかりで、届かぬ奥は漆黒の闇に沈んでしまう。
 

そんなわけで走り抜ける車のヘッドライトを利用して夜の坂を撮影する技も覚えはした


迫りくる日没に追われながら南希望が丘自治会館近くに車を停めて、目的の坂を早足で探してまわったが、カーナビに依存する世となった今日、地形に注意しつつ運転しているつもりでも、あるべき坂の場所を見誤ってしまうことがある。

坂はどこだと次第に駈け足になって住宅街をあちこち走りまわるも、歩く視線は家屋と夕闇に遮られて先の高低が分からない。

まいったなときょろきょろしながら、なお走りまわると、ふと視界に飛び込んできた景色に思わず足を止めた。

そして一瞬、坂のことを忘れてカメラを構えたのが今回の1枚である。



『横浜今富嶽三十六景・其の四』「旭区南希望が丘」(旭区南希望が丘)の富士である
 

坂を探し求めてうろついている途中だったために正確な住所は判然としないが、地図で改めて俯瞰してみると、南希望が丘の西側か? 阿久和川が削った河岸段丘で低くなっている。

その高低差がつくった眺望だと思われる。

ことによると走りまわっているうちに、善部町(ぜんぶちょう)に入っていたかもしれない。

実は坂は車を停めた自治会館のすぐ近くにあったのに、建物の坂があるのとは反対側に車を停めてしまったため、路頭に迷うこととなった。

 


そしてようやく目的の坂にたどり着いたときには夜の帳がほぼ降りていた
 

その後、もう一度この場所を訪れてみたいとは思っているのだが、なかなか機会を得ないでいる。


電車で行くとすると二俣川駅で二手に分かれる相鉄線本線の希望ヶ丘駅からも行くことができるが、いずみ野線の南万騎が原駅のほうが近いようである。

徒歩15分から20分ほどといったところだろうか。

近くには桃源台という風雅な名前の交差点があるので少し調べてみたが、残念ながら由来は分からなかった。
「万騎が原」がこの地で討ち果てた畠山重忠に由来するのはよく知られているだろう。



判然としないながらも赤い円内のどこかだと思われる。橙色は目的の坂の場所である(GoogleMapより) 


富士との出会いはいつでも偶然のようでいて必然でもある。

荷風は『日和下駄』で次のように書いている。

ここに夕陽(せきよう)の美と共に合せて語るべきは、市中より見る富士山の遠景である。夕日に対する西向きの街からは大抵富士山のみならずその麓に連る箱根大山秩父の山脈までを望み得る。

関西の都会からは見たくも富士は見えない。

ここにおいて江戸児(えどっこ)は水道の水と合せて富士の眺望と東都の誇となした。

『日和下駄』において「市中」は東京市であるが、それは横浜市においても然りであり、横浜児(はまっこ)においても港町の誇となすものである。

距離と所用時間:相鉄いずみ野線「南万騎が原」駅から約1.4km、15分から20分ほど。


ー終わりー


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