洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 真金町「狐狸庵」編
ココがキニナル!
横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第6回は、本当にコックの仕事が好きな真金町「狐狸庵」店主、白石功(しらいし・こう)さん。
ライター:クドー・シュンサク
珠玉のデミグラスソース
コック宝推薦、「狐狸庵」の味、まずはこちらから。
ハンバーグステーキオールドスタイル(1000円:ライスまたはパン付)
ふっくら、それでいて上品かつジューシーなハンバーグに秘伝のデミグラスソースが濃厚にからむ。バターのコクとフライドオニオンの香ばしさと甘みが口の中で絶妙な味としてひとつになる。これ、これが食べたかった。ライスがぐんぐんすすむ。
なんといっても、このデミグラスソースが絶品。その奥深さに笑顔がこぼれる。
続いてコック宝渾身の一品、シーフードのテリーヌ(650円)と
魚介類のクレープ包みグラタン(1800円)
テリーヌ。テリーヌって、こんなに美味しかったんだなと、感服。自家製のクリームソースも爽やかに絶品。
そしてグラタン。エビ・カニ・ホタテにムール貝を贅沢にあしらったホワイトソースのグラタンをクレープで包み焼きあげる。魚介の旨みとコクがまろやかなホワイトソースと相まる。至福の味、魚介類のクレープ包みグラタン。下に敷かれたリングイネのパスタも相性抜群で美味い、美味い、美味い。
「狐狸庵」の味、絶品です。
コック宝は食事としばしの休息をとり
仕込みを再開
あっという間に時間が過ぎ。
17時半、夜の営業時間に
厨房では静かにデミグラスソースに手を加えるコック宝
「約2ヶ月の間、じっくり育ててきたデミグラスソースです。明日、仕上げて料理に出し始めるんです」と、ゆっくりデミグラスソースを混ぜながらほくそ笑むコック宝。
ここで夜の時間のお客さんがやってきた。それがなんと偶然に。
コック宝の娘さん家族がやってきた
たまに、ここのハンバーグが食べたくなって、家族でやってくるというコック宝の娘さん家族。孫が自身のハンバーグを食べることについて「これもうれしいことですし、こうやって孫の顔が見られるのも店をやり続けて良かったと思う瞬間ですよね」とコック宝。
どこまでも、コック冥利に尽きると、笑顔で話していた。
コック宝自ら料理を運ぶ
お孫さんの「おいしい」という言葉に顔がくしゃくしゃになるコック宝。
とてもいいもの、見させていただきました。
厨房に戻り
命のデミグラスソースの仕上げにかかる
香味野菜、ニンニクやタマネギを炒め鍋へ。ニンジンとトマトペーストを一緒に炒めるのは「トマトを火に当てすぎると旨みまで飛んでしまうので、かたいニンジンと一緒に炒めてそれを防ぐ。タマネギやセロリだと火が通ってやわらかくなると、その役割ができないのでニンジンと一緒にトマトは炒める」
美味しい、そしてお客さんの笑顔につながるひと工夫。
20時をまわり、営業時間が終わりになるころ
じっくり育てたデミグラスソースを
丁寧に
濾(こ)す
約2ヶ月間、何10kgもの牛のスジ肉やスネ肉を煮込み、香味野菜とともにさらに煮込む。
それを濾す。さらに材料を足して足して煮込み、それを濾す。材料の旨みが鍋に行きわたると濾す。さらに足して濾す。それを約2ヶ月間繰り返し完成する、狐狸庵の命、デミグラスソース。
静かに最後の濾しを終え
完成
コック宝は「時間もコストも精神も、ここに一番注いでいます。これがウチの味なんでね。明日、最後の仕上げをして、お客さんに出すんです」とのこと。
「お客さんの『ごちそうさま』の笑顔が見たくてね」
21時過ぎ、静かに「狐狸庵」の1日が終わる
コック宝いわく「辞めたいと思ったこと? ないな。これからも辞める気はさらさらないんですよ。生涯現役で、洋食を作るつもりですから」。
横浜コック宝第6号「狐狸庵」白石功さん
ここに認定いたします。
最高の味と心意気
南区真金町にひっそり佇む名店の味。
横浜が誇る、笑顔になれる味でした。
取材を終えて
「ただ本当に、この仕事が、コックの仕事が好きなんです。それだけです」。
白石功(1955~)
―終わり―
狐狸庵
住所/横浜市南区真金町2-17-3
電話/045-252-7752
営業時間/11:30~15:00、17:00~22:00
定休日/日曜
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静口 箏さん
2015年10月10日 19時45分
次は「洗濯船」もお願いします!
マッサンさん
2015年10月06日 09時03分
洋食「狐狸庵」。白石さん「ただ本当に、この仕事が、コックの仕事が好きなんです。それだけです。」 わたくしの心の琴線(きんせん)にふれました。名言だと思います。
Mですさん
2015年09月30日 23時24分
初めて横浜に来て、連れて行ってもらったのが狐狸庵でした。20年ぶりに間違えて降りた阪東橋で、何となく歩いていて見つけたお店のハンバーグを一口食べて、そこが狐狸庵だと思い出しました。記憶に残る美味しい洋食を作り続けてください。