戸塚区の住宅街の中にそそり立ち「メカメカしい何か」で支えられている巨大な板の正体は?
ココがキニナル!
戸塚区俣野町、ドリームランド前福泉寺近くに大きな「板」が民家から出ている。看板ではなく、メカメカしい何かで支えられ、宇宙基地にあってもおかしく無い雰囲気。正体は?(shi-taさん/もきゅおさん)
はまれぽ調査結果!
駐車場を経営する地主が土地の有効活用の目的で建てた、巨大なソーラーパネル。発電された電力は東京電力に売っている。
ライター:小方 サダオ
神奈川県の自然エネルギー事業について調査
綱島さんからさまざまな話を伺い、神奈川県における自然エネルギー事業の状況がキニナった。
そこで中区に事務所を置く、かながわソーラーセンターを訪れた。
かながわソーラーセンター
専門相談員の服部さんに、まずは再生可能エネルギーに対する神奈川県の施策とかながわソーラーセンターの沿革に関して伺った。
「神奈川県は、かながわスマートエネルギー計画を推進しています。この計画は、かながわスマートエネルギー構想で掲げた『原子力に過度に依存しない』『環境に配慮する』『地産地消を推進する』という3つの原則を基にした計画です」
「かながわソーラーセンターはその施策の一つとして、太陽光発電の普及を目的とし、県民の皆様に太陽光発電設備を安心して設置していただくために、2011(平成23)年12月に神奈川県が開設した相談支援窓口です」
かながわスマートエネルギー計画
「当センターでは、太陽光発電の設置に関するご質問やご相談を受け付けるとともに『かながわソーラーバンクシステム』に登録された設置プランへの見積り申し込みも受け付けています」
「『かながわソーラーバンクシステム』とは、太陽光発電設備をリーズナブルな価格で安心して設置していただくため、神奈川県とソーラーパネルメーカー・販売店・施工業者などが協力。一定の要件を充たす太陽光発電設備の設置プランを登録し、当センターで紹介する取り組みです。2014(平成26)年度は、4タイプ39プランの登録がありました」
「各プランには、使用するパネルメーカーや、サービス内容、価格などの違いや特長があります。当センターでは、設置を希望する屋根の大きさや形状、素材、設置者の条件や希望などを伺い、ニーズに合った設置プランを紹介するなど、細かいフォローを行っています」とのこと。
さまざまなメーカーや施工業者のパンフレット
スマートエネルギーによるコミュニティがシステムで管理されている
再生可能エネルギーの普及促進は現在注目されている施策なのでは? と伺うと「県民の方々の関心は高いです。特に開設直後は、東日本大震災に伴う原発事故や計画停電から時間が経っていなかったこともあり、お問い合わせも多かったです。太陽光発電は、日中は独立電源として使用できますし、蓄電池と併用すれば夜間も電力を使用できるため災害時には有効です」
「現在は、HEMS機器(家庭内のエネルギーの利用状況を『見える化』したり、家電機器を自動制御したりして、エネルギーを効率的に使用するための管理システム)とセットとして設置される方も多くいます。太陽光発電で電気を作り、消費電力をHEMS機器で確認し省エネに努めるという家庭が増えています。県の2014(平成26)年度の補助金も、HEMS機器と太陽光発電設備などを併せて設置する場合が補助対象となっていました」
太陽光発電システムの例
「また、神奈川県では、新たなビジネスモデルとして『「屋根貸し」等マッチング事業』に取り組んでいます。民間企業の工場などの屋根や土地、個人が所有する住宅の屋根や土地を太陽光発電事業のために発電事業者に貸すというもので、県では発電事業者を募集し、その情報をホームページで公開します」とのこと。
一般的な太陽光発電システムの利用方法について伺うと「売電をされる方がほとんどです。一般住宅ですと、平均約3~4kw程度の発電容量の設備を設置される方が多く、この場合『固定価格買取制度』(再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度)の余剰買取方式が適用されます。これは、10kw未満の設備によって発電した電力を自宅で優先的に消費し、余った電力を電力会社に10年間買い取ってもらうものです」
神奈川県では太陽光発電によるさまざまなビジネスモデルを考えている
「これに対し、10kw以上の太陽光発電設備は、全量買取方式が適用されます。発電した電力の全てを20年間電力会社に売ることができ、多くの発電事業者がこの制度を利用しています。また蓄電池を設置し、必要に応じて独立電源として使用することもできます」とのこと。
綱島さんのパネルについて伺うと「綱島さんの設備の場合、追尾型システムを採用しているということですが、これは太陽電池が、常に太陽のある方角に向きを変えるというものです。太陽電池は、太陽と正対するのが最もエネルギーを効率的に利用できる設置角度なので、このタイプは発電に効果的です」
地上設置型のソーラーパネル
追尾型パネルタイプ
追尾型パネルタイプは狭い土地での設置に効果的だ
これから注目される太陽光発電の技術などに関して伺うと「太陽光発電は、技術の進歩と普及が進み、価格も数年前とくらべてかなり安くなりました」
メーカーの努力もあり価格が安くなった
「また神奈川県では、現在薄くて軽い薄膜(はくまく)太陽電池の普及拡大に力を入れています。壁面や法面(のりめん:人工的な傾斜面)、遮光用ブラインドとしての活用など多岐にわたる用途が考えられますので、県では、そうした用途の開発や価格の低下を促進するプロジェクトを公募し、実施する事業者に対して支援を行っています」と答えてくれた。
メーカー各社の技術の進歩が進んでいる
綱島さんから伺った「電力会社による再生可能エネルギー等の受け入れ」の話に関して伺うと
「2014(平成26)年の9月、大手電力会社5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)が、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対する回答を保留するなどと発表しました」
「その理由は『固定価格買取制度』における設備認定を受けた発電設備をすべて系統(受電設備に供給するための統合的システム)に接続した場合、管内の電力の需要量を上回ってしまい、電力の安定供給に支障が生じてしまうということです。また東京電力管内の一部地域でも、接続申込みに対して送電線の空き容量が不足しているため、連系制約が生じているところがあります」
「しかしながら、神奈川県内では電力消費量が多く、電力系統の容量も大きいため、再生可能エネルギー発電設備で発電した電力を受け入れる余地はまだ十分あります」とのこと。
神奈川県内の再生可能エネルギーによる発電量の目標を示す図
再生可能エネルギー事業の今後の動きに関して伺うと「2016年から、電力の小売りが全面自由化されます。さまざまな事業者が参入し、その中には太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる事業者も含まれることになります。消費者が好みに応じてエネルギー資源を選択することが可能になるのです」
「ここにきて、再生可能エネルギーをビジネスとして結びつけるばかりではなくなっているようです。『固定価格買取制度』の開始当初は、投資目的でメガソーラーなどの設置を考える商社などがありましたが、状況は変わってきました。売電事業で利益を得るということより、環境に配慮したクリーンなエネルギーを有効に活用していこうという、原点に立ち返る動きになっています」
発電システムの周辺で消費される、エネルギーの地産地消が広まっている
「電気利用者が電気事業者を広く選択できるようになることで、各地域で作られた再生可能エネルギーをその地域で利用することも可能となります。また電力の消費地の近くで太陽光発電などの分散型電源を導入する『エネルギーの地産地消』も広まりつつあります」
「当センターに相談が多く寄せられたのも、震災後の再生可能エネルギーによる未来への希望に期待したからです。そのときにはビジネスとしての利益を考えている人は少なかったでしょう。
最近では、そのころの初心に立ち返る気持ちを持つ人が多くなっています」と答えてくれた。
イベントなどで使用される小型の太陽光パネル
取材を終えて
原発事故の影響で今注目されている再生可能エネルギーは、その活用により将来の地球環境が良くなるという希望をもたらすもので、そのエネルギーを利用することによる効率性や経済的な利益を考えすぎるのは、本末転倒なのかもしれない。
綱島さんのような畑の中に立つソーラーパネルの姿は、将来の自然の風景として当たり前のものとなるのではないだろうか。同じ太陽の恵みを受けている、メカメカしいソーラーパネルと鮮やかな色の野菜が実る畑とが、妙にマッチしているように感じた。
周囲を畑に囲まれたソーラーパネル
―終わり―
かながわソーラーセンター
http://kanagawasolarcenter.com/
たかにゃんさん
2015年06月17日 01時24分
このような小さな発電所が地区ごとに造られれば、大規模な原発などは必要なくなると思います。個人的にはゴミの焼却所での発電をもっと増やしてほしい。家を建てたら太陽光発電してみたいなぁ。
shi-taさん
2015年06月16日 20時20分
取材、ありがとうございます。スッキリしました。風のことなど思った以上にしっかり考えて作ってあり、感心しました。特に、平地の駐車場の上というのがいいですね。平地の駐車場は夏には日陰が無くて車内がサウナになってしまいますが、あの日陰なら大分マシではないでしょうか。他の駐車場にもお勧めしたい(設置代以外は)。お疲れ様でした。
マッサンさん
2015年06月14日 10時54分
堂々たるソーラーパネルですね。我が家にもあったらいいな。と思いました。が、これと同型のモノは縦にしても横にしても斜めにしても我が家には収まりません。 電気を作って、自分で使って、余ったら電力会社に売っての"電気の自給自足" はユメのまたユメですね。