【横浜の名建築】横浜市開港記念会館
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第4回は、横浜市開港記念会館。横浜3塔のひとつ「ジャックの塔」で有名なこの建物は、多種多様で華やかな魅力の中に波乱にとんだ歴史を持っていた!
ライター:吉澤 由美子
歴史に翻弄されながら、見事に復元
(続き)
そして、細かな意匠も外せない魅力のひとつ。
大きなバラ窓から光が入る2F広間。階段上にある半円形の張り出しが優美だ
このバラ窓や広間と資料室の間にあるステンドグラスには、「浜菱」が入っている。横浜市のマークである浜菱は、カタカナの「ハマ」をデザイン化し、開港50周年を記念して制定されたもの。
その浜菱が、同じく開港記念50周年に建設が決定した建物の各所に隠れているというのも趣がある。
資料コーナーの半円窓から神奈川県庁が見える。奥には、ジャックの塔に続く階段
この窓は、円周部分にすりガラスが使われている。変化をつけることで窓の表情も豊かになる。
入口入ってすぐのロビーには、大理石でできたギリシャ風の柱
広間の通風孔は、扇をモチーフにしたもの
階段のこんな部分にも波型の美しいカーブが施されている
階段の親柱(手すりの一番端にある柱)には、港町らしい波と貝殻の意匠
昔は貴賓専用だった横浜公園側の入口床。六角形のモザイクタイルと大理石の階段
中庭に置かれた昔の装飾。そっと触れると往時のざわめきが聞こえる気がする
横浜公園寄りの角にある八角塔は、法隆寺の夢殿などに見られる日本的な建築意匠。
風水に基づいた建築物によく見られる形だ。
八角塔の1Fは貴賓専用入口。天井も一段と豪華だ
戦後、GHQが横浜から東京の日比谷に司令部を移した後、横浜に残ったのは米第8軍司令部。
第8軍というゆかりもあって当時、八角塔はオクタゴンタワー、八角の特別室はオクタゴンホールと呼ばれ、マッカーサーお気に入りだったと伝えられている。
2Fのオクタゴンホールにある3つの窓は、東、南東、南を向いている。
特別室は正確な方位を向いた八角形。創建時には、天井に鳳凰の刺繍が施されていた
この建物の窓の多くは3つでワンセットになっているものが多いが、これはキリスト教のトリニティ(三位一体)を表している。
風水とキリスト教。ここはまさに、洋の東西が融合した部屋なのだ。
そして忘れてはならない見どころのひとつがステンドグラス。
白系統のティファニーホワイト、ティファニーオパールは高価な色ガラス
触れることができるほど間近に、これだけ価値あるステンドグラスを観察できる場所はほかにあまりない。
独特の畝や溝が、見る角度によって光のニュアンスを変える
外側だけでなく、内部にも美しい意匠をそのまま残すこの建築物は、明治大正から昭和初期の雰囲気を濃厚に伝えてくれた。
取材を終えて
これまで、見た目の華やかさに目を奪われていた横浜市開港記念会館。
天野さんが貴重な体験を交えて解説してくださったことで、「歴史に翻弄されながらも見事に再生した名建築」と、まったく違った印象に変わった。
鮮やかな色彩とデザインが圧倒的な存在感を示している
横浜市開港記念会館は、内部や歴史もまたドラマチックで美しい建物だった。
― 終わり―
開港記念会館公式サイト
http://www.city.yokohama.lg.jp/naka/kaikou/
通常見学可能時間
10:00~16:00
(全館貸切など、見学不可の場合あり)
一般公開
毎月15日 10:00~18:00
講堂、会議室の一部、特別室など
休館日
毎月第4月曜日(祝日・休日のときは翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
お問い合わせ先
横浜市開港記念会館 事務室
〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町1丁目6
Tel 045-201-0708