横浜美術館の展示会や収蔵品はどうやって決める?
ココがキニナル!
横浜美術館の展示会企画やコレクション収蔵はどのように決められるのでしょうか。ドガ展などを開催する一方、アイドル展など斬新な企画の時もあるので、どんな人が決めているのか気になる(ときさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
横浜美術館は横浜市の施設であるため、基本方針を前提に、学芸員による提案や外部からのオファーなどを、同館の会議ではかりながら決められる
ライター:河野 哲弥
キーワードは「シュルレアリズム」と「横浜」
(続き)
また、「横浜」ゆかりの一例としては、横浜にあった外国人居留地を拠点としたイギリス人画家チャールズ・ワーグマンや、横浜生まれの美術史家・思想家で後に日本美術院を創立した岡倉天心をはじめ、彼らを端とする、日本洋画や日本画の流れが追えるような体系的なコレクションなどがあげられる。
馬車道にある、「日本写真の開祖」の碑
さらに、「横浜」で忘れてならないのは、日本で初めて営業写真館が建った土地のひとつであること。横浜美術館の収蔵品約1万点のうち約4200点が、実は、写真の作品なのだそうだ。
「当時、公立の施設の中で専門の写真展示室を設けたのは、この美術館が初めてです」と柏木さんは話す。また、「ヴィンテージプリント」と呼ばれる、撮影とほぼ同時期に現像された、作家が自分の作品と認めたプリントが多いのも、同館の特徴となっている。
さまざまなプロセスのある、各種展覧会
では、展覧会の内容は、どのように決まっていくのだろうか。
柏木さんによれば、学芸員が自ら企画立案する場合と、外部からのオファーの、主に2つのパターンがあるとのこと。これらを、同館の館長も出席する企画会議を経て決定しているそうだ。開催に至るまでの準備期間は、長いもので5年程度、短いもので数ヵ月など、ケース・バイ・ケースであるらしい。
現在開催中の、「はじまりは国芳」展
総点数約250点のうち、同館所蔵品約70点が出品されている
また展覧会には、収蔵品のみで構成されるコレクション展と、所蔵者から一時的に作品を借り受けて構成される特別展(企画展)があるそうだ。
大規模な企画展となると、新聞社などのマスコミと共同主催となるケースも多い。例えば2010年に行われた「ドガ展」では、来場者数は通期の合計で35万人以上となり、地域経済への波及効果も望める一大イベントとなった。
一方、投稿にあったゴスロリ展とは、2007年に行った「ゴス展」のこと。タトゥーやピアスなど身体を使ったある種の芸術表現を、約250点の写真や絵画などで紹介した展示会である。
「ずいぶん、柔らかい企画ですね」と質問したところ、「現代に見られる『ある傾向・側面』をあぶり出し、それが、どのような文化を形成しているのかを示すのが目的。柔らかな内容にしようといったような意図ではありません」と柏木さん。
「みる」「つくる」「まなぶ」を表す3つの四角を、横浜のYの字に重ねた、同館のロゴ
どうやら、社会的な目で見た切り口と、文化・芸術という目で見た切り口では、その対象への評価は違うようである。アイドルもゴスロリも同じ文化のひとつだと考えれば、バイアスをかけて排除する発想の方が、かえって不自然に思われる。
逆に、当初に紹介した基本理念からあまりに外れた内容、例えば「エジプトで新しいミイラが発見されたが、展示してみませんか?」などの、主に考古学的な観点にたった展覧会の申し出があったとしても、おそらく実施には至らないだろうとのこと。近現代とも横浜とも、全く関連性がないからである。
今後予定されている展覧会、一例
現在開催中、または2013年にかけて予定されている展覧会は、以下の通り。
11月3日(祝)からスタートした「はじまりは国芳-江戸スピリットのゆくえ」は、前・後期展示となっていて、12月7日(金)から展示内容を替えているそうだ。こちらは1月14日(月・祝)まで。
また、1月26日(土)からは、「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」展が開催される。世界で最も有名な報道写真家キャパと、その陰に隠れたパートナー、タロー。日本で初めてとなる2人の写真展を、写真・資料を合わせた総点数約300点で紹介するもの。
「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」チラシ
作品の半数以上は同館の収蔵品
柏木さんによれば、「こうした収蔵品は横浜市のものなので、例えるなら横浜市民の持ち物」とのこと。これからは、自分のコレクションを眺めるという感覚で、足を運んでみてもいいのではないだろうか。
―終わり―
◆横浜美術館
神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1
045-221-0300
http://www.yaf.or.jp/yma/
ushinさん
2013年01月08日 01時46分
超芸術トマソン活動にちょこっと関わったことが有る。その時に「ハッ」と気づいたことだが、学校で習っている「美術」はその字の通り「美しい」を重要視するが、それより広義の「芸術」は美しいにとどまらず、ヘンだったり場合によっては汚いものであろうとも、人の心に何らかのざわめきを投げかける物なんだと。だから、芸術の価値はオークションの落札価格とはイコールではない。誰もが認める美術品を集めているだけだったら成金のコレクターと同じ事。横浜美術館、なかなかヤルではないか!
くてくてさん
2013年01月07日 21時37分
開館当時、横浜美術館の最上階が開放されており、お茶を飲むことが出来ていました。そのころこの建物が一番高く最上階からの眺めも良かったです。入口前の広場も気持ちがいいし、ミュージアムショップも楽しい美術館です。
マウムさん
2013年01月07日 10時14分
市民向けのワークショップも数々開催されていて、それに参加するのも楽しいですね。