マニアックな城郭のジオラマを制作する綱島の「お城ジオラマ復元堂」とは?
ココがキニナル!
パートナー産業株式会社がやってる「お城ジオラマ復元堂」がキニナル。これまで長篠城、高天神城のジオラマ模型を制作していて、第三弾も企画しているとか!調査を!(信(しん)さん)
はまれぽ調査結果!
お城ジオラマ復元堂のジオラマは「地形」と「歴史」にこだわった作品。長篠城、高天神城に続き上田城と竹田城の発売を企画中
ライター:人見 静馬
城郭復元マイスターとは何ぞ(つづき)
2005(平成17)年に父親の後を継ぐ形でパートナー産業株式会社の社長に就任した二宮氏だったが、落ち着く間もなくリーマン・ショックを目の当たりにし、決断を迫られることになったそうである。すなわち、このまま下請けの仕事だけでやっていくのか、あるいはリスクを取って自社で何か作るのか。
社長・二宮博志が選んだのは後者だった。
思想のフットワークが軽い、そういった印象である
お城ジオラマは道楽ではなく、この不安定な社会で会社を守るために開発された純然たる商品だったのである。そうして2013(平成25)年、1作目の長篠城(現在の愛知県新城市)が誕生した。
お城ジオラマに辿りつくまでには紆余曲折があったという。お金を稼ぐ為にはどんな商品が良いのか思い悩んだことも1度や2度ではないらしい。しかし、結局確固たる芯のない企画は道半ばでフラフラとその方向性を変えてしまう。ならば好きな物に力を注ごうということで、二宮氏が好きな「城」を企画の中心に据えることとなったのだという。
お城ジオラマの前にはキャラクター開発などもしていたそうである
ゆるくないキャラ、マーメイドのマメドちゃん
マーメイドと豆と大豆戸町。うむ
お城ジオラマ
さて、お城ジオラマを改めて見せていただこう。1作目は長篠城、2作目は高天神城(たかてんじんじょう/静岡県掛川市)と、メジャーとはいえない城選びであるが、これは何か明確な基準で選んでいるわけではないとのこと。ご自身の好みだという。
ということは、これからの要望次第でどんな城でも再現される可能性があるのだ。
重厚なパッケージ
長篠城、現物(1万2960円)。ちなみに実寸の1500分の1。A4サイズ
こちらは高天神城(1万4580円)
おおッ! と驚いたその一瞬後に違和感。城って、筆者のイメージは
コレである
確かにこの模型は物凄い細さなのだが・・・
0058 柵には0.3mm間で穴が開いている
大体の方が想像しているであろう城とはほんのちょっと違う。これは城というより地形のジオラマではないか? あの、入り口のところに飾られていた。そういった筆者に対して、二宮氏は我が意を得たりといった顔。
そもそも、我々が思い込んでいるいわゆる城というのは天守という部分であって、それは
城を構成しているパーツのひとつに過ぎないのだという。城とは、ほかにもさまざまな要素で構成されている物らしい。
つまりお城ジオラマシリーズは、地形までも含めた総体としての城を模型化した物なのだ。なるほど、これは新しい! ありそうでなかった着眼点。小学5年から筋金入りの城好きだという二宮氏ならではである。
そういわれて改めてジオラマを見ていると、城を取り巻くストーリーまで見えてくる気がする。
水に囲まれている城を攻めるのは難しい
この激しい高低差では、攻めくる敵は飛んで火に入る夏の虫である
ジオラマには、そういったことを解説したムック本もつく
地形に建物と驚くべき再現度であるが、これは綿密な取材に基づいているという。
城郭研究家の藤井尚夫(ふじい・ひさお)氏と実際に現地まで赴き、地形を観察し、変わってしまった地形を考慮して資料と突き合わせ、当時の姿を推測・再現するのだ。
ただどこかにある資料から漠然と形を取ってなんとなく再現するわけではないのである。
自ら「城郭復元マイスター」と名乗るだけはある!
ちなみに、持ち帰ったデータは2人の職人によって3Dデータ化される。
地形担当の細野勇太氏
建物担当の椛沢毅彦(かばさわ・たけひこ)氏
もちろん、それらデータは単純にそのまま3D化すれば良いという話ではない。1500分の1の縮尺でもきちんと成立するように、ある時はデフォルメを施し、ある時はバッサリと省略せねばならないのだ。
このジオラマ制作に楽な作業はひとつもない!
そんな彼らは今、天空の城と名高い兵庫県朝来市の竹田城と、長野県上田市の上田城へ取り組んでいる。
上田城の試作品。上田城は本丸のみのミニサイズ
こうしたジオラマは同社ホームページやアマゾンなどのインターネット上で購入できる。
竹田城のできはどうか、上田城はどういった形でリリースされるのか、そして今後はどういった城が選ばれるのか。先行きが実に楽しみである。
取材を終えて
お城ジオラマ復元堂の商品には、0.3mm間で穴を開けたりあらかじめ塗装を施していたりと、非常に強いこだわりが散見された。原価が跳ね上がるにもかかわらずである。
二宮氏は、ユーザーのことを考えてそういったところにこだわったと言った。それはもちろん嘘ではないだろうが、それと同等にご自分の美意識として譲れない部分があったであろうことは十分察せられた。
ちなみに、特装版には、長篠城に古地図、高天神城には漫画家・宮下英樹氏作のポスターと小和田哲男氏が書いた「別冊人物伝」が付く。
こちらは原画
現在、お城ジオラマ復元堂は、会社の売上の柱になるまで成長したというわけではないとのことである。だが熱狂的なファンを獲得しており、中には静岡からパートナー産業株式会社を訪ねてきた方もおられたとか。それは偏に、こうした手を抜かない姿勢の賜物なのだろう。
好きは上手の元、ならぬ、好きはサービス向上の元というわけだ。
こうした姿勢を貫いている限り、お城ジオラマ復元堂が世を席巻するのはそう先のことではないはずである。
―終わり―
お城ジオラマ復元堂
http://joukaku-fukugen.com
ushinさん
2015年11月22日 23時43分
城のプラモデルなら有名どころのものが出ていたが、貴重なのは地形込みの造形というところが素敵だ・・・と、鉄道模型レイアウト(ジオラマ)の作り手が共感してみる。
あいころちゃんさん
2015年11月21日 03時14分
こうして手を抜かずに顧客思考で頑張っている会社は応援したいです。特装番も本当にすごい。
マッサンさん
2015年11月20日 12時59分
ジオラマって男の子は好きだね。そうそう親父も好きだ。