取材

色々回っているうちに時間となったので管理事務所へと向かう。

　

管理事務所
　

迎えてくださったのは、この霊園の園長である菱川清秀（ひしかわ・きよひで）氏と、その息子である菱川秀実（ひしかわ・ひでみ）氏。いずれも浄土真宗の僧侶である。

　

秀実氏（左）と、清秀園長
　

清秀園長によると、久里浜霊園の開園は1963（昭和38）年。なんでも元々横浜市内の聖徳寺（しょうとくじ）というお寺の住職だった先代の菱川馨（ひしかわ・かおる）氏が、その立地からお墓のスペースを確保しづらかったことを理由として作られたのだという。

広さはざっと7万平方メートル（横浜スタジアム約2.6個分）。利用者の宗派は問わないという。

さて、肝心の大仏様の話であるが、これは1984（昭和59）年の5月4日に完成した物だという。これも初代の菱川馨氏が、お寺の関係者だけではなく大勢の方にその姿を見てもらいたいと建立したらしい。清秀氏によれば、この街を見守っているかのようなシチュエーションも、最初から意識していたのではないかとのこと。

また投稿には鎌倉の大仏より大きいとあったが、台座を含んだ鎌倉の大仏13.35メートル（鎌倉大仏殿高徳院HPより）に対して、全長13.5メートルあるこの大仏様。確かに若干大きい。

　

ちなみに阿弥陀如来である
　

下は納骨堂になっている
　

数々の石像は先代が設置したそうだが、その理由や何体あるのかなどは清秀氏も秀美氏も把握していないという。
が、一つだけその理由が明確な物があった。

それが・・・

　

これ
　

筆者がよく分からないと感じたこの一群。実はこれ、日本の犯罪史に名を残す、1988（昭和63）年から1989（平成元）年にかけて起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の被害者のために作られた物。

　

よく見れば左側に四童女供養（よんどうじょくよう）とある
　

この左側のお地蔵様が抱える子どもが
　

被害女児たちだそうである
　

なんでも聖徳寺の檀家さんが当時被害女児の近所に住んでおり、事件後心を痛めてこちらを寄贈されたのだという。
大きな阿弥陀様の元で幸せになっていることを祈ります。

取材を終えて

基本的に霊園内は私道であるが、そこにつながる道自体は霊園の土地ではないため、お寺として交通制限をかけることはできない。そこを通る方々が石像を見学したりすることも構わないという。しかし、あくまでも久里浜霊園は墓地なのである。そこにお墓を持つ方々から管理費をいただいて園やお手洗いの清掃、石像の管理を行っている。そこをきちんと考えて利用してもらいたいと秀美氏はいう。

細かい話だが水道代など維持費もかかっている。またゴミを捨てていったり、園内の栗の木になった身をゴッソリとっていくというマナーを守らない人もいるそうだ。

　　

どれが栗の木かはちょっと分からなかったんですけども
　

そんなことは仏様も許しません。
仏像をはじめとした仏教文化は強固に日本へ根付いている。あまりに当たり前で、特別な感情を持ちづらい。それゆえ、少し軽んじてしまう風潮があるのではないかと感じる。

久里浜霊園を訪れる際には、ここはお墓であり、厳かな場所であるときちんと認識した上で楽しんでほしいと思う。
高台から見える景色は、本当に素晴らしい。

　

見えるということは、見られているということでもある
　

　
—終わり—


取材協力
久里浜霊園
住所／神奈川県横須賀市長沢1-54-1
電話／046-848-0705
開園時間／8：30〜16：00
定休日／無休
拝観料／なし
http://www.kurihama-reien.com/