検索ボタン

検索

横浜のキニナル情報が見つかる! はまれぽ.com

階段だらけの江の島、エスカー利用できない車椅子の人は頂上まで行くにはどうすればいい?

ココがキニナル!

車椅子で江ノ島頂上の江の島シーキャンドルに行こうとしましたがエスカーの利用を断られました。しかし帰りがけ郵便局のバイクとすれ違いました。バイクでどこまで登れる?(町田に住んでますさん)

はまれぽ調査結果!

バイクは入り口付近のみ通行可能。江の島シーキャンドルには階段かエスカーを利用。車椅子でエスカーは乗れないが、適切な介助があれば階段で上れる。

  • LINE
  • はてな

ライター:松崎 辰彦

江の島のバリアフリー化は難しい



「エスカーが車椅子禁止なのは安全上やむを得ないことだと思います。また江の島全体をバリアフリー化するのも難しい状況です」

車椅子で江の島シーキャンドルに上るのは不可能なのか?──藤沢市経済部観光課の齋藤拓也(さいとう・たくや)課長に伺ったところ、こうした回答が得られた。
 


齋藤拓也課長


“江の島を車椅子で散策したい”という声は以前からたびたび聞かれるとのことで、江ノ島電鉄との間でもよく話題にのぼるのだとか。かといってバリアフリー化も難しく、そうした状況をご理解願うしかない、との説明であった。
 


地図で説明される


「ただ、車椅子の方をまったく受け入れられないかというとそうではなく、年に1回ほど、藤沢湘南ライオンズクラブの主催で、車椅子の方を江の島シーキャンドルにご招待するという企画が持たれています」
有志のボランティアの方々と、ハンディのある方々が、江の島での交流を楽しんでいるとのことである。

「このときはエスカーではなく車両を使い、神社近くの道路を通り、江島神社の庭を許可をいただいて通過させていただき、江の島シーキャンドルまでお連れしています。あらかじめすべりやすい枯れ草など危険なものを清掃し排除してから、車椅子1台にボランティア2名が付き添うという体制で、安全性に気をつけて皆さん移動されています」
 


神社近くの道路
 

江島神社内を通る道


入念な事前準備と神社の協力が必要なので、これは特別なイベントとして開催するしかない。

しかし、江の島シーキャンドルに上り、最上階から周囲の風景を一望された車椅子の皆さんは感激の声を上げられるとのことで、体が不自由な方にも江の島を楽しんでいただきたい、何か方法はないものか──という気持ちは藤沢市側も江ノ島電鉄側も等しく持っている。
 


江の島シーキャンドル内の室内展望台
 

多くの人が風景を楽しむ
 

屋外展望台も人気がある


「ただ何といっても地形上、江の島のバリアフリー化は困難です。景観を保存したままでエスカーの幅を広げるのは、ほぼ不可能です」
エスカーは上りばかりで、下りは自力で降りなければならない。ここにも車椅子を阻む大きな壁がある。
 


4本目エスカー出口
 

エスカーに「下り」はない


厳粛な事実として江の島のバリアフリー化は極めて困難と言わざるを得ず、理解を願うしかないようである。

「江の島の奥まった所だけではなく、仲見世通りや周辺地域にも眼を向けていただければと思います。江の島には入り口付近にもさまざまなお店があります。平坦地で開放的な入り口付近のお店は、江の島内部の店舗に負けず劣らず個性的で楽しく、車椅子の方々を歓迎し、お越しをお待ちしています」と齋藤課長。
 


江の島入り口付近
 

多くの人が行き交う
 

仲見世通りは車椅子でも支障がない


投稿にあった「バイクでどこまで登れるのでしょうか?」という問いに対しては「バイクが通行できるのは坂道である入り口付近だけです。しかし年間を通して人通りが多く、住民の方や業務関連の方のみが使われます」とのことだった。
 


休日の江の島。たしかにバイクは不適当だ
 

通行する数少ないバイクも業務関連




正しい知識があれば生活環境が広がる



車椅子で江の島シーキャンドルまで上ることは不可能なのか?──
「それは可能です!」と言いきる人たちがいる。
ここに江の島シーキャンドルまで車椅子で上ったグループの記録がある。横浜市泉区にある株式会社NGUが運営する「生活維持向上倶楽部『扉』」のメンバーが車椅子の女性を伴って、江の島シーキャンドルまで観光を楽しんだことが、同社のホームページに掲載されている。
 


泉区にある株式会社NGU


「株式会社NGU」は小規模の通所介護サポート事業所。代表の山出貴宏(やまで・たかひろ)さんは介護技術や認知症ケアの介護講師として、多くの人に介護に必要な知識と技術、心構えを伝えている。
 


部屋には「闘魂」の文字が
 

周りから「闘魂介護士」と呼ばれる代表の山出さん


「病気になったり、障がいを持ったりしたら外に出られないという考え方は間違っている。正しい知識と技術があれば生活環境が広がりますよ・・・ということをお伝えしています」
2013(平成25)年に会社スタッフの母親を、スタッフ研修も兼ねて社員数人で江の島シーキャンドルまで介助して同行し、大いに観光を楽しんだことを公表している。
 


江島神社内で銭洗い(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)
 

頂上到着(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)
 

江の島サムエル・コッキング苑内は平坦で動きやすい
(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)
 

江の島シーキャンドルの室内展望台(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)
 

屋外展望台に出て(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)
 

最後に記念写真(画像提供:株式会社NGU 介護研修「ステップ」)


当初、この女性は車椅子による江の島観光を別の知り合いの介護士に相談したところ「無理だ」と即座に断定されたとのこと。行くとしたら「おんぶ」か「抱っこ」だとも言われたという。

「大の大人の女性が見ず知らずの男におんぶや抱っこ? その人の尊厳はどこにあるんですか! その後、その方は私と知り合ったのですが、話を聞いた私は『行けるよ』と即答しました。じゃあ実行しようか、と」
かくして女性4人(うち当事者1人)、男性1人の車椅子による江の島観光が実施された(山出さんいわく「スタッフ研修のため同行者が多くなった。通常ならサポート2~3人でOKです」とのこと)。