ギャンブル依存を更生させる瀬谷の施設「ワンデーポート」から聞こえてくる騒ぎ声の正体は何?
ココがキニナル!
瀬谷区にあるギャンブル依存の更生施設、ワンデーポートが気になります。中で卓球をして、大声で騒いでいるようなので気になります。カリキュラムの1つなのでしょうか?(雄鳥屋さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
ギャンブル依存から回復した施設長が個々に合ったプログラムを実施している更正施設。騒ぎ声は利用者が休憩中の交流で卓球をしている時の歓声だった!
ライター:山口 愛愛
卓球は意外な効果をもたらしていた
では、実際のプログラムについて聞いてみよう。
利用者は、ギャンブルが原因で仕事や自立した生活ができない人、借金に悩んでいる人、中には刑事事件を起こしてしまった人もいる。現在は20~70代までの24名が入寮中だ。
ほとんどの場合、最初は本人ではなく家族が電話相談(無料)をしてきて、話し合うことから始まる。ギャンブルをやめ、「暮らし」「仕事」「余暇」が充実した生活を送れるように目指すのが目的だ。
まずはここで話し合うことから始まる
入寮すると3ヶ月間の「基礎プログラム」が待っている。生活は3人で1室を使い、部屋は1人で使える。この間、仕事はできない。
午前、午後と、グループセラピーや面談、レクリエーション、ボランティア活動などを通して自分の問題に向き合う。
2011(平成23)年6月には東日本大震災の被災地、岩手県宮古市や陸前高田市で側溝の泥かきなども行った。ボランティア活動で使う、作業着なども不用品を献品してもらいまかなったそうだ。現在でも近隣の福祉施設や、福島県で農作業ボランティアなども行っているという。
夜は相互援助グループや、スポーツ、絵画など、個々の希望に合わせて課題を行う。
「病院や他の施設では、カウンセリングやグループミーティングなど一辺倒の対応が多いのですが、客観性を持てない人やコミュニケーション能力が足りない人にとっては苦痛だったり、効果がなかったり。個々にあった生活に即したアプローチが必要です。ギャンブルにハマる人は、熱中しやすい人が多く、違う趣味を持ち、生きがいを見つけられる人もいます」。
寮のイメージ。相談室で使っている部屋の台所
以前に社会復帰をした利用者さんから、「働き出したら、体力がきつかった」という声を聞いたことから、体を動かすことも重要だと考えている。中村さんもはウォーキングを始め、20kgのダイエットにも成功した。入寮者にも薦めウォーキング大会やマラソンに出場しているそうだ。
「100kmウォーキングの大会にも希望者を募って出場していますが、社会で働ける体力をつけるだけでなく、挑戦する気持ちや、やりとげることの達成感を味わえます」と中村さん。
基礎プログラムを終えると、「就労プログラム」に移り、昼間は資格取得のために学校に通うか、アルバイトなどをして働き、夜は通常のプログラムを行う。自立のために貯蓄してもらうので、金銭管理のアドバイスもしているそうだ。
このプログラムを1~2年で終え、社会復帰していく。
アンケートや心理テストも行い、自分を見つめ直す
ところで、キニナル投稿にもあった「卓球」はプログラムの1つなのだろうか?
別室に卓球台があるのかと思い、聞いてみると、中村さんは苦笑い。
「卓球は、昼と夜のプログラムの合間に、利用者が事務机で遊んでいるだけなんです。
利用者によっては、家族に薦められて嫌々入寮し、最初のうちはうまく交流できない人もいるんです。それが自然と卓球の輪に加わり、交流が始まったりすることもあるんですよ」とのこと。
卓球シーンを見せてもらうために、ミーティングルーム事務所におじゃました。「こんにちは!」とみなさん、礼儀正しく挨拶をしてくれた。取材のお願いをすると、利用者がミーティングをしていた事務机の上を手際よく、片付けてくれた。事務机が卓球台に早変わり!
楕円形のテーブルにネット(?)が置かれただけだった
「予算がないので、ネットは利用者の手作り、ラケットも100円均一で買ってきました」と中村さん。
ダンボールを三角に折っただけの支柱も微笑ましい
ときどき、スマッシュが決まると歓声や笑いが起こる。更正施設ということを忘れてしまうような、穏やかな雰囲気だ。
「卓球を始めて半年」というがハイレベル
順番に対戦相手を入れ替えて楽しむ
撮影していると「一緒にやりませんか?」と利用者が声をかけてくれたので筆者も対戦に参加。
少し手加減をしてくれ、見ている人からも「惜しい!」「ナイス!」などと応援の声をもらい、束の間ラリーを楽しんだ。
調子に乗り、強く打ったら思い切りアウトになり、謝る筆者
支柱の「三角コーナー」に入ると4点という特別ルール
和んできたところで、利用者に改めて投稿内容のことを伝えると「そんなに外に声がもれていたとは・・・。あまり騒ぎ過ぎないように気を付けますね」とのことだった。
最後に、中村さんに仕事のやりがいを聞いてみた。「人間は1人ひとり違います。みんな必ず良いところを持っているんです。それに気付けることが嬉しいですね」と笑顔で締めくくった。
みなさん、取材に協力的でありがたかった。その“良いところ”がさらに引き出され、いずれはこの港を旅立ち、社会に出て活躍されることを心から願う。
利用者と接していると自然と笑顔がこぼれる中村さん
取材を終えて
ギャンブルとひと口にいっても、ハイリスクなものから、公営ギャンブル(競馬、競艇、広義の意味では宝くじなど)まで、さまざま。日本の現状、これらがなくなることは、まずないだろう。ギャンブルは悪、やらなければ良いという考えだけでは、この社会問題は解決しないように思う。
中村さんは、「ギャンブルを辞めても、軽微な障害や障害とはみなされない弱さを抱えている人は、そうした特性は残るので、ワンデーポートを出た後も支援を継続することがあります。自力でやれると思っても、できずに失敗して戻ってくる人もいますが、悪いことではないと思っています」という。
依存してしまった人が継続して頼る受け皿があること、ギャンブル依存を改善するだけでなく、陥ってしまった1人ひとりの背景を考え、フォローするという姿勢が重要だと感じた。
― 終わり―
認定NPO法人ワンデーポート
家族相談
毎週金曜日10時~16時 予約制
amakoさん
2014年08月07日 09時11分
素晴らしい施設ですね。日本にこのような施設がたくさん出来るといいんですが。。パチンコ(&スロット)なんてなくなればいいのに。
みうけんさん
2013年08月20日 00時06分
瀬谷区相沢ってかなり密度が高い住宅街ですよ。そんな所で昼と夜の卓球のたびに大騒ぎとは迷惑以外の何物でもないですね。
にゃーさん
2013年08月19日 16時17分
記事中の「生活は3人で1室を使い、部屋は1人で使える。」という文章が理解できませんでした。