【正月特別企画】午年に別れを告げ、羊になって横浜市内の名所を歩く! 明けましておメーでとうございます
ココがキニナル!
2013年の有馬記念で惨敗した白馬が馬車道に舞い戻り、DIY羊を作り動物園、ジンギスカン、年越しそば、初日の出、書き初めと横浜でめでたいことづくし
ライター:永田 ミナミ
いざ羊
やがて、「ほのぼの広場」が見えてきた。ついに馬と羊の対面だな、と思って馬のほうを見ると、饒舌だった馬の表情もどことなく寂しげに見えた。
「お、馬だ馬だ」と元気な素振りを見せるかわいいところもある馬であった
手前のポニーが食欲旺盛なキャンディ、奥のポニーが金沢動物園の駿馬カリン
とはいえ羊の姿を見つけると、馬は「おお、羊たちだ」と言って嬉しそうに駆け寄った。
なるほど、これが本物のふもふも感か
やあ、かわいいなあ。この愛くるしさは馬にはない魅力だな、ふむふむ
と羊のキュートさ観察していると、職員の森角(もりかく)さんがやってきてくれた。そして「ちょっと待っててくださいね」と柵のなかへ。
森角さんが近づくと嬉しそうに歩み寄る羊のかわいさ
そしてミニブタたちと戯れながら柵から出てくる羊のかわいさ
そして森角さんを見つめる羊の無垢な眼差しに心打たれ馬は胸がいっぱいに
今回、馬のためにやってきてくれたのは、2013(平成25)年2月28日に伊香保グリーン牧場で生まれたツクシ。鼻先や目のまわりがピンクで、おっとりした性格が特徴のまだ1歳10ヶ月のガール羊である。
やあ、今日は本当にありがとうね、とすっかりツクシに夢中の馬
森角さんから餌をもらい、ツクシと友達になりたい馬
ああ、かわいいなあ、かわいいなあ。ふもふも、ふもふも
干支としての心得を学びにきたのをもはや忘れているかもしれないぞと思いながら、それでも頬を緩めてツクシと戯れる馬を見ていると何も言えずにいたが、しばらくすると馬はすっくと立ち上がった。
そして振り返るとにっこりと笑って「そろそろ準備ができたよ。君と会えて楽しかった。また12年後に会えるといいね」と言い、顔に前足を伸ばした。
それは一瞬の出来事だった
さよならを言う間もなく
馬は羊になった
はじめまして、ツクシ。明日から1年、しっかり羊を務めるよ
さあ、君ともう少し一緒にいたいけど、僕はそろそろ行かなきゃ
そう言って立ち上がると、羊は硯と半紙と墨汁が用意されたテーブルに向かい、筆を握った。
まずは挨拶代わりに・・・あ、12年ぶりに書くとペース配分が
と言い訳する羊は、ツクシに見守られながらスペースにいろいろ書き足して
自己紹介がてら、明日の書き初めのための試し書きで交替完了
羊らしくあるための「いろは」を教えてくれたツクシと森角さんにお礼を言い、独り歩きしはじめた羊は、まずは意識の奥底に眠る馬の記憶に導かれて、アメリカ区へと足を向けた。
ありがとうツクシ。ありがとうございました森角さん
そして特別にはからってくださった管理係広報担当高橋さん、ありがとうございました
何だかこっちに会いたい動物が待っているような気がするな
歩いていくと、再びアメリカ区にやってきた。そしてさっきは遠くから挨拶をしただけだったオオツノヒツジと再会。今回は間近に迫れる観察台からちゃんと挨拶をすることに。
「オスの角は左右合わせて6kgもあるんだって。立派だね」と手を振る羊
羊毛を刈り取るために品種改良された僕と違って、ワイルドで精悍だなあ
羊ならではの共通する話題でしばらく盛り上がったあと、オオツノヒツジから「羊の代表としてしっかりね」とエールを受けた羊は、しっかりとうなずいた。
そのあと歩みを進めていくと、再び「しいの木山展望台」が見えてきた。そういえば、とリュックの中を探ると、馬からの手土産が入っていた。
ありがとう、馬
そして、展望台の上にのぼると、羊はベンチに座って「いなかイモ羊かん」を堪能した。
わあ、このほくほく感、サツマイモの食感が生きてるなあ
よし、ほかの動物たちにも会いに行こう
羊はそう言うと、しいの木山を降り、森角さんが「牙が大きくて立派」と話していたインドゾウ、ボンとヨーコのところへ向かった。
2頭のインドゾウは日向でゆっくりと前後にステップを踏んでいた
オスのボンは38歳、メスのヨーコは36歳。2頭は1985(昭和60)年4月27日、一緒にインドのムンバイからやってきた。ボンはムンバイの旧名「ボンベイ」から、ヨーコは横浜にちなんだあの名曲からとってつけられたそうだ。ボンの牙は約2.3メートルで、何と現在国内最大の牙を持つ象だという。
気ままにステップを踏み続ける2頭は、なかなかこちらを向いてくれなかったが、何度も名前を呼んでいると、ボンがゆっくりとこちらを向いて噂の牙を見せてくれた。
鼻先をひょいと持ち上げ、陽気に挨拶を交わすボン
金沢動物園は、各動物の前に音声ガイドが設置されていて、生態や特徴などについて聞くことができる。「象って思慮深い目をしてるから好きなんだ」と言いながら、羊は100円を入れ、スピーカーを手に取った。
そしてインドゾウの生態に耳を傾ける、勉強熱心な羊であった
ボンとヨーコに別れを告げ、ガウルやインドサイ、ニホンカモシカに挨拶しながらしばらく歩いていくと、枝にぶら下がって前後に軽快に揺れているシロテテナガザルを発見。
手前のガラスと背後の岩を交互に軽く蹴り、なかなかのスピードで揺れている
かと思うとふいに枝の上に座り込み指をくわえるキュートさもあわせ持つ
「明日から頑張るよ」「うん頼むよ。次は僕らだからね」と話し合う羊と猿
そのあとはめでたい鶴のなかでも貴重なタンチョウヅルにあやかり
続いてオセアニア区へと進んだ。オセアニアは固有種が多いことで知られているが、なるほどやはりどれも個性的で胸踊る動物たちだった。
まず、ずんぐりした体で、そして内股でよちよち歩くコモンウォンバットのヒロキに悩殺され
こんなにかわいいのに国内ウォンバットでほぼ最高齢という情報に翻弄された
続いてカンガルーを見に行くと、ちょうど食事の時間でラッキー
と思ったらものすごい数のカンガルーが跳ね寄ってきて圧倒された
60頭を3つのグループに分け、この日は袋の中にいる子供も含めて36頭
いやあ、これだけの数のカンガルーを見るのは初めてだよ。大迫力だね
もりもりと草を頬張るカンガルーを見たあとは、いよいよ元旦に「初日の出×コアラ」を控えたコアラである。
何だか、フィットしてしまって「顔はめてる感」が出ないような気がする、と羊
目が覚めてすぐ寝ぼけ眼で目の前のユーカリを食べ始める愛くるしさ
寝てるだけでもかわいいな。オセアニアの有袋類(ゆうたいるい)、どれも魅力的だ
と思って外に出たらヒクイドリのこの美しさにも目を奪われた
そのあとはアフリカ区でオカピの美しさにも目を奪われ、モモイロペリカンが水の中の小石を嘴でくわえて水面に放り投げては、底に沈む前にまたくわえるという遊びにも目を奪われ、すっかり閉園時間近くまで堪能した羊は、いろいろな動物から元気をもらって動物園をあとにした。
ああ、楽しかった、また暖かくなったら遊びに来よう