【横浜の名建築】横浜市指定文化財 山手111番館
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第2回は、港の見える丘公園にある、山手111番館。小ぶりでかわいい西洋館には、オーナー夫妻のロマンティックなエピソードが眠っていた。
ライター:吉澤 由美子
暮らしやすい工夫と控え目な装飾
(続き)
シンプルな浴室の壁は、正方形と長方形のタイルを組み合わせて変化をつけている。
床のモザイクタイルも色の違うものがランダムに配されている。
色や形に微妙な変化を加えることで落ち着きを感じさせる浴室
階段下のクローゼット内部に抽出し
こうした収納スペースが充実していて、生活のリアリティが伝わってくる。
東側の個室は自然光が美しい。ギャラリースペースとして利用されている
食堂には東向きの大きな窓がある。
各部屋の天井や壁、照明の形などの違いを見比べるのも楽しい。
窓を背にした食堂内部。中心の暖炉がどっしりとした存在感
ホールと食堂には、間に壁を挟んで2つの暖炉が背中合わせに作られている。
レンガのまわりを飾り彫りが施された金属プレートが囲み、全体は重厚な色艶の木が引き締めている。
木の部分にも、花などの飾り彫りがあることで、印象が優しい
キッチンと食堂の間には、配膳しやすい小窓とドア。
どちらから押しても軽く開くスイングドアは、両手にお皿を持っていても、肩で押すだけで出入りができる。
キッチンと食堂の間にあるスイングドア
応接室から表の噴水を眺める。山手111番館ではウェディングも行えるとか
山手西洋館で行われるコンサートや展示会などのパンフレットが置かれた応接室
スリーピングポーチ(午睡室)のここちよさ
2Fに上がる階段の壁はホールと同じく、石膏プラスター引摺り仕上げが復元されている。
ランダムな筋は太陽光の角度によって、刻々と表情を変える
階段を上ると、目の前に吹き抜けの張り出し。
ホールと同じ寄木細工の床で連続性を持たせている
スリーピングポーチと名付けられた細長い部屋は、創建当時の壁紙に囲まれて、たくさんの窓があり、風や光がふんだんに入ってくる。この場所で昼寝できたらうっとりするほど快いに違いない。
公開日以外は、イベント準備の物置的に使われることも
主寝室は、緑の木々越しに港が見える大きな窓。
まだ橋や工場がなかった創建当時、この窓からは港の青が広々と見渡せた。
サクラの季節には窓の下がピンクに染まる。
寝室からローズガーデンを眺めると、映画『コクリコ坂から』のバナーが見えた
取材を終えて
じっくり見て回るうちに、設計したモーガンが男性でありながらここまで細やかに暮らしやすい配慮を行っていたことに驚きがわいてきた。
古いクリスタルのドアノブ
そして、ラフィン夫妻のエピソードを思いながら山手111番館の中をめぐると、ここに住んだ何組もの家族たちの幸せな思い出が、部屋の中に今も漂っているように感じた。
柱上部に植物を思わせる飾り
※クローゼットの内部、2階などは、特別な許可をいただいて撮影しています。
―終わり―
山手西洋館公式サイト
http://www2.yamate-seiyoukan.org/seiyoukan_details/yamate111/
山手111番館 2階公開日は、毎月第2火曜日
次回は、8月9日
11:00~ 15:00~の2回行われます
お問い合わせ先
山手111番館
045-623-2957
たかぱぱさん
2016年03月16日 12時15分
近所に住んでいながら詳細は知りませんでした。家族の温まる歴史があったのですね。勉強になりました。ありがとうございます。