かつて「ちょんの間」だった黄金町は「アート」の力で再生できるのか?
ココがキニナル!
黄金町のガード下にあるアート系の店だかアトリエだかが、正直何なのかサッパリわからない。黄金町バザールもどう楽しめばいいの?(jamies900さん、すがひこさん、ぴのたんさん、神絆会さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
黄金町ガード下お店はNPO法人「黄金町エリアマネジメントセンター」が管理、誰でも入れ、商店街を散策する際に寄ってみるのがおすすめとのこと
ライター:山崎 島
じゃあ、実際にどう楽しめばいいの?
では、黄金町に訪れる人へはどうなのだろう。はまれぽに寄せられた「黄金町のガード下のアート系のお店が何だかよくわからない」というキニナルをぶつけてみる。
確かに遠目からだと何なのかサッパリ分からないガード下
すると「僕は美術館が嫌いなんですよ」とおっしゃる山野さん。
「整った環境の中で“絶対観ないといけない”って感じに肩がこる。ここは作品を静かに見る環境としては良くないです。作品以外にも目に入ってくる建物や音などの、ノイズが多い。なのでその点で作品を特別扱いしなくていいんです。作品に興味があるなら作品を観れば良いし、街を見てもいいし、両方一緒に眺めてもいい」
ガラス張りの構造は「街」と「作品」を同時に観てほしいという思いから
「パブリックアートってよく言いますけど、例えば駅など公の場所に突然好きでもない物がどんとあったら、人は嫌がります。アートの押しつけになってしまう。だけどここにあるものは永久ではないですから、そういったストレスもない。私たちの掲げるパブリックアートとは、作品を自由に写真撮影してもいい、という意味のパブリックアートです。そしてほかのレジデンスは一軒の建物の中でアーティストたちが活動していますが、ここは小さなアトリエが街の中に点々とあるという世界でも珍しい形をとった場所なんです」
街とアートと人を結ぶ街ってことですね。では「アート」に馴染みのない人たちへの楽しみ方の提案をお願いします。
「黄金町のアーティストレジデンスは近くに『初黄日商店会』などの商店街がある非常に地域性の強い場所。なので、商店街が比較的空いている平日にぶらりと歩いてみるのがいいのではないでしょうか。ぶらぶらしながら商店に入ったり、作品を見たり。少し変わった街歩きをしてみては?」
なるほど、天気の良い秋にはもってこいの街歩きだ。
近隣には個人店がならぶ
黄金町バザールについて
続いて最近「学園祭以下のクオリティ」と言われるほどになった、期間限定のアートフェスティバル「黄金町バザール」についてお話を伺った。以前は無料だった入場料が2011(平成23)年から700円になった。理由は横浜トリエンナーレと共同での開催が決まったから。その際、入場料を支払って入る横浜トリエンナーレと同様にするため入場料を設定した。
無料バスもある!!
売上金の一部は初音町、黄金町、日ノ出町の商店でつくった初黄日(はつこひ)商店会へ還元している。
平日の初音商和会
そう。学園祭以下、というコメントについて山野さんは「学園祭には掘り出し物がたくさんあるから“学園祭”自体はポジティブなことだと思う」とおっしゃっていた。
バザール開催当初は「予備知識がなくても楽しめる分かりやすい現代アート」というテーマで取り組んだ。しかし芸術関係者から「展示テーマが甘い」という意見があり、少しずつ複雑なテーマや難解なテーマに変えていった。すると今度は何が何だかわからないという意見も寄せられ、結構板挟みである。アートに興味がない人も訪れる場所ならではの葛藤。
2014(平成26)年のテーマは、アジアの文化を作品で伝える「仮想のコミュニティ・アジア」
今年の黄金町バザールはカナダで活動している原万希子さんをキュレーター(美術館・博物館などの展覧会の企画・構成・運営を行う専門職)として迎えている。テーマは「仮想のコミュニティ・アジア」。アジアで活動しているアーティストの作品を多く展示している。
以上、いろいろ伺ったお話からはキニナルに対しての具体的な答えが見いだせなかったため、ザキヤマが歩いて検証してみることに。山野さん、立石さんありがとうございました。
みな、どう考えているのか?
「黄金町バザール」に来た方にお話を伺った。話してくれたのはご自身もアーティストとして2005(平成17)年の横浜トリエンナーレに参加された「くまさん(仮名)」。
黄金町バザールの印象は「かしこまらずに作品を見られる場所。ちょっとしたことを見せたい人たちの集まりだね。だから自分もぶらーっと歩いて、ああ、若いアーティストたちはこんなことをやりたいんだな、とか、こんな方法があるんだなって、余裕を持って受け取ることができる。中には外国のリアルな情報を発信している作品もあって、面白いです」と、作り手の視点からのコメント。
アート作品を観てギャラリーごとにスタンプを押せるスタンプラリーもある
たしかに、世界中の出来たてほやほやの作品を見られる場所だな、ここ。ご飯を食べたり、本を読んだり、寄り道しながらスタンプラリーを楽しんでらっしゃる、くまさんでした。
次に初黄日商店会の方に取材をした。なかなか取材させていただける方がいなかったが、1人だけお話を伺えた。子供のころから黄金町近辺にお住まいのTさん。
昔から住んでいる方はどんな想いで街を見続けてるのだろうか
昔の黄金町は、女性が夜1人で歩ける雰囲気ではなかったそう。昔と比べて現在街の様子は変わりましたか? と問いに、「そんなに変わった印象は無い。特別きれいになったわけでもないし。治安は良くなった・・・のかな・・・」と考え込まれた。
黄金町エリアマネジメントセンターや、バザールについてお伺いすると「何をやっているのか知っているわけではないので、コメントのしようがない。たまたま何かやっているのかなあって感じ」アートと聞いてもピンと来ないよう。地元の方ならではのリアルなご意見でした。お忙しいところありがとうございました。
実際に作品を観てみる
次は実際に黄金町エリアマネジメントセンターで活動しているアーティストの方を訪ねた。
アトリエにお邪魔する
アトリエの入口の表札
丸メガネが一緒
コンクリートを使った立体作品を作っている山田さん。大学院を卒業してから活動の場所を探していたところ、黄金町エリアマネジメントセンターを人づてに紹介されたそう。
”中身”をテーマにした作品を作っている
ご自身の中身の写真。ヘルニアをやった時のものだそう
以前のアトリエをコンクリートの立体物で埋め尽くし、洞窟のような部屋にしてしまったという山田さん。黄金町エリアマネジメントセンターは山田さんにとってどのような場所ですか? との問いに「黙って見守ってくれるお母さんのよう」との答え。「若手のアーティストに寄り添ってくれる場所なんですね。黄金町という街の歴史を含め、どのように作品に影響しているんですか?」と尋ねると「この町の力は強いので、自分の感性が引っ張られないようにしている」とのこと。
この「黄金町」という場所であえて活動している意義については聞けなかった。
山田さんありがとうございました