戸塚区の住宅街の中にそそり立ち「メカメカしい何か」で支えられている巨大な板の正体は?
ココがキニナル!
戸塚区俣野町、ドリームランド前福泉寺近くに大きな「板」が民家から出ている。看板ではなく、メカメカしい何かで支えられ、宇宙基地にあってもおかしく無い雰囲気。正体は?(shi-taさん/もきゅおさん)
はまれぽ調査結果!
駐車場を経営する地主が土地の有効活用の目的で建てた、巨大なソーラーパネル。発電された電力は東京電力に売っている。
ライター:小方 サダオ
巨大な板は何のために立てられたのか?(つづき)
自動的に太陽の入射角度に合わせて調整する
巨大なパネルのため空気抵抗が大きそうな印象だ。強風などの影響で倒れることはないのだろうか? そのことに関して伺うと「支柱の下には112トンの鉄筋コンクリートが入っていて安定させているため、倒れる心配はまずありません」
支柱の下に入っている112トンの鉄筋コンクリート
「パネルの間に隙間があるため風は通り抜け、風速60メートルまでは問題ありません。それ以上の風速を感知すると、水平になって停止するようになっています。また雪が積もっても滑り落ちるため、雪の重みで倒れることもありません」
「さらに油圧式稼働のため作動音が静かです。表面はコーティングされ、反射が起こらないようになっています。しかし万が一の場合に備え、2億円の対人・対物保険には入っています」
強風対策などの対処がされている
「このあたりは谷間で、境川の支流と本流が重なる場所です。川が氾濫し、洪水する地域でもあります。しかし地上から支柱で浮いているため、水害にあって下が水浸しになってもソーラーパネルは利用できます。必要なメンテナンスとしては、年に1回ハシゴ車で高速洗浄するくらいです」
メンテナンスは年に1回の洗浄する程度だという
「現在は、パネルで発電したものを送電線で送るときに、途中で放電してしまいロスが生じます。本当は、自宅の屋根で発電してすぐに使用するタイプのように、パネルで発電したものを直接周囲の住宅に供給できると、ロスがなく、効率的なのです」
「また将来的には夜間も電力が使えるように、蓄電装置も取り入れたいと考えています」と答えてくれた。
パネルで発電された電力はボックスを通る
ボックスと電柱をつなぐ送電線
発電された電力は電柱の送電線を通じて東京電力に届けられる
ここで2回目の発電量のチェックを行った。すると「1万501円」になっていた。「1万円超えたね!」と、うれしそうな綱島さん。
さきほどは「9280円」。20分程度お話を伺っている間に、ソーラーパネルは「1221円」分稼いでくれたのだ。
太陽光発電の楽しさを味わえた気がした。
20分ほどの間に1221円相当の電力を発電した
建設当初の話を伺うと「最初はさらに5メートル四方に大きなタイプを希望していたのですが、パネルが隣の土地の上空に出てしまうのです。お隣は承知してくれたのですが、隣の土地に影ができてしまうのが気になり、現在の小さめな東芝製の市販のものにしました」
隣の土地に気を使い小さめのパネルを使用した
市販の東芝製のパネル
建設中のソーラーパネル
大掛かりな工事のようだ
当初は現在よりさらに大きなパネルを取り付ける予定だった、という
「また支柱が土地の区画に合わせて立っています。しかし真南を向いて設置してくれると都合が良かったのですが、業者が間違えたのかもしれませんね」とのこと。
支柱を真南に向けて設置したほうが効率が良かった、という
ソーラーパネルを立てるまでのいきさつに関して伺うと「私はほかの自然エネルギーにも興味を持っていました。しかし風力発電は稼働音が大きくて、水力発電は川に設置する場合、ごみなどが装置に引っかかりやすくて問題が起こるため、断念しました」
「自然エネルギーにも興味を持った理由は、以前は農家の仕事もしていたこともあり、自然が好きだからです」
ソーラーパネルの立つ駐車場の周囲には畑が広がる
「私の土地の使っていない田畑を、近所の人たちに自由に使って栽培をしてもらっています。特に年配の方たちにとっては、土地いじりや庭仕事は大切だと思います。現代社会は忙しすぎます。太陽とともに起きて太陽が沈めば仕事を終える、畑仕事などは理想的なものだと思います」
畑の向こう側にそびえるソーラーパネル
「昔このあたりは牛舎と畑で、今も畑は多いです。パネルは上にありますから、下は駐車場として活用できます。しかし直置きのソーラーパネルのタイプですと、下の土地が使えません。また農地の上に立てることもできます。影が出来てしまいますが、影は移動しますので、下の作物にも日光は当たります」
影は移動するため、下に畑があっても日光は当たる、という
自然エネルギーと対照的といえる原子力発電に関して伺うと「原発には反対です。震災時のように事故などが起こると、何もできなくなります」とのこと。
最後に自然エネルギー利用の今後について「これからは個人で太陽光発電などをはじめ『電気を売りたい』という人が増えるかもしれません。しかしその影響からか、東京電力が電力の契約値段を下げてきています」
「北海道では『電力を売りたい』というと、北海道電力が嫌がります。電力会社は太陽光エネルギーなどによる電力の受け入れの対応に苦しんでいるようです」と答えてくれた。
個人宅に設置されたソーラーパネル
取材中、散歩中の人や駐車場の利用客などに、朗らかに声をかける綱島さん。自然体で素朴な人柄を感じさせた。その人柄は自然に愛着を持つ生き方から来るものなのかもしれない。
取材時は雲一つない好天。ソーラーパネルの取材日和であったことを実感しながら、綱島さんとお別れをした。