横浜の趣きある茅葺き屋根の古民家がある場所を教えて!
ココがキニナル!
横浜市内にある茅葺屋根の建物で、現在でも現役(住居、物置等)の建物ってあるの?(にゃんさん)/一般に公開展示されている古民家は、市内にどれくらいあるの?(ねこぼくさん)
はまれぽ調査結果!
総数は不明だが、一般公開の茅葺き屋根の古民家は市内に複数存在する。個人宅もあるので、プライバシーに配慮して鑑賞されたい。
ライター:松崎 辰彦
伝統行事を継承する
相鉄「三ツ境」駅で神中バス「戸塚駅」行きに乗り、「上阿久和」で下車、徒歩3分。静かな環境の中にあるのが長屋門公園である。
長屋門公園は、旧大岡家長屋門の中に旧安西家主屋を移築した構成になっている。大岡家は1987(昭和62)年、市の緑政局と借地公園計画を結び、私費を投じて長屋門を改修し、市に寄贈した。同家は明治期に製糸業を営んだ資産家で、長屋門の2階には養蚕に使われた部屋があり、かつての絹産業の隆盛を偲ばせる。そして主屋である安西家は天保期(1830~1844)に和泉村の名主を務めていたことが判明している。
それでは長屋門公園に入ろう。
長屋門公園。威風堂々の構え
道路に面した大きな旧大岡家長屋門(1887〈明治20〉年築造)をくぐると、旧安西家主屋が目に入る。
旧安西家主屋。茅葺き屋根が情趣豊か
こちらも堂々たる木造平屋・寄棟造(よせむねづくり)の建物。建築は江戸中期後半といわれている。かつて横浜市和泉町にあった屋敷だが、1991(平成2)年に横浜市に寄贈された。敷地内には文庫倉や井戸もあり、往時の面影を伝えている。
井戸もある
すがすがしい板の間
囲炉裏も懐かしい
舞岡公園の古民家同様、さまざまなイベントが年間を通して行われ、節分やひな祭りなど、人々に日本の伝統行事を伝承している。横浜市認定の歴史的建造物である。
茅葺き屋根に浮かぶ名家の威光
以上述べた舞岡公園や長屋門公園は公共の施設であるが、現在、個人宅として存在している茅葺き屋根民家はどれだけあるのだろう?
茅葺き屋根を維持するのは、現代では非常な苦労がつきまとう。
現代ではまず材料を供給する茅場が少ない。それでも定期的に茅の葺き替え(茅を新しいものに替えること)をしなければならないし、何より火災が恐ろしい。
そうした民間で茅葺き屋根の邸宅をもっている一人、港北区の飯田助知(すけとも)さんに話を聞いた。飯田さんのお宅は実に700年間この地に住み続けている土地の名家。かつては名主として地元の産業や経済に采配を振るった。
飯田家の長屋門 見事な茅葺き屋根である
飯田家14代当主・飯田助知さん。江戸時代後期の画家・狩野則信の屏風の前で
重厚な長屋門に広大な主屋。いずれも情趣豊かな茅葺き屋根である。
1994(平成6)年11月、横浜市の有形文化財に指定。
飯田家主屋の屋根。1996(平成8)年に葺き替えた
飯田家全景 (画像提供:飯田家)
1877(明治10)年ころの飯田家。『大日本博覧絵』より(画像提供:飯田家)
庭の脇にある堀。自然環境も素晴らしい