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昔は横浜で石油が出たって本当?

ココがキニナル!

昔、西谷付近で石油が出そうだという騒動になったという話を聞いたことがあります。試掘までして結局は少量の天然ガスしか出なかったとのこと。話は30年以上も前に聞いたので戦前の話かも(hiwochanさん)

はまれぽ調査結果!

昭和30年代に石油に代わる燃料として天然ガスの試掘が各地で行われた。保土ケ谷区西谷の周辺はその採掘候補地の一つだった

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ライター:小方 サダオ

温泉施設にお話を伺う



石油の代わりに温泉が出た、との証言があった。そのせいか周囲には、市街地の真中にもかかわらず天然温泉施設が多い。

先ほど採掘現場として名前の挙がった、旭区白根の「日帰り天然温泉 竜泉寺の湯」店長の小向(オブキ)さんにお話を伺うと「この場所を温泉の採掘地に選んだのは、行政資料などをもとに、温泉が出やすい地層である、ということと、日産自動車寮跡という大きい敷地を確保できることで決めました。約2000メートル掘り温泉が出ました」

「さきに上星川駅前の『満天の湯』がオープンされていました。あちらは黒湯ですが、こちらは塩質のナトリウム泉となっています」と答えてくれた。
 


炭酸泉の効能が自慢だという、日帰り天然温泉「竜泉寺の湯」
 

井戸水を汲み上げ貯水する受水槽と温泉の汲み上げポンプ
 

上星川駅前の「天然温泉 満天の湯」
 

つづいて保土ケ谷区仏向町にある「横浜温泉 黄金湯(こがねゆ)」の店主・佐藤さんにお話を伺った。
 


横浜温泉・黄金湯
 

「天然化石海水型」の温泉で黒湯の鉱泉だという
 

「今から40年ほど前のことです。井戸を掘ろうと思い100メートルほど掘ったところ、赤い水が出てきました。そのためこれは井戸として使えないと放置していました。しかし1999(平成11)年に温泉研究所に調査をしてもらったところ、『温泉です』と認定されたため、この黄金湯を開きました」

「東京都の蒲田あたりと同じの黒湯の鉱泉です。16.8℃しかないため、さらに沸かしています。化石海水(地層中に長い間閉じ込められていた海水が湧き出したもの)で、冷え症や腰痛やアトピーに効くようです」と答えてくれた。
 


天然温泉にして銭湯の黄金湯
 

煙突室内。写真左側あたりに地中へのパイプがある
  

保土ケ谷区や旭区では温泉が出るようだが、石油や天然ガスの採掘とは関連性があるのだろうか?
 


保土ケ谷の地層中に期待されていた天然資源とは?



石油は現在も活躍している燃料だが、あまり知られていない「天然ガス」とは何なのだろう?

「『トコトンやさしい 天然ガスの本(日刊工業新聞社)』によると、天然ガスとは、地球の地殻内に埋蔵されている、石油の仲間といえる可燃性ガスのこと」と書かれている。
 


天然ガスと原油の層は近い『よくわかる天然ガス』(日本エネルギー学会・天然ガス部会)
 

しかし「温泉の地層と深度が近いために、温泉を採掘している最中に天然ガスが噴出し火災が発生した事故がある」とのこと。

前出の証言での「ガスが少量と、ぬるいお湯が出ただけ」という話も、このことを証明しているのだろう。

また「関東地方では、房総半島から関東平野にかけての水溶性天然ガス田・南関東ガス田が大規模なものである」と書かれている。

つぎに日本国内で天然ガス鉱業を営む企業により組織された「天然ガス鉱業会」のウェブサイトによると「国内では、新潟県、北海道、千葉県、秋田県、宮崎県などで天然ガスの生産を行っており、石油・天然ガス鉱山は59鉱山(2011<平成23>年末)存在し、年間30億立方メートルを超える天然ガスが生産されています。国産の天然ガス生産量は、国内供給量の約3%(国産原油の年間生産量は国内供給量の0.3%程度)に相当しています」とのこと。

日本では、原油より天然ガスの生産能力のほうが期待できるようだ。
 


ロータリー式発掘装置の図
 

ところで証言によると元採掘地は、東京ガスの土地であったという。採掘していたという天然ガスと何か関係があるのだろうか?

東京ガスの不動産計画部の小野さんにお話を伺った。
「こちらの資料に、その土地を1968(昭和43)年に、パイプラインを使う時の圧力調整のためにガスを貯蔵するタンクのための土地として購入した記録があります。その後その施設を使わなくなったため、資材置き場としてある建設会社に貸しました。現在は住宅が建っています」とのこと。

採掘騒ぎは1963(昭和38)年ごろにあったと聞いたので「土地の購入以前に天然ガスを発掘した記録はないか」について伺うと「そのような記録はありません」と答えてくれた。
 


1970年(昭和45)年の住宅地図によると東京ガス川島町出張所とある
         

つづいて天然ガスの採掘に関して、天然ガス鉱業会の松下さんにお話を伺った。
「天然ガスの採掘は、現在でも千葉県の白子や茂原で行っています。千葉県の外房の地層の上総(かずさ)層群が東京の方までかかっているのです。南関東ガス田は上総層群といわれる地層の中にあるガス田のため千葉県が中心ですが、東京都だと大田区平和島では温泉と天然ガスが出ていて、今も掘っています」

石油が出る、という騒ぎがあったことについては「日本において石油が出ることは過去においても期待されてはいません。しかし地下水にガスが混じる場合があることは江戸時代から知られていました。関東地方では80年ほど前に、地下1km~2kmの地点まで、温泉か天然ガスが出るかどうかの調査の試し掘りを各地で行っていました。神奈川県の民間会社か研究会が温泉か天然ガスの採掘を期待して行ったものなのではないでしょうか? または東京ガスが掘ろうとしたのかもしれません」
 


天然ガス坑井(こうせい)に取り付けられる採ガス井
 

さらに該当しそうな資料を探していただくと「(株)帝国石油50年史に『1955(昭和30)年から1959(昭和34)年にかけて、神奈川県の保土ケ谷のあたりを一回もしくは複数回にわたり井戸を掘って天然ガスの発掘を試みたものの、何も出なかった』と書かれています」と教えてくれた。
 


帝国石油の新潟基地
 

また「東京ガス100年史」を調べると、「帝国石油(株)は1959年に新潟県において大規模な天然ガスの埋蔵を発見した」と書かれている。

帝国石油(株)は1959年前後に全国的な調査を行ったようだ。

「よくわかる天然ガス」(日本エネルギー学会・天然ガス部会)によると、昭和30年代後半から40年代にかけて、高度経済成長期に大気汚染による公害問題が深刻化、有害物質の排出の少ない環境性に優れた天然ガスへの燃料転換が始まった、という。

この時代背景があって天然ガス採掘への期待が高まり、各地の有力候補地で試掘作業が行われたのではないだろうか?
 


神奈川県が行った県下の天然ガス地下資源調査



神奈川県が専門家に頼み、神奈川県下の地下資源の調査を行った記録がある。

『神奈川県下の天然ガス地下資源 神奈川県発行』によると「都市産業と大量の人口からの必要性で、工業技術院地質調査所の指導の下に、横浜と川崎で調査を行った」とある。
  


神奈川県下の天然ガス地下資源(神奈川県発行)
  

西谷のあたりは伊田技官が担当したと書かれている
 

「川崎市、東京都、船橋市、千葉市などにおいて戦後天然ガスの開発がすすめられて、成功井も完成している。そこで東京、横浜、川崎、茅ヶ崎などで、天然ガス開発の可能性を検討するとして、 調査が行われ、1952(昭和27)年に地質調査所により、横浜市から鎌倉市地域の地表地質調査を行った」
 


地層の比較に有効な特徴的な地層を示した、鍵層(かぎそう)表
 

9番目の鍵層名が西谷となっている
 

それぞれの鍵層名
 

「この地域の地層は下位の三浦層群と上位の相模層群に大別される。保土ケ谷区星川では泥質の上星川累層(るいそう/ほぼ一定の環境下で堆積した地層のまとまり)が存在する。帷子川沿岸である知田、 鶴ヶ峰は本層の最上部である。一見泥質、無層理に見えるが、砂岩塊(さがんかい)を伴うもので、異常堆積砂質泥岩(たいせきさしつでいがん)と識別される」

しかし調査結果に関しては「ガス層となるべき砂層は東または北に向かって漸次(ぜんじ)発達の傾向があり、ガス層は星川ドーム状背斜(はいしゃ/地層が山形になっている部分)に向かい減衰している。調査地域でガス鉱床(地下資源が濃縮している場所)を期待することは不可能という結果であった」
 


水質分布図
 

西谷では深度200メートル付近の着色水・非含ガス及び低ポテンシャルとある
 

「天然ガスを工業燃料や熱源に利用しようとするならば横浜市では神奈川区東か鶴見区である」と書かれていた。

さらに独立行政法人地質調査総合センター(前・工業技術院地質調査所)の産総研地質分野研究企画室の武井さんに、この資料に関してお話を伺った。

「資料にある1952(昭和27)年に地質調査が行われていたか」に関しては「『神奈川県下の天然瓦斯地下資源』にある通り、地質調査所のメンバーが、おそらく神奈川県からの委託調査として請け負ったものと思われます」とのこと。

また「前出の証言者は1963(昭和38)年に試掘を目撃したというが、1952年の調査以後の1955(昭和30)年代には行われていたか」について、「地質調査所のメンバーが行った調査の内容は見つけることができませんでした。ただし、日本天然瓦斯協会会報 No.120(1958<昭和33>年1月10日発行)に、『帝石保土谷天然ガス2号井開坑』という記事があり、それには、『通産省地質調査所が、1951(昭和26)年から4か年がかりで調査の結果・・・』と書かれているので、1955(昭和30)年までは何らかの形で調査は継続していたものと思います」と答えてくれた。
 


上星川累層(井土ヶ谷~鶴ヶ峰)の断面図
  

なお、保土ケ谷での掘削(試掘)を行っていたのは帝国石油で、石油技術協会誌第27巻5号において、エジプト石油開発(株) 探鉱部長菊池良樹氏が発表した論文によれば『1957(昭和32)年10月から1958(昭和33)年末にかけて、星川ドーム構造を明らかにするため、帝国石油が8本の試掘井(しくつせい)と3本の構造試錐(こうぞうしすい・地質構造解明のために掘削されるたて穴)を行った』と書かれています」とのこと。

最後に横浜市保土ケ谷区は地下資源の存在が有望だったか、については「当方も坑井(こうせい)のデータなどを知りたいと思いさんざん探しましたが、最終的な資源量評価を行った公表資料は見つけられませんでした」と答えてくれた。

証言者によると採掘現場には東京ガスの看板がかかっていた、とのこと。帝国石油に引き継いで、東京ガスが採掘を行ったのだろうか? それについては定かではない。
 

  

取材を終えて



今回の石油騒ぎの証言から、畑の真中で石油が出ることを夢見ながら、泥まみれで作業をしていた当時の採掘者の情熱を感じた。

日本の高度経済成長期における公害の激化により、クリーンなエネルギーを求めて全国で調査が行われたとのことで、クリーンなエネルギーの必要性に関しては現在の状況と重なる。しかし保土ケ谷では天然ガスの代わりに、今は温泉という地中の恵みが我々に恩恵を与えてくれているのだ。
 


八王子の片倉での温泉掘削現場
 

掘削中の「日帰り天然温泉 竜泉寺の湯 八王子店」
 

温泉の掘削機
  


―終わり―
  

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  • とても興味深い記事でした。私が押した時点で「面白かった」101票、「面白くなかった」0票であることからも皆さん同じ意見であることが分かりますね。

  • 以前からその取材の奥深さに感心しておりました。誰も掘り返さずに埋もれていた情報の点を結び付けていくさまは、まるであらたな古代史が解明されていくようで、とてもエキサイティングでした。

  • 取材お疲れさまでした。様々な方が積極的に過去の資料を当たってくださったおかげで、試掘事業の全貌が浮かび上がってきましたね。東京ガスの小野さん、天然ガス鉱業会の松下さん、地質調査総合センターの武井さんにも感謝です。

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