3.11の震災で横浜のどこが沈下したの?
ココがキニナル!
3.11の地震で臨港パークがだいぶ地盤沈下していますが、どのくらい沈下したのか調べられますか?その他、市内でどこが地盤沈下したのでしょうか?(こたきちさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
横浜市では沈下を測量していないため、目分量でしかわかりません。局地的に沈下した箇所はいくつかありますが、横浜市全体も沈んでいました。
ライター:吉岡 まちこ
液状化、沈下、隆起…が起こった場所
市民が住む場所の被害はどうだったのだろう? 各区の歩道・道路の修復状況をまとめて把握しているはずの道路局維持課に尋ねた。が、「公表できるものはない」の一点張り。
しかたなく18区すべての土木事務所に、工事内容を電話で聞いてみることに。
その結果は――
◆泉区・瀬谷区・青葉区・旭区・戸塚区・保土ヶ谷区・緑区・磯子区・鶴見区・港南区・栄区:「被害は何もなかった」または「目立った修復工事はなかった」という回答
◆都筑区:鶴見川沿いの工場横の道が陥没
◆南区:鎌倉街道の中区寄りの一帯で歩道の縁石が凸凹に
◆神奈川区:ポートサイドエリアで歩道のタイルの乱れ。マンション周辺の沈下
◆西区:ダイエー付近のひび割れ。マリノスタウンの歩道が凸凹に
いずれも液状化によるものではなく、振動でアスファルト下の土砂に空洞ができ沈下したもの。
一方、国土交通省・関東地方整備局が取りまとめた報告書で、液状化が起こったポイントと指摘されたのは神奈川県内では3ヶ所。(報告書はこちら)
土木事務所の説明によるその3ヶ所の状況は、
◆港北区:液状化が予想されていなかった旧沼地の小机の宅地で、建物等の傾き。液状化により沈下
◆中区:本牧で噴砂、水道管の断絶。(関内、中華街は液状化ではないひび割れ、陥没などを散見)
◆金沢区:柴町および福浦に大きな沈下や隆起
実際に、2月末、八景島の橋の手前をひと巡りしたが、協議中の民間の土地の修復はまだだった。
液状化で波打った道路。マンホール以外の路面が沈下し、段差を修復した跡が
マンションは杭に乗っているので動かなかったが、周りの地盤が約30㎝沈下
地下にあって見えないはずの基礎が露出したまま
しかし、被害がごく限られた範囲に集中しているのは、なぜだろう?
国土交通省の調査も手がける、関東学院大学工学部の地盤防災工学研究室・規矩大義(きくひろよし)教授に聞いた。
「どこも同じ材料で埋め立てているので、旧地形との関連があるのではと指摘されています。また地元の漁業関係者の話だとこのあたりは2~300m沖合だったようで、海の底は沖合に行くほど柔らかい堆積層が深いことが調査でわかっています。ただ埋め立て後、地中に深い杭が打たれていた建造物はどこも傾きもなく無事でした」(規矩教授)
生活する場ではないので杭を打たなかった立体駐車場や管理棟は、逆に浮き上がってしまったのだ。
地震後に地表面が水のようになり、杭が打たれていなかったこの立体駐車場は、浮かんで1m以上も隆起してしまった
一部が持ち上がった歩道や植栽を散見
民地なので住空間以外は、住人が自費でどこまで補修するか協議中のためそのまま
規矩教授は「今回の震災について、横浜市は情報を出そうとしないんですよねー。市に責任が及ぶのを避けているかのように見えます。逆に県が調査して市に教えるケースも多いんです」と結んだ。
しかし、横浜全体は大きく沈んでいた…
その中で比較的情報をくれたのが横浜市環境創造局・環境保全部だった。
大気汚染・水質調査・地質調査等の一環で、水・土環境課が地盤の沈下調査を行なっている。
地盤の沈下と言っても、本来、地下水の過剰なくみ上げによる公害としての地盤沈下が対象だ。
地盤が昔から弱いとされる市内の約350ヶ所に水準点を置き、毎年冬季に調査し8月に公表。
ふ頭や金沢区の被害地点を含む新しい埋立地は、自然に沈下する場所なので監視されていない。
市内約350ヶ所でどれくらい沈下・隆起したかわかる。現在閲覧できるのは震災前の数値
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/data/suijun/
水準点の場所は、このページの赤い文字「行政名一覧から検索」から見ることができ、さらに前年度からの沈下・隆起の推移がわかる。
「8月の発表では、地下水による沈下と地震による沈下は区別なく客観的な数値に表れます。でも、国土地理院の日本水準原点が24mm下がったのだから、横浜でもどこもそれ以上に下がっているでしょう」と担当者。動くことはないとされていた地図測量の高さの原点が動いたのは、関東大震災以来だそうだ。
今回の震災では、柔らかい地盤のさらに下方にある何百万年前の強固な基盤がそっくり下がる地殻変動が起こったという。
千代田区永田町、国会前庭内の憲政記念館にある「日本水準点」
(国土地理院HPより転用許可済)
臨港パークは環境創造局の測量対象外だが、国土地理院の水準点のどれかで計測があったかもしれない、と国土地理院・関東地方測量部の存在を教えてくださった。
さっそく国土地理院で、東日本大震災でどのくらい沈んだかがわかるページを教わった。
「東日本大震災に関する情報提供」(ページはこちら)から「地殻変動」→「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動量(上下方向)」をクリックして入る。
国土地理院HPで、横浜市内約40ヶ所ほか東北~神奈川の沈下量がわかる
南下するほど沈下量が増える傾向のようだ。磯子区5㎝、逗子市7cmといった具合。
これだけ沈めば、どこも波打ち際は、随分と内側に入り、砂浜は狭くなってきただろう。
取材を終えて
最後にちょっと衝撃の結果を知ったが、あらためて東日本大震災の怖さを知った。
道路や港湾といった瑕疵(かし)がらみの局に先に聞いたことが悔やまれるが、対応に追われ調査どころではなかったということ、そしてもともと埋立地は沈下しているのだから、測量しても意味がないということがわかった。
ご参考までに、ご自身の近所の地盤を知るには、横浜市の公共事業でボーリング調査した結果を蓄積した「地盤View」を見るという方法もある。国土地理院HPで臨港パークの沈下量はわからなかったが、護岸部が脆弱だった故だとよくわかる。
− 終わり −
いちろうさん
2012年03月12日 11時57分
ふだんから地震にたいする備えや考えを持つことは必要だと思います。僕も阪神淡路大震災の時、地震の真っただ中にいました。今回の東日本大震災でも私の職場の方の中にはご実家を流され、ご親族を無くされた方もいらっしゃいます。日頃から地震が起こったときにどんな行動をすればよいのか考えていく必要があると思います。阪神淡路大震災の時に思いました。何もない平穏な日々が人生でどんなに大切なことであるかを…、家族や親しい人と一緒に過ごせることがどんなに大切なことであるかを…
くてくてさん
2012年03月11日 13時53分
各資料のURLがあって助かります。今後も参考になります。
MATUさん
2012年03月11日 11時33分
臨港パークの地盤沈下は尋常じゃないです。あんな遊歩道が水没しているとこ見たことありませんでした。。地質調査の方のお話だとやはり地盤は緩いみたいです。。やはり地名に海に関する漢字が含まれているところは地盤が緩いんですかね。。