【横浜の名建築】重要文化財 外交官の家・旧内田定槌邸
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第11回は、イタリア山庭園にある『外交官の家・旧内田定槌邸』 。華やかで重厚なイメージと、繊細でやさしい気持ちのこもった建物でした。
ライター:吉澤 由美子
重厚で華麗な内装にひそむ繊細なディティール
(続き)
玄関ホールに入ると、右に応接室として使われた大客間と、くつろげる雰囲気の小客間があり、小客間は外周をサンルームが囲む。
大客間は、暖炉や窓が外に張り出しており、厳めしいイメージ
壁には陽子夫人の肖像画もある。
小客間は食事前のウェイティングルームや食後のひとときのための部屋
サンルームは、雨が多い日本の気候に合わせて全面にガラス窓がはまっている。
八角形の塔屋の1階にあたる
サンルームは室内とみなされないのか、小客間の窓の鎧戸が中にある
窓の下にある腰板は左右に可動し、換気できるようになっている。
これは、日本家屋によく見られる無双窓(むそうまど)と呼ばれる仕掛け。
右が閉じた状態、左が開けた状態。開口部もデザインされている
小客間の隣は、格式の高いダイニング。
こちらの腰板は客間に比べて高く、重厚さがより強調されている
窓や暖炉などの張り出しを囲むカーブや柱の彫刻も美しい。
この邸には、各部屋に暖炉がある。
それぞれ、タイルやグリル、上部の棚といった部分の意匠を変えてあるので、見比べてみるのも面白い。
小客間はドラマティックな彫刻と気品のあるタイル
ダイニングは、繊細なグリルと優美な模様のタイル
薪を燃やすのではなく、ラジエーター式のガスストーブがはめこまれているが、団らんの象徴である暖炉の意匠を残し、リラックスできる空間を作り上げている。
1階は細かな意匠を見ていく楽しみも多い。
凝った彫刻がほどこされたドアノブ
繰り返し使われているハート型(スペード型)の意匠は意外な場所にも隠れている。
2階は暮らしやすそうなプライベート空間
玄関ホールには2階への階段がある。ゆったりした広い階段にもハート型の意匠がある。
階段の窓は高さを変えたものが3つ連なる
上がってすぐの小部屋は、内田定槌の息子さんの部屋だった。
2階はどの部屋にもたっぷりした収納スペースがある
正面には内田定槌が執務に使った書斎。
書斎のドアを開けた先にアーチがあって、その先にデスク
外交上の問題をここで熟考したのだろうか