【横浜の名建築】大倉山記念館・大倉精神文化研究所 (第2部)
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第22回は、『大倉山記念館・大倉精神文化研究所』第1部に引き続き、この第2部では、塔、西館と東館、そして秘密の部屋がある1階部分を紹介します。
ライター:吉澤 由美子
現在はレンタルスペースとして人気の西館
(続き)
2階の同じ場所には、所長室だった第6集会室がある。
マントルピースがないだけで同じ面積だが、かなり広く感じた
貴賓室と所長室は、腰板の装飾も素晴らしい。
菱型の内側に花のような意匠と珠をつなげたもの
珠をつなげた意匠はもちろん手彫り。
今ではとてもできない細工なので、修理された部分は円盤列のものでその替わりとしている。
床のモザイクは色の違う木材を交互に並べてアクセントにしている
地味な1階に眠る 大倉山記念館最大の謎
エントランスが2階にあり、主要な施設はすべて2~3階に置かれていて、1階は事務室や食堂、暗室、製本所、そして機械室やボイラー室があった場所。
正面階段裏の「留魂礎碑」や集会所、そしてギャラリーはあるが、作業部屋が多かったため地味な印象だ。
閲覧室の机だったものが壁際に置かれていた
ところが、ここには大倉山記念館最大の謎が今も眠っている場所。
普段はほとんど使われていない通路が2階中庭の下を通っていて、その先にボイラー室がある。
一気に探検という雰囲気になる通路。かがまないとぶつかりそうなスペース
進んだ先にはボイラー室。ここにはもう使われていない煙突が残っている。
右の半円状のふくらみが煙突。下部に小さな扉が残っている
ボイラー室から西館の方に向かうと、壁に開口部があるのだが内側からブロックが積まれて閉じられている。
倉庫の棚で普段は隠された開口部。内側にブロックが積まれているのがわかる
実はこの内側には、かなり大きな倉庫スペースがあるのだが、中になにが置かれているのかがわからないのだという。
以前、ここで研究をされていた方などの話では、使われなくなった家具類などが入れられていたとも伝わっているが、はっきりした記録が今のところ見つかっていない。
現に、昔使われていたもので、現在その行方がわかっていないものがいくつもある。後ろに引き上げ式の机板がついたベンチなど、昔を知る人が今も懐かしく思い出すものがここに残っている可能性は高い。
表に回ってこの場所を見てみると、壁に開口部を塗り込めたような跡があった。
西館奥の外壁に残る開口部をふさいだ痕跡
ここは大倉山記念館に残る最大のミステリー、まさに秘密の部屋なのだ。
取材を終えて
大倉山記念館は、古典主義様式よりさらに源流となるクレタやミケーネ文明の建築様式で作られ、細部や家具にまでその設計思想を貫いた建物だった。
大倉山記念館は大倉山のシンボル。商店街もこれに倣った装飾で有名だ
精神の高みを目指すための数々の設計や、敬虔な思いを抱かせるデザイン、独特の世界観の中にいくつもの謎を秘め、小高い丘の上に立つ唯一無二の存在。
来年、2012年4月に大倉山記念館の建物は創建80周年を迎える。その記念にタイムカプセルのような秘密の部屋を開けてみることができたらと想像してみると楽しい。
いったいこの建物の中には、なにが眠っているのだろうか。
― 終わり―
※普段は入れない場所など、特別な許可をいただいて撮影しております。
横浜市大倉山記念館・大倉精神文化研究所
住所/横浜市港北区大倉山2-10-1
横浜市大倉山記念館
開館時間/9:00~22:00
お問い合わせ/045-544-1881
現在行われている催し物については、サイト内のイベント情報をご覧ください。
大倉精神文化研究所
大倉精神文化研究所 附属図書館利用案内
開館時間/9:30~16:30(火曜日~土曜日)
休館日/日曜日、月曜日、祝祭日、年末年始
12月28日~1月3日 (年末年始)
1月10日 (振替休館日)
お問い合わせ/045-834-6636
今回ご案内いただいた、平井先生が作られた資料が「研究所」の中にある「地域情報」というコンテンツ内にあり、大倉山記念館と大倉精神文化研究所のなりたち、歴史などを詳細にまとめたものを読むことができます。